「正直に好きな夢を追うチーム」がSCARZのコンセプト【SCARZオーナー 友利洋一氏インタビュー】

2021.2.8 井ノ川結希(いのかわゆう)
自身もプレイヤーだった経歴を持つ、「SCARZ(スカーズ)」オーナー兼、株式会社XENOZ CEOの友利洋一氏。さまざまなタイトルの活躍選手を抱え、日本のeスポーツシーンを支え続けてきたSCARZ。

日本のeスポーツチームの中では古参中の古参で、eスポーツに詳しくない読者でも「SCARZ」というチーム名は聞いたことがあるのではないだろうか。今回は、まだeスポーツという名前が定着するはるか以前からゲーミングチームを運営してきた友利氏が思い描くeスポーツチームとはどのようなものなのか、オーナーとしての考えをうかがってみた。

友利 洋一(ともり よういち)


SCARZの創設者であり、SCARZを運営する株式会社XENOZのCEO。友利氏自身も、元々プレイヤーであったが、現在はSCARZを創設してチームオーナーとして、さまざまなタイトルの選手を抱えている。


ゲームの面白さをもっと世の中に伝えたいという気持ちからスタートしたSCARZ


——友利さん自身がプレイヤーとして活躍していた過去があるとのことですが、ゲームやeスポーツとの出会いを教えてください。

友利氏(以下、友利):僕がプレイヤーとして活躍していた当時は、まだeスポーツという名前が浸透していないころで、それこそさまざまなFPSやMMORPGといったゲームをプレイしていました。

その中で特に、対人戦というものに興味を持ち、「バトルフィールド」シリーズをやり込んでいました。

そこで、最初の方はゲーム内のクラン活動していたのですが、その中でスクリム(練習試合)とか、大会というものを知ったのがeスポーツとの出会いですね。

——その流れでSCARZというチームを立ち上げたんですか?

友利:そうですね。2012年の2月にSCARZを立ち上げ、『バトルフィールド3』のタイトルで活動していました。

ただ、このころもまだeスポーツという言葉自体は日本で浸透していなく、ただ自分たちが「ゲームを好きでやっている」というイメージでした。僕自身はゲームの制作会社に勤めながら活動していたという感じですね。

もともとゲーム制作会社に勤めていた理由としては、「ゲームの面白さをもっとみんなに知ってもらいたい」というのがあると同時に、プライベートではチームを立ち上げて活動などしていました。

——なるほど。設立当初はまだプロチームという概念ではなかったんですね。

友利:そうですね。プロゲーミングチームとして活動をし始めたのは2015年のころです。ちょうど海外でeスポーツという言葉が浸透し始めていて、SCARZも『リーグ・オブ・レジェンド』や『ハースストーン』といったタイトルの部門を新設したのが立ち上げの要因でもありました。

——もともとアマチュア時代のSCARZがあってからのプロゲーミングチーム化だったんですね。プロとして始動した、いわば新生SCARZ。設立当初はどのようなものでしたか?

友利:まあ、ぶっちゃけ余裕がまったくもってないスタートですよね(笑)。


あのころのチームって本当に好きだからやっているという気持ちでやっていたと思います。

とりあえずゲーミングハウスないといけないよねとか、選手のお給料払わなきゃいけないよねとか、光熱費、家賃もあるよねとか考えると、まあお金が足りないですよね。でも、プロとして活動して行くにはどれも必要なものだったので、極力整えられるよう努力していました。

——つまり赤字スタートだったんですね。その状況でもプロチームとして始動させたきっかけはなんだったんですか?

友利:やっぱり『リーグ・オブ・レジェンド』のプロリーグ「League of Legends Japan League」(LJL)に参加することが決まったことが実現を急いだ点ではあったのですが、個人的には当時自分では叶えられなかった目標や夢を若い子に注ぎたいと思った気持ちの面もあります。

あとは、スポンサードしてもらえるようになったのが大きなきっかけでもあります。

プロチームの定義ってさまざまあると思うのですが、僕は「スポンサーが1社でもついたら法人化するべきだ」と考えています。やっぱり、サークル的なチームで活動して「うまくいかなくなったので解散します」じゃ、スポンサードしてくれている企業に大変失礼だと考えています。

そういったこともあって、法人化してプロチームとして活動すべきだという気持ちから株式会社XENOZを立ち上げました。

——なるほど! でも、失敗するかもという不安はなかったんですか?

