【単独インタビュー】MrTenzouEz「練習と何が違うのかわからない」——Bullcoコーチが語るSCARZの強みとは

1月22日(月)から開幕した『VALORANT』の公式国内リーグ、「VALORANT Challengers Japan 2024 Split1」(以下、VCJ 2024 Split1)。現在行われているMain Stageでは8チームが日本一位を目指し激戦を繰り広げている。

今回はその中でもSCARZ(SZ)に注目。昨年は国内リーグで優勝を果たすも、「VCT Ascension 2023 Pacific」では惜しくも準優勝でインターナショナル進出を逃し、多くの選手が移籍をする中、Fadezis(ふぁでじす)、Bullco(ぶるこ)、noppo(のっぽ)という強力な3人コーチ体制と新ロスターを発表。

参考:
【SCARZ VALORANT部門がロスターを一新!】Fadezis×noppo×Bullco×コーチ・友利オーナーが語る新生SCARZの勝機とは

さらに今年1月には新たにOnly1(おんりーわん)選手が加入するなど新体制を強化。「VCJ 2024 Split1」ではメインステージ進出を果たした。

しかし、メインステージでは序盤から3連敗と、幸先悪いスタートとなってしまったSZ。後がない状況をどのように打開していくのか——。改めてBullcoコーチに話をうかがった。

▲前半戦はFENNEL(FL)が無敗でトップをリード。SZは3連敗からのスタートと、後がない状況まで追い込まれる

試合が長引きミスが目立ってしまった前半戦


——昨年から期待が高まるSZですが、3連敗からという後がないスタートになってしまいました。前半を振り返ってみて、どのような点が敗因だったのでしょうか。

Bullco:前半のFL戦、REJECT(RC)戦、Sengoku Gaming(SG)戦は3マップまで突入したり、オーバータイムが発生したりと、試合が長引きました。その中で細かいミスが目立ってしまい、ラウンドを落としてしまうことが多かったのが敗因でした。

——確かに成績を見ると接戦で落としてしまったマップが多いですもんね。細かいミスというのはどういった部分が挙げられますか?

Bullco:例えば少人数戦でトレードができていないといった本当に細かいミスですね。そういった細かいミスを修正することができて、前半最終試合のVARREL(VL)戦ではいい結果につながったのではないかと思っています。

——どのように修正できたのでしょうか。

Bullco:やはり細かいミスというのはコミュニケーションから発生するものだと思っているので、選手間で今やりたいことを伝えながら、自分はどのようにプレーすべきなのかを決めるといった部分を強化しました。

——やっぱりコミュニケーションって試合に大きく影響するものなんですね。

Bullco:そうですね。試合中、得られる情報量が多い中で、どうやってコミュニケーションを取っていくのかというのが課題だったので、そういった部分を修正していきました。

——VL戦ではAllen選手に替わってTempura選手にメンバーが変更されました。何かきっかけがあったのでしょうか。

Bullco:もともとSZは6人ロスターで参加していることもあります。Tempura選手のコールや提案を試す意味も込めてチームを編成し直しました。

——ロスターが6名というのはコーチ陣にとって心強いですか?

Bullco:正直、誰を使うのか、どのエージェントを担当させるのかというのはコーチの判断でもあるのでプレッシャーはもちろんあります。ただ、5人でやれることよりは6人でやれることの方が多いので心強いです。コーチ陣で判断した編成がうまく刺さった時はうれしいですしね(笑)。

——6人目の選手としてOnly1選手が今年の1月に加入されました。どのような経緯で加入したのでしょうか。

▲韓国出身の若きプレーヤー。18歳という若さで「私がチームをキャリーします」と頼もしい発言とともにSZに加入したOnly1選手

Bullco:Only1選手はゲーム内のランクがレディアントでTOP10入りするほどの実力があります。昨年年末に開催されたオフシーズンイベント「Red Bull Home Ground」で、チーム内の火力を強化する必要があることに気づきました。そこでOnly1選手を見つけることができたので声をかけたというのが経緯ですね。

実際にトライアウトを受けてもらった結果、フィジカルもコールも素晴らしかったので正式に加入してもらいました。

——こういった選手はどのように見つけるんですか?

