北海道から東京へ!? 躍進の1年を振り返りから新時代の幕開け【NORTHEPTION 大輪オーナーインタビュー】
2019年『レインボーシックス シージ』シーンに突然現れたNORTHEPTION(のーせぷしょん)。コロナ禍に見舞われながらも数々のタイトルで実績を残し、2022年では『VALORANT』では強豪チームZETA DIVISIONを破り日本一へと輝く躍進の一年となった。
eSports Worldでは2022年、謎のベールに包まれたNORTHEPTIONのオーナー大輪広氏にインタビューを敢行。北海道から世界へというスローガンを掲げたチームのコンセプトや大輪オーナー自身の野望などをおうかがいした。
参考:
僕を世界に連れていって!【NORTHEPTIONオーナー 大輪和広氏インタビュー】
あれから1年——。日本のeスポーツシーンと共に大きな成長を遂げたNORTHEPTIONが、2023年どのようなビジョンを持っているのか。再び大輪オーナーに2022年を振り返りながらお話しをうかがってみた。
ついに『VALORANT』で世界進出!
——お久しぶりです。2022年は『VALORANT』の公式大会「VCT 2022 stage2 Masters」において見事日本一を勝ち取り、海外進出を果たせた1年でしたね。以前のインタビューで、海外進出をして海外旅行をしたいとおっしゃっていたオーナーですが、ついに夢が果たせたといった感じでしょうか。
大輪オーナー(以下、大輪):ありがとうございます。僕は(現地)に行けてないんですけどね(笑)。
——えええっ! ということは海外旅行はまだおあずけ?
大輪:そうなんですよ。本業が忙しかったということもあり、後から合流したいと思っていたのですが、コロナ禍ということもあり、前もって申請しておかないと現地に行くことはできず……。
——残念です……。ただチーム的には世界進出の夢は叶ったわけですが、実際日本代表として国際大会を経験してどのような変化がありましたか?
大輪:めちゃめちゃありましたね。選手の伸び率も、チームの知名度も一気に上がった感じはしましたね。VALORANT部門を設立して2年程度だったのですが、それで世界に行けたということは僕らにとっても大きな出来事でした。
——ファンからの声とか、まわりの反響にも変化はありましたか?
大輪:以前インタビューさせていただいた記事がブワッとバズったのか、僕のTwitterの方にも通知がじゃんじゃん来たり、フォロワーさんが一気に増えたりしてビックリしたのを覚えています。
いやぁ、あの時は焦りましたよ。「俺なんか炎上したんじゃないかな……。なんか言ったっけな……。」とか(笑)。
——あはは。いい方向での注目でよかったです。選手自身はどのように変化したと感じていますか?
大輪:自信がついた感じはしましたね。ZETA DIVISIONやCrazy Raccoonといった誰もが思う強いチームとは違って、僕らはあまり自信がなくやっていたこともあったので、国際大会を経験したことは大きな自信にもつながりました。
あとは国際大会を経験したことによってオフライン環境でもプレッシャーに強くなったとは思いますね。海外の強豪チームにかなり揉まれたんで、ある意味吹っ切れたみたいな(笑)。
——海外のチームと戦ったというのも大きな経験値になりますもんね。
大輪:そうですね。大会だけでなくスクリム(練習試合)も現地でできましたし、国内とはまた違ったレベルの練習を経験することができたのは大きいですね。NAは本当にレベルがやばいです。
——具体的にどういったところが国内と違うのでしょうか。
大輪:Tier2のチームでも日本のトップチームくらいのレベルだったみたいで、そういったチームとのスクリムでも全然勝てなかったです。理由としては単純に日本よりも競技シーンが盛んで、大会の数も多いからだと感じています。単純に経験値の差がレベルの差につながっているんじゃないかな。
——とはいえ2022年はNORTHEPTION自体も大きく成長した年だったと感じています。ただ2023年から大きく体制が変わる『VALORANT』の公式大会「VCT 2023」ではインターナショナルリーグに選出されませんでした。そういった経緯に関してオーナー自身はどのように感じていますか?
