【インタビュー】アジア競技大会eスポーツ日本代表・Tess——世界で活躍する『eFootball』日本代表が語るHPSCの意義

2026.9.11 宮下英之
アジア地域最大級の国際総合スポーツ競技大会「第20回アジア競技大会」が2026年9月19日(土)〜10月4日(日)の期間中に開催される。本大会はオリンピック同様、4年に1度開催される大会で、2023年(コロナ禍により2022年度開催を延期)に開催された「第19回アジア競技大会」にて、eスポーツが正式種目として採用。今年もまたeスポーツが競技として採用された。なお、eスポーツ競技の日程は2026年9月23日(水)〜10月2日(金)。

大会に先立ち、ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)内に、eスポーツに特化したトレーニング施設「HPSC ESPORTS LAB」を新設。eスポーツ選手のパフォーマンス上昇が期待される。

▲HPSCはオリンピック、パラリンピックなどのトップアスリートの国際競技力向上を目指した施設。そんな施設内に、eスポーツ選手のトレーニングに特化した施設が新設されたのだ

HPSCとは

日本スポーツ振興センター(JSC)が運営している強化拠点。スポーツ医・科学の研究を担う国立スポーツ科学センター(JISS)と、味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)を一体で運用し、トレーニングから診察・リハビリ、心理サポート、栄養設計された食事、宿泊までを同一敷地内で完結できる。競技力を上げるための「生活まるごと」を設計した施設である。「HPSC ESPORTS LAB」は、その敷地内にある屋内トレーニングセンター・イーストに設けられた。

7月31日(金)には、「HPSC ESPORTS LAB」新設の発表会が行われ、日本代表である“Tess”こと貴田 英貢也(きだえくや)選手(eFootball™/PC)と、栗原 悠輝選手(ぷよぷよeスポーツ)の2名が練習環境でデモンストレーションを行った。

今回は、デモンストレーションを終えた『eFootball』代表のTess選手への合同インタビューの模様をお届け。国際大会でも活躍し続けているTess選手にとってのHPSCの意義、アジア競技大会への意気込みをうかがった。


小学3年生から高校3年生までサッカー部——リアルサッカーから『eFootball』へ


──もともとリアルのサッカーもやっていたとのことですが、どのくらいやっていたんでしょうか?

Tess:小学3年生から高校3年生まで、ずっとサッカー部でした。

高校2〜3年生くらいの頃にサッカーゲームをさわり始めて、友達と一緒に大会に参加したんです。当時、国体のeスポーツ種目として大会があって、その少年の部で優勝しました。

そこから声をかけてもらうようになって、サッカーゲーム、『eFootball』の大会に出始めました。

Tess選手は青森県代表として「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」にも多数出場し、実績を積み重ねていった

──リアルのサッカーをやっていた経験は、『eFootball』にもつながっていますか?

Tess:そうですね。サッカーの試合の前とかに、スーパーゴール集をYouTubeで見ていて、「実際に自分でもやりたいな」というのがすごく頭の中にあったんです。

サッカーゲームならそのまま再現できる。それが、自分の中でサッカーゲームを「楽しい」と思ったきっかけでもあるので、リアルのサッカーとのつながりはあると思います。

──今年はW杯もありましたが、やはりリアルサッカーを見ると『eFootball』をやりたい気持ちも高まりますか?

Tess:そうですね。W杯でスペイン代表がいい崩しをしているのを見て、「自分でもこれをサッカーゲームで再現しよう」みたいな考えになっちゃいます(笑)。


──その意味ではサッカー人気が盛り上がる年だとも思いますが、あらためて『eFootball』を知らない人に、その面白さを紹介するとしたら?

Tess:サッカーで見た白熱したシーンだったり、熱狂的なシーンだったりを、自分の指で再現できるというのが『eFootball』の良さだと思っています。

『eFootball』は無料で、誰でも気軽に友達とプレーできるので、「W杯のスペイン対アルゼンチンの試合を一緒にやってみよう」みたいな遊び方もできます。

そうやって友達との関係を築けるところも、サッカーゲームの良さなのかなと思います。


アイトラッキングで見えた新発見——HPSCで広がる『eFootball』の分析


──アジア競技大会に向けて、「HPSC」からスポーツ医科学のサポートを受けることで、ご自身の競技にどのような影響があると考えていますか?


Tess:eスポーツは目だったり、コンディションや体調管理だったりがすごく重要になってきます。今回、こうしてスポーツ医科学のサポートを受けることで、自分を見つめ直すというか、ベストなコンディションを作れるんじゃないかなと思っています。

──実際にサポートを受けて、一番驚いたことはなんですか?

Tess:まだこれからという段階ではあるんですけど、視線の動きを追う機能(アイトラッキング)は、自分たちにとってまだ知らない世界でした。いろいろな人と共有して見てみると、本当に驚きましたね。

アイトラッキングと心拍数を表示させながらのデモプレーの様子。ボールを追うように表示されている白い帯が、貴田選手の試合中の視線を示しており、プレーヤーによってかなり違うのだという

──自分の視線を見て、気づきはありましたか?