Bullco:SZの選手に限らず、多くの選手がコンペティティブモード(ランクマッチ)をプレーします。その中で「○○ってプレーヤーが強かった」とか、選手界隈で「○○はエイムがバケモノ!」とか話題になるんです。

そういったプレーヤーは、チーム経験が少なくても即戦力になることもあるので、コンタクトを取るようにしています。

——確かにOnly1選手は強気なエイムで試合を動かしたラウンドも目立ちましたもんね。

▲VL戦のワンシーン。オフアングルで待ち構えるBangnan選手を素早い反応でキル。その後も正確なヘッドショットでAサイトをエントリーしていくOnly1選手(https://www.youtube.com/watch?v=NtV7ury1a9g&t=15980s

Bullco:彼のフィジカルをチームに取り入れれば、Tier1チームにも負けないんじゃないかとコーチ陣で話し合っていました。初戦こそ緊張していたようですが、徐々に自分のパフォーマンスを出せるようになってきているのはうれしいですね。

——後半戦も楽しみですね。改めて新生SZの強みを教えてください。

Bullco:SZは選手全員のピックプールが広いのが強みです。自分たちがやりたい構成があったとして、各選手のピックが問題にならないというのは大きなアドバンテージだと思っています。

——いわゆるビジネス○○みたいな、仕方なくそのエージェントを使うみたいなこともない?

Bullco:SZはないですね。例えば選手のひとりが苦手なロールがあったとしても、別の選手が「じゃあ、それ俺がやるよ」って、苦手なロールを埋め合えるのもピックプールの広さがメリットになっていると思います。

——Lumo選手はどうでしょう。以前のインタビューでは、元メンバーのKr1stal選手の代わりとなるIGLとしてLumo選手を起用したと——。実際に試合を経てどのように感じていますか。

Bullco:Lumo選手のIGLは「自分のコールだけを聞け」という感じではなく、みんなの意見をそろえて判断するタイプのIGLなので、いいコールをしていると思っています。IGLで最も大切なのはチームの士気を上げることだと思っています。「ナイス!」といった声かけも得意で、そういった部分でも優秀ですね。

——確かにSZ公式のSNSでもLumo選手の明るさはピックアップされていますもんね(笑)。

▲とにかくチームの雰囲気は良さそうなSZ。楽しそうである

Bullco:そうですね。冗談を言い合ったりムードメーカーではあります(笑)。

——それでいて撃ち合いも強いっていうのがすごいですよね。

Bullco:世界トップのIGLは、IGLをしながらでもいいエイムをしている選手が多いので、Lumo選手もそういった素質があると思っています。

▲FL戦のワンシーン。リテイクに向かうFLに奇襲を決めるLumo選手のオーメン。こういった奇をてらった立ち回りができるのもLumo選手の強みだ(https://www.youtube.com/watch?v=vjMqUd7dzHo&t=3856s

——MrTenzouEz選手はどうでしょう。

Bullco:MrTenzouEz選手はアグレッシブなイニシエーターで、見ていて「若いな」って(笑)。

——あはは。メンタルも強そうですもんね。

Bullco:それはMrTenzouEz選手の一番の強みですね。大会で緊張しないんですよ。「練習と何が違うのかわからない」みたいな(笑)。そういうメンタルが持てるのはすごいですよね。練習やスクリムと同じポテンシャルを大会で出せるのはMrTenzouEz選手の強みです。

——確かに配信上で映っているカメラの表情は無表情といか、動じないオーラがありますよね。

Bullco:そうですね。Jadeiteにいた頃のmuto選手も通ずるものがありました。性格的に似てはいないんだけど、試合に対する感情は同じみたいな。

——実際に3人コーチ体制を運用してみてメリットやデメリットはありましたか?