大輪:正直悔しい気持ちはあります。インターナショナルリーグ選考基準は強さだけではないということは知っていましたが、僕らにとって2022年は成績優先で活動していた部分もあったので、そういった部分では仕方がなかったという気持ちでもありますね。
——成績優先したという意味では有言実行できた年でしたね。ただそんなVALORANT部門も2022年で半ば散り散りというか、ある意味一新する形になったと感じています。
大輪:以前の経験を生かして、僕らは彼らを引き留める策を講じていました。それは金額面であったり環境面であったり——。
ただ一方で、選手たちにとってインターナショナルリーグで戦うということは夢でもありますし、ひとつのステータスとして大きなものです。最終的な判断は選手に委ねることにしました。
——引き留める策を講じていたというのは想像できませんでした。以前のインタビューで話されていた「NORTHEPTIONを踏み台にしてもいい」というオーナーの考えは変わった?
大輪:僕個人としての気持ちは今もそういう気持ちではあります。ただNORTHEPTIONのチームとして考えると、2022年のVALORANT部門はこれ以上のチームは作れないんじゃないかというくらい完成されたチームでもあったので、逃したくないという気持ちが勝ってました。
——大輪さん個人としての気持ちとチームとしての考え方が交錯すると複雑な心境ですね。
大輪:まあチームとして考えた時「NORTHEPTIONってすぐに選手を放出するチームじゃん」ってまわりも思われてしまうのも本意ではないですしね。
——2023年からはインターナショナルリーグを目指すチームとして再始動となるわけですが、同じ目標を掲げる他チームとそういった話をすることはあるんでしょうか
大輪:いや、してないですね。ぶっちゃけ、うちのチームはどうやって強くなっていくのかわかってないんですよね(笑)。
——えええっ?
大輪:「(NORTHEPTIONが強い理由は)みんながんばっているからですよ」としか言えないです(笑)。実際、選手たちは練習に相当時間を割いてますからね。
——2022年のVCTとは違い、上位リーグを目指すとなると練習の仕方も変わってくるんじゃないでしょうか。
大輪:そうですね。ある意味インターナショナルリーグとは別の環境にいるということで、インターナショナルリーグで戦っているチームと練習試合ができる機会が増えるんじゃないかと思っています。
インターナショナルリーグのチーム同士はあまりスクリムしないでしょうし、逆に僕らも同じChallengersリーグのチームとは練習しないでしょうしね。
VALORANT部門は各チームそれぞれに強さがあるので、2023年は国内リーグも群雄割拠になるんじゃないかなぁ。インターナショナルリーグについては、とにかく日本のチームがトップにいてくれることを願っています。
世界に輩出できる選手を育てたい
——何度か話題にも出ているようにNORTHEPTIONは2022年に大きく飛躍したと感じています。スポンサーが増えたこともその中のひとつだと思いますが、チームの運営や考え方に変化はありましたか?
大輪:新しく自社ブランドやRazerさんのゲーミングデバイスを取り扱っているGRAPHTさんにスポンサードしていただいたのですが、GRAPHTさんを選んだ理由としてプロシーンの構図を意識したというのはあります。
——プロシーンの構図?
大輪:例えば出場チームのスポンサーがすべて同じだったら気まずいじゃないですか。地域でのダービーができない分、大会をもっと面白く見るためにも、せっかくスポンサードしていただいているのでダービーした方がいいんじゃないの? とかそういう部分は多少意識しています。
デバイスメーカーさんだったらどこのゲーミングデバイスもそれぞれ特色があってモノがいいのは周知の事実で、スポンサードしていただいているというのは大前提にはありますけどね。
——ご自身のチームだけでなくeスポーツシーンを俯瞰でとらえているという考え方はNORTHEPTIONらしい面白さがありますね。
大輪:やっぱりeスポーツの発展が、今日本において一番のキーですからね。
——なるほど。また改めてNORTHEPTIONのWebサイトを拝見したところ、FPSだけでなく格闘ゲームの選手も所属しているようですね。NORTHEPTIONは『VALORANT』や『レインボーシックス シージ』といったFPSタイトルを中心としたチームだと思っていたのですが、今後どのようにチームを広げていこうと考えているのでしょうか。
大輪:根底として世界に輩出できる選手を育てたいというのがあるので、そこを目指せる部門だったりタイトルがあれば積極的に作っていきたいとは思います。
実は格闘ゲームの部門だと割と世界で勝ってた経験のある選手が所属しているので、NORTHEPTIONとしても世界に通用するんじゃないかと思っています。
ただもともとはFPSタイトルから発信したチームではあるので、どうしてもFPSタイトルで世界に行きたいという夢はありますけどね。
——今だとどの辺のタイトルが狙えそうですか?