友利:逆に、失敗するかもっていう考え自体が起こらなかったですね。まあそんなふうに考える余裕もなかったくらいガムシャラでやってました(笑)。

ただ、「こういうチームになりたい、同じ場所で戦いたい」というビジョンがあったので、そこを諦めたくはないという気持ちの方が大きかったです。

僕自身、目標としているものを諦めたら人生の悔いになると思っているので、そういった意味でも「失敗するかも」という考えにはなりませんでした。

——「こういうチームになりたい」というビジョンを持ち始めたころ、ほかのeスポーツチームで気になっていたチームはありますか?

友利:海外のチームで言うと、今や巨大組織にもなっているTSM(Team SoloMid)ですかねえ。国内で言うと、DeToNatorDetonatioN Gamingです。

特に国内の2チームに関しては、オーナーお二方を参考にさせていただきました。

——DeToNatorやDetonatioN Gamingといえば、先輩に当たるeスポーツチームですよね。当時はやっぱりライバルでした?

友利:実際のところ、当時はそんなに接点はなかったです。急激に接点を持ち始めたのは2018年、いわゆるeスポーツ元年と呼ばれたころですね。

あと、試合の中で選手同士がバチバチ戦っていたとしても、やっぱりオーナー同士は仲いいですよ(笑)。


▲昨年末の「PJS」終了後には、プロチームのオーナーが集まる「オーナー会」という配信が行われるほど、オーナー間の絆は深いという。(アーカイブは非公開)

SCARZが目指しているのは「強さ」


——振り返ってみると、SCARZって常にさまざまなゲームタイトルに挑戦しているイメージがあります。中には作ったものの、解散していった部門もいくつかあると思うのですが、特に思い入れのあるチームってございますか?

友利:確かに、振り返ってみれば数多くの部門を抱えているなあと思いますね。解散していったチームひとつひとつにさまざまな思い出が残っています。

ただひとつ言えることは「オーナーとして力不足だった」と感じています。もっと何かできたのではないかという申し訳ない気持ちが残っていますね。


——なるほど。実際部門を存続させるか否かというのは、経営的な理由が少なからず関わってくるかと思います。存続させるかどうかというのはどういったタイミングで決断するんですか?

友利:新しいゲームタイトルの部門を作ろうと思うきっかけって、やっぱり「人」なんですよね。

「彼らとならやっていけそうだな」という選手が現れたときに、なにがなんでも部門を作りたいという気持ちになります。

解散に関しては正直さまざまな要因があると思います。「人」や「方針」など、さまざまなものが絡みあってくるものではあるので、「一丸に全部これです!」とは言えません。状況によってケースが違いますね。

——そういうことなんですね。過去には世界に挑戦していった部門もあったかと思います。その中で世界との壁を感じたことはありますか?

友利:そうですね。SCARZは世界の一流が集まるところに挑むことに意味があるという考えが根本にあるので、海外では多くのユーザーが集まり大会規模も大きかった『Counter-Strike: Global Offensive』部門などを設立しました。

海外大会に挑戦などはしていたのですが、世界との壁を感じましたね。

▲現在Absolute JUPITERとして活躍中の選手は、以前はSCARZの選手として『CS:GO』の舞台で活躍していた

選手としてどれくらいの壁を感じていたかどうかは本人たちにしかわかりませんが、チームオーナーとして選手のサポートはできていたのかとか、いいコーチやいいアナリストがいたのかとか——。そういうことを考えると、当時のFnaticやCloud9と比べて、まだまだ「チームとして選手にできることはたくさんあるな」と考えさせられました。

——どのような違いを感じましたか?

友利:なんというか、「これが一流か……」という感じですね。僕自身もものすごく刺激を受けたと同時に、海外チームの手法などをいろいろと教えてもらったり、さまざまな海外チームのゲーミングハウスにうかがって、そのチームのオーナー、選手、コーチなどとディスカッションをさせていただきました。

そういった意味で現在『VALORANT』部門では、いち早くメンタルコーチを導入したり、アナリストを導入したり、自分たちができることを一歩一歩こなしています。


▲SCARZの『VALORANT』部門の選手は、ゲーミングハウスで活動し、いちはやくメンタルコーチを導入したことで注目を浴びている。2020年10月2日(金)〜4日(日)に開催された国内初のVALORANT公認オフライン大会「EDION VALORANT CUP」で優勝を勝ち取ったことは記憶に新しい