Bullco:デメリットはありませんね。3人違う目線で意見を出し合えるというのは大きなメリットです。お互いの意見が違っていた場合でも、話し合いをして内容をブラッシュアップしています。

ひとりで考えるのは限界があるので心強いですよ。

気になる後半戦は? アイソは出るの?


——大会中に新パッチが適応されるといったゲームのアップデートは、コーチ陣にとっても頭を悩ませる要因だとは思いますが、最近のパッチについてはどう感じていますか?

Bullco:メインステージの前半戦、後半戦でパッチが替わるというのは事前に告知されていたので、僕らもそれに合わせて練習をしています。特に困っていることはないかなぁ。

——アウトローの存在はどのように感じていますか?

※アウトロー:Episode8で追加された新しいスナイパーライフル。2連射可能で140ダメージということでフルアーマーを購入できないラウンドでは脅威になるといわれている

Bullco:アウトローは持っていることでプレッシャーになるのが強みです。相手が持っているからハーフアーマーだと危ないといった判断が必要になります。2連続で撃てるという特徴もあるのでハーフアーマー状態であれば、オペレーターよりも強いと思いますよ。

——先日のVCT Pacific KickoffではMeteor選手がアウトローを使いこなしていましたもんね。

▲VCT Pacific KickoffでのワンシーンZETA DIVISION相手に1on2の状況に陥ったGen.GのMeteor選手。圧倒的不利な状況でありながら、アウトローの連射で見事クラッチ。アウトローの強さを印象づけるラウンドとなった。(https://www.youtube.com/watch?v=jrYYAgPWHec&t=23735s

Bullco:そうですね。アウトローを使った戦略というのもどんどんできていくのかなと思っています。

——後半戦はブリーズの現在封鎖されているAホールが開通になるんですね。ブリーズといえば、ヨルを起用した構成で、SG戦でもVL戦でも見せたヨル+ソーヴァのアルティメットコンボは印象的でした。さすがに後半戦では対策してきそうですね。

▲SG戦のワンシーン。Yoshiii選手のヨルでサイト内を索敵し、MrTenzouEz選手のソーヴァでキルを狙う。ほぼ逃げ切るのは不可能なのではと思わせるコンボはVL戦でも刺さっていた(https://www.youtube.com/watch?v=bKbBR6PYEe0&t=8060s

Bullco:まあ対策されるのはどのチームも同じだと思っているので、その対策に対抗した作戦で挑みますよ(笑)。

——最後に、後半戦に向けての意気込みをお願いします。

Bullco:前半戦は1勝3敗と満足のいく結果ではありませんでしたが、プレーオフに進出するためにも残りの3戦は絶対に勝たなければなりません。ただ、試合を楽しむことが一番大事だと思っています。

勝つことを意識しすぎて硬くなるよりは、みんなが楽しめる雰囲気や戦略で勝ちを狙うので、応援よろしくお願いします。

——前回のインタビューでFadezisコーチがアイソ出しますっていって出ませんでしたね。後半戦は出ますか?

Bullco:アイソ……出ます(笑)。


——ありがとうございました!

———

国内チームでありながらゲーム内のコミュニケーションは英語だったり、3コーチ体制だったりとほかのチームとは違った特徴を持つSCARZ。前半の3連敗は痛手になっているのかと思っていたが、Bullcoコーチの話を聞く限り、大きな問題にはなっていなさそうだ。

「インタビューで話しすぎてしまうのでほかのチームに対策されないか心配。Fadezisコーチは隠しながら話すのがうまい」とBullcoコーチ。思わずチームの弱みを話してしまわないよう気をつけているのだとか(笑)。

後半戦、SCARZの初戦の対戦相手はNORTHEPTION。3月2日(土)19時からのスタート予定なので、起死回生となる連勝をつかみ取ってほしい。

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編集:いのかわゆう


【井ノ川結希(いのかわゆう)プロフィール】
ゲーム好きが高じて19歳でゲーム系の出版社に就職。その後、フリーランスでライター、編集、ディレクターなど多岐にわたり活動している。最近はまっているゲームは『VALORANT』。

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