大輪:現状だとコール・オブ・デューティ部門がめっちゃ強いですよ。日本だと一番強いんじゃないかな。「CALL OF DUTY®: MODERN WARFARE® II JAPAN CHAMPIONSHIP」も招待で出場していますしね。
——おおっ、そうだったんですね。
大輪:実はコール・オブ・デューティ部門は1年くらい前に元REJECT FAKER所属の選手を集めて設立していたのですが、その間ずっと大会もなくひたすら練習しているような、まさに這いつくばっている時期を生き抜いてきたので、実はかなり期待しています!
——『コール・オブ・デューティ』の競技シーンが少ない中、ずっと活動しているというのはすごいですよ。
大輪:ここ最近の大会はほとんど勝ってるんで、ある意味NORTHEPTIONが独占していますよ。まあ、(出場している)チームが少ないっていうのもあるんですけどね(笑)。
ただ彼らのいい面は強さだけじゃないんです。試合のないタイトルの部門にいる自分たちってチームにとってお荷物なんじゃないかって思っていた部分があったみたいで、「僕らはお給料の半分はいらないです」って自分たちから言ってきたんです。
——すごい。そんなこと普通選手の方から言えませんよ!
大輪:本来だったら口が裂けても言えないじゃないですか? かと言って僕らも言いづらい部分でもあるのに、そうやってチームのためを思って気を遣ってくれるなんて、チームの鏡ですよ本当に。
——そんな中実力を発揮しているなんて、ちょっと泣けてきますね。
大輪:そうなんですよ。なのでコール・オブ・デューティ部門はできるだけ残していきたいと思っています。
——今まで話してきた流れだと、NORTHEPTIONに応募してくる選手側の意識も変わったんじゃないでしょうか。
大輪:募集となるとまた少し変わってきて、「どうせ受からないけど応募だけしてみよう」みたいないわゆる記念応募の子たちもいるかもしれないですね。これはどこのチームさんも同じなんじゃないかな。
——それはどの辺で感じてますか?
大輪:とにかくすごい数の応募が来るんですが、例えば募集条件でランクは○○以上っていうのを明記していても、そのランクに満たない人からの応募も多いですしね。
——まあその子たちからしたらなんとしてでもプロになりたいという思いかもしれませんね。
大輪:そうですね。最近専門学校の先生とお話しする機会があったのですが、eスポーツ科の就職先がないのもこういった応募が増えている要因になっていると感じました。
——なるほど全員がプロになれるわけではないから、卒業したところで就職先がないんですね。
大輪:例えばeスポーツ科の生徒全員をNORTHEPTIONアカデミー部門して、そこから強い子を集めるとか、そういったイベント形式で選手を集めるのもいいかもしれませんね。
——その流れでいうとeスポーツという業界も陰りが見えている部分もあるかと思います。ビジネスとしてeスポーツはどのように見えていますか?
大輪:今現在NORTHEPTIONは、僕が代表として経営している株式会社札幌ビケ足場の事業部として活動していますが、今後はNORTHEPTIONというチームを会社にしようとは思っています。
会社にすることによってNORTHEPTIONの事業を多角化しやすくなりますしね。
——NORTHEPTIONを会社にするということは、チーム全体としてメンバーを養っていける資金力や集客力を感じているから?