Tess:『eFootball』は国によっても選手のプレースタイルが違います。自分はドリブルを主体としたプレーが得意なので、ボールホルダーに視線を合わせることが多いんです。

逆に、チーム全体でパスサッカーをするプレーヤーは、ボールを持っていない選手、オフ・ザ・ボールの選手にも視線を動かしていました。そこはすごく興味深いなと思いました。

──そうした違いを見ることは、自身の技術向上にも役立ちそうですか?

Tess:自分の攻撃や守備の幅が、ほかの人と共有することで広がって、新しい可能性も見いだせると思います。

今でもゲームを知っているつもりではあるんですけど、こういうものを見ることで、もっと深く『eFootball』を知ることができるんじゃないかなと思います。

今回のデモでは、大画面モニターを使って選手やコーチによるプレーの振り返りも。実際のサッカーとなんら変わらない戦略の分析が、eスポーツでも行われている


──今日は心拍数も表示されていました。自分の数字を見てみてどうでしたか?

Tess:ほかの大会でも心拍数が表示されたりすることはありますが、僕自身、大会では緊張するというよりも、すごくワクワクして楽しんでやっているんです。なので心拍数は高くなりがちなんですけど、それを見ているのも面白いですね。

──表情はすごく冷静なのに、心拍数はどんどん上がっていたのが印象的でした。

Tess:そこは緊張というより、楽しんでいる証拠なのかなと思います。

──アイトラッキングや心拍数以外に、「こんなものも測れたら面白そう」と思うものはありますか?

Tess:指の動きが表示されると、面白いのかなと思います。

『eFootball』はコントローラーで操作しますが、人によってコントローラーの持ち方だったり、さわり加減だったりが本当に違うので、そういうものが表示できたら、もっと分析の幅が広がるのかなと思います。


オフラインでの経験と体調管理も強さの一部 ——「eスポーツ選手もアスリート」


──貴田選手はJFA(日本サッカー協会)のサポートも受けながらeスポーツの活動をされていますが、HPSCのような施設で練習することは、どのように強化につながりそうですか?

Tess:日本代表選手として活動していく中で、JFAさんからもコーチをつけていただいていますが、オフラインで同じような環境でしっかり練習する機会がすごく大事だと思っています。今回のように、施設や環境がしっかり揃っていることも、自分の能力向上につながります。

eスポーツというと、オンラインで家の中でゲームをするイメージがあると思いますが、実際の大会はオンラインとはまったく環境が違います。一人でゲームをするわけではなく、観客のいる中でプレーしたりもするので、こういうオフラインでの経験はすごく大事だと思います。

Tess選手が出場した2025年の「eFootball Championship 2025」のグランドファイナル。緊張感のある国際大会でのオフライン会場のような「非日常」の環境を経験できることもプラスになる


──HPSCにはeスポーツ向けの設備だけでなく、他にもさまざまなスポーツの施設がありますが、スポーツ以外で使ってみたい施設はありますか?

Tess:サッカーをやっていた身からすると、グラウンドの施設は興味がありますね。自分もそこでボールを蹴ってみたいです。

──プレーする上では体調管理も重要とのことですが、コンディションは実際のプレーにどのくらい影響しますか?

Tess:目だったり、頭をすごく使うのがeスポーツなので、少し睡眠不足だったり、ちょっと寒かったりするだけでも、集中力が切れてしまうことがあります。

だから、しっかりコンディションを良くしておくことは、本当に重要な要素だと思います。

──世間ではまだまだeスポーツをスポーツと呼ぶことに抵抗がある方もいますが、ご自身では自分のことを「アスリート」だと思いますか?

Tess:いろいろな意見があると思いますが、体調管理だったりスポーツとしての競技性を考えると、eスポーツ選手もアスリートだと自分は捉えています。


アジア競技大会で結果を残したい ——「競技の認知度をもっと上げられるように」


──これまで数多くの国際大会を経験してきたTess選手ですが、今回の日本で開催されるアジア競技大会についてはどんな意気込みをお持ちですか?


Tess:国際大会の中でも、アジア競技大会はeスポーツが正式にスポーツ競技として認められている大会なので、その分注目度も高いと思っています。

逆に、ここで結果を残せなかったら、認知度が下がってしまうかもしれない。競技の発展のためにも、もっと認知度を上げられるように頑張りたいと思っています。

———

リアルスポーツをシミュレートした『eFootball』のような競技は、複雑なルールやキャラクターを知らなければ楽しみにくいゲームと比べて、誰でもすぐに観戦できるという点が強みだ。その一方で、ゲームとしてのプレーヤーの日々の努力やテクニック、知識などは伝わりにくい面もある。

HPSCのような施設で、eスポーツプレーヤーのフィジカル・メンタルの強靭さを実証することは、プレーヤー自身の価値を高めることにもつながる。Tess選手のように世界で活躍する選手だからこそ、eスポーツならではの強みをオリンピック・パラリンピックや、実際のサッカーの戦術分析などにも還元できる可能性はある。

今大会の競技の中でも好成績が期待されている『eFootball』。その準決勝〜決勝の試合は、9月23日(水・祝)の16:00~21:00にかけて開催予定だ。


■関連リンク
Tess(貴田英貢也) X:
https://x.com/DRX_Tess

第20回アジア競技大会 X:
https://x.com/AsianGames_2026

第20回アジア競技大会 公式:
https://www.aichi-nagoya2026.org/ja/

第20回アジア競技大会 eスポーツ競技特設ページ:
https://jesu.or.jp/ag2026/


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