『VALORANT』部門を中心に始めて、チーム全体の底上げを行うための体制構築を行っています。

——なるほど。選手が強いというのはプロを目指す上ではもはや当たり前ですもんね。そこからより強くなるにはサポートも大事というわけですね。

友利:そうですね。やっぱりSCARZが求めている根本は「強さ」でもあるので、さまざまな部門に対応できるよう試行錯誤はしています。

パフォーマンスアップな方法を取り入れて、それをほかの部門に導入することでSCARZ全体の強さを底上げしていくことを考えています。

好きな事を常に追うがSCARZのストーリー


——そんなマルチゲーミングチームのオーナーとして、これからeスポーツのプロ選手になろうと思っている人にアドバイスをおうかがいしたいです。ずばり、今後プロ選手に求められる人材というのはどういったものだと思いますか?

友利:SCARZの選手基準で言えば、まず本気で取り組みたいという気持ちがあるのかというところですね。次いで人間性です。

例えば「強さ:S、人間性:B」の選手と「強さ:A、人間性:S」の選手がいたとして、僕は断然後者を選びますね(笑)。

——あはは。例えがわかりやすくていいですね(笑)。強さはあとから身に付けられる?

友利:付けられます。というか、そうでなければチームの意味がないと思っています。

簡単な話、強い選手を「はい。集めました!」で終わりではありません。チームが重要視している点においては、「選手を強くすることができるチームビルディング」を考えています。なので、SCARZとして重要視しているのは、コーチやアナリストをはじめとするサポートメンバーなんです。


選手の人間性が高ければ、そういったサポートメンバーの話もすんなり受け入れてくれると思うし、結果強くなると思うんです。そもそも、強さがA以上であれば、すでにゲームの才能はあるんですよ。もしこれが強さ:Cだったら「う〜ん?」って考えちゃいますけど(笑)。

しっかり練習に取り組む姿勢や、一試合一試合のあと反省できるのかとか、そういったところがちゃんとできる子は伸びると思います。敬語なんて使えなくたっていいんです。重要なのは、指摘されたことを理解して修正できる人間性があるかどうかなんです。

——そういう選手に寄り添えるところがSCARZの魅力でもあるんですね。

友利:SCARZの目指しているものは「正直に好きな夢を追うこと」だと思っていて、同じ夢を持った人たちが一緒に目指したいことを追い続けることです。それを楽しくやっていきたいですね。

——友利さんの笑顔を見ていると、SCARZってまさに笑顔が絶えないチームなのかなと思います(笑)。

友利:ありがとうございます(笑)。


独立系チームとして目指したいものを追求したいとは考えています。

——独立系チーム?

友利:簡単にいってしまうと「eスポーツ事業がメインです!」というところですね。

その意味では、「eスポーツチームだけでも食べていけるよ」という夢は与えられているのではないかと思っています。今後、若い子がeスポーツチームを運営するにあたり、少しでも勇気を与えられる存在になっていれば幸いです。

——最後に、今後のeスポーツ業界について展望をお聞かせください。

友利: DOCOMOさんが2021年2月に開催される「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE」(PMJL)の発表があったり、『VALORANT』でも大会のスケジュールが発表されたりなど、今後もeスポーツはさらに成長すると考えています。自分たちもよりいっそうeスポーツ全体に活気を与えられるような成長をしていきたいと考えています。

ただ、未だ新型コロナウイルス感染症の影響は大きいので、まだまだ世界大会には行けないのかな……という点では残念ですね。昨年も、本来なら複数のタイトルで海外大会に行けたはずなのに、断念したのもありますからね……。

——逆にオンラインが活発になったというのが昨年のeスポーツ業界でしたね。

友利:そうですね。ただアジア圏ならばオンラインでも問題ないのですが、どうしても回線の都合もあって、アメリカやヨーロッパのチームと戦えないことが残念ですね。

いち早く、オフラインでも大会が開催できるような環境に戻ってくれることを願っています。

——ありがとうございました!

———

友利氏にお話をうかがって思ったのは、SCARZは「強さ」という根本を軸に、常に選手はもちろん、サポートメンバーにもよりそう、親心に満ち満ちたゲーミングチームだということだ。

それは、友利氏自身が選手として活躍してきたプライドであり、オーナーとして新たな歩みを進めた信念でもあるといえる。

新型コロナウイルス感染症の影響で、まだまだオフラインでの活躍が危ぶまれる状況ではあるが、これからも新しい「強さ」を求めて突き進むSCARZを見守っていきたい。


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