大輪:そうですね。あとはNORTHEPTIONを多角化することで、例えばアパレルだったり飲食だったり、eスポーツに特化した事業も進めやすいと思っている部分もあります。
「株式会社札幌ビケ足場の大輪です」っていうより「NORTHEPTIONの大輪です」いった方が話しも進めやすいじゃないですか。
——確かに現状、NORTHEPTIONにとって株式会社札幌ビケ足場の大輪さんはチームのスポンサーという立ち位置に見られてしまうかもしれませんもんね。
大輪:あとは北海道に拠点を置きつつも、ゲーミングブースを含めたオフィスは東京に構えたいなあとは思っています。やっぱり、人が集まるとなると東京の方がいいですし。
——eスポーツのオーナーからそういった前向きな話が聞けたのはうれしいですね。最後に、今後の展望として次に北から目指したい場所というのをお聞かせください。
大輪:5年後には名実ともに日本一のチームに持って行きたいですね。10年後にはNORTHEPTION EUとか、世界に拠点があるチームでありたいです。
世界で活躍できる選手を育てるために世界に出なければならない。世界の経験を積まなければならないし、注目されなければならないですしね。なので2023年度は全部門制覇したいなという野望はあります。
直近でいうと、VALORANT部門に関してはアカデミーや女子部門に力入れていきたいですね。やっぱり新しい選手を見つけるのは面白いですしね(笑)。
——ありがとうございました!
———
『VALORANT』の公式大会でZETA DIVISIONに勝利して日本一を獲得。そして国際大会で世界を相手に戦った2022年は、NORTHEPTIONにとって大きく飛躍した一年だったに違いない。
しかしインターナショナルリーグ導入により、チームメンバーは半ば散り散りに。新ロスターでインターナショナルリーグ進出を目指すという長い道のりを歩むこととなった。
一方で、『Apex Legends』や『コール・オブ・デューティ』、さらには格闘ゲームの部門などさまざまな部門でも活躍を見せるNORTHEPTION。2023年はさらに躍進する年となることを願いたい。
大輪オーナー Twitter:
https://twitter.com/r1o_a1
NORTHEPTION Twitter:
https://twitter.com/northeption
NORTHEPTION公式:
https://www.northeption.com/
札幌ビケ足場:
http://www.bi-ke.com/
eSports Worldでは2022年、謎のベールに包まれたNORTHEPTIONのオーナー大輪広氏にインタビューを敢行。北海道から世界へというスローガンを掲げたチームのコンセプトや大輪オーナー自身の野望などをおうかがいした。
参考:
僕を世界に連れていって!【NORTHEPTIONオーナー 大輪和広氏インタビュー】
あれから1年——。日本のeスポーツシーンと共に大きな成長を遂げたNORTHEPTIONが、2023年どのようなビジョンを持っているのか。再び大輪オーナーに2022年を振り返りながらお話しをうかがってみた。
ついに『VALORANT』で世界進出!
NORTHEPTIONの知名度は爆上がり!
——お久しぶりです。2022年は『VALORANT』の公式大会「VCT 2022 stage2 Masters」において見事日本一を勝ち取り、海外進出を果たせた1年でしたね。以前のインタビューで、海外進出をして海外旅行をしたいとおっしゃっていたオーナーですが、ついに夢が果たせたといった感じでしょうか。
大輪オーナー(以下、大輪):ありがとうございます。僕は(現地)に行けてないんですけどね(笑)。
——えええっ! ということは海外旅行はまだおあずけ?
大輪:そうなんですよ。本業が忙しかったということもあり、後から合流したいと思っていたのですが、コロナ禍ということもあり、前もって申請しておかないと現地に行くことはできず……。
——残念です……。ただチーム的には世界進出の夢は叶ったわけですが、実際日本代表として国際大会を経験してどのような変化がありましたか?
大輪:めちゃめちゃありましたね。選手の伸び率も、チームの知名度も一気に上がった感じはしましたね。VALORANT部門を設立して2年程度だったのですが、それで世界に行けたということは僕らにとっても大きな出来事でした。
——ファンからの声とか、まわりの反響にも変化はありましたか?
大輪:以前インタビューさせていただいた記事がブワッとバズったのか、僕のTwitterの方にも通知がじゃんじゃん来たり、フォロワーさんが一気に増えたりしてビックリしたのを覚えています。
いやぁ、あの時は焦りましたよ。「俺なんか炎上したんじゃないかな……。なんか言ったっけな……。」とか(笑)。
——あはは。いい方向での注目でよかったです。選手自身はどのように変化したと感じていますか?
大輪:自信がついた感じはしましたね。ZETA DIVISIONやCrazy Raccoonといった誰もが思う強いチームとは違って、僕らはあまり自信がなくやっていたこともあったので、国際大会を経験したことは大きな自信にもつながりました。
あとは国際大会を経験したことによってオフライン環境でもプレッシャーに強くなったとは思いますね。海外の強豪チームにかなり揉まれたんで、ある意味吹っ切れたみたいな(笑)。
——海外のチームと戦ったというのも大きな経験値になりますもんね。
大輪:そうですね。大会だけでなくスクリム(練習試合)も現地でできましたし、国内とはまた違ったレベルの練習を経験することができたのは大きいですね。NAは本当にレベルがやばいです。
——具体的にどういったところが国内と違うのでしょうか。
大輪:Tier2のチームでも日本のトップチームくらいのレベルだったみたいで、そういったチームとのスクリムでも全然勝てなかったです。理由としては単純に日本よりも競技シーンが盛んで、大会の数も多いからだと感じています。単純に経験値の差がレベルの差につながっているんじゃないかな。
インターナショナルリーグ落選、VALORANT部門では移籍するメンバーも
——とはいえ2022年はNORTHEPTION自体も大きく成長した年だったと感じています。ただ2023年から大きく体制が変わる『VALORANT』の公式大会「VCT 2023」ではインターナショナルリーグに選出されませんでした。そういった経緯に関してオーナー自身はどのように感じていますか?
大輪:正直悔しい気持ちはあります。インターナショナルリーグ選考基準は強さだけではないということは知っていましたが、僕らにとって2022年は成績優先で活動していた部分もあったので、そういった部分では仕方がなかったという気持ちでもありますね。
——成績優先したという意味では有言実行できた年でしたね。ただそんなVALORANT部門も2022年で半ば散り散りというか、ある意味一新する形になったと感じています。
Will @GenG add another trophy to their collections? #VCT #VCTPacific #VALORANT #VALORANTEsports pic.twitter.com/n9GqQKRCjr
— VALORANT Champions Tour Pacific (@vctpacific) January 27, 2023
大輪:以前の経験を生かして、僕らは彼らを引き留める策を講じていました。それは金額面であったり環境面であったり——。
ただ一方で、選手たちにとってインターナショナルリーグで戦うということは夢でもありますし、ひとつのステータスとして大きなものです。最終的な判断は選手に委ねることにしました。
——引き留める策を講じていたというのは想像できませんでした。以前のインタビューで話されていた「NORTHEPTIONを踏み台にしてもいい」というオーナーの考えは変わった?
大輪:僕個人としての気持ちは今もそういう気持ちではあります。ただNORTHEPTIONのチームとして考えると、2022年のVALORANT部門はこれ以上のチームは作れないんじゃないかというくらい完成されたチームでもあったので、逃したくないという気持ちが勝ってました。
——大輪さん個人としての気持ちとチームとしての考え方が交錯すると複雑な心境ですね。
大輪:まあチームとして考えた時「NORTHEPTIONってすぐに選手を放出するチームじゃん」ってまわりも思われてしまうのも本意ではないですしね。
——2023年からはインターナショナルリーグを目指すチームとして再始動となるわけですが、同じ目標を掲げる他チームとそういった話をすることはあるんでしょうか
大輪:いや、してないですね。ぶっちゃけ、うちのチームはどうやって強くなっていくのかわかってないんですよね(笑)。
——えええっ?
大輪:「(NORTHEPTIONが強い理由は)みんながんばっているからですよ」としか言えないです(笑)。実際、選手たちは練習に相当時間を割いてますからね。
——2022年のVCTとは違い、上位リーグを目指すとなると練習の仕方も変わってくるんじゃないでしょうか。
大輪:そうですね。ある意味インターナショナルリーグとは別の環境にいるということで、インターナショナルリーグで戦っているチームと練習試合ができる機会が増えるんじゃないかと思っています。
インターナショナルリーグのチーム同士はあまりスクリムしないでしょうし、逆に僕らも同じChallengersリーグのチームとは練習しないでしょうしね。
VALORANT部門は各チームそれぞれに強さがあるので、2023年は国内リーグも群雄割拠になるんじゃないかなぁ。インターナショナルリーグについては、とにかく日本のチームがトップにいてくれることを願っています。
世界に輩出できる選手を育てたい
〜NORTHEPTIONの新たなビジョン〜
——何度か話題にも出ているようにNORTHEPTIONは2022年に大きく飛躍したと感じています。スポンサーが増えたこともその中のひとつだと思いますが、チームの運営や考え方に変化はありましたか?
大輪:新しく自社ブランドやRazerさんのゲーミングデバイスを取り扱っているGRAPHTさんにスポンサードしていただいたのですが、GRAPHTさんを選んだ理由としてプロシーンの構図を意識したというのはあります。
——プロシーンの構図?
大輪:例えば出場チームのスポンサーがすべて同じだったら気まずいじゃないですか。地域でのダービーができない分、大会をもっと面白く見るためにも、せっかくスポンサードしていただいているのでダービーした方がいいんじゃないの? とかそういう部分は多少意識しています。
デバイスメーカーさんだったらどこのゲーミングデバイスもそれぞれ特色があってモノがいいのは周知の事実で、スポンサードしていただいているというのは大前提にはありますけどね。
——ご自身のチームだけでなくeスポーツシーンを俯瞰でとらえているという考え方はNORTHEPTIONらしい面白さがありますね。
大輪:やっぱりeスポーツの発展が、今日本において一番のキーですからね。
——なるほど。また改めてNORTHEPTIONのWebサイトを拝見したところ、FPSだけでなく格闘ゲームの選手も所属しているようですね。NORTHEPTIONは『VALORANT』や『レインボーシックス シージ』といったFPSタイトルを中心としたチームだと思っていたのですが、今後どのようにチームを広げていこうと考えているのでしょうか。
大輪:根底として世界に輩出できる選手を育てたいというのがあるので、そこを目指せる部門だったりタイトルがあれば積極的に作っていきたいとは思います。
実は格闘ゲームの部門だと割と世界で勝ってた経験のある選手が所属しているので、NORTHEPTIONとしても世界に通用するんじゃないかと思っています。
ただもともとはFPSタイトルから発信したチームではあるので、どうしてもFPSタイトルで世界に行きたいという夢はありますけどね。
——今だとどの辺のタイトルが狙えそうですか?
大輪:現状だとコール・オブ・デューティ部門がめっちゃ強いですよ。日本だと一番強いんじゃないかな。「CALL OF DUTY®: MODERN WARFARE® II JAPAN CHAMPIONSHIP」も招待で出場していますしね。
——おおっ、そうだったんですね。
【#CoD部門】
— NORTHEPTION (@NORTHEPTION) January 15, 2023
CALL OF DUTY®: MODERN WARFARE® II JAPAN CHAMPIONSHIP PLAYOFFS
結果報告
📌GRAND FINAL
vs CAG
3-2
優勝出来ました!🏆
沢山の応援ありがとうございました!#NthWIN #MW2 #CoD pic.twitter.com/an6pI1j3fY
大輪:実はコール・オブ・デューティ部門は1年くらい前に元REJECT FAKER所属の選手を集めて設立していたのですが、その間ずっと大会もなくひたすら練習しているような、まさに這いつくばっている時期を生き抜いてきたので、実はかなり期待しています!
——『コール・オブ・デューティ』の競技シーンが少ない中、ずっと活動しているというのはすごいですよ。
大輪:ここ最近の大会はほとんど勝ってるんで、ある意味NORTHEPTIONが独占していますよ。まあ、(出場している)チームが少ないっていうのもあるんですけどね(笑)。
ただ彼らのいい面は強さだけじゃないんです。試合のないタイトルの部門にいる自分たちってチームにとってお荷物なんじゃないかって思っていた部分があったみたいで、「僕らはお給料の半分はいらないです」って自分たちから言ってきたんです。
——すごい。そんなこと普通選手の方から言えませんよ!
大輪:本来だったら口が裂けても言えないじゃないですか? かと言って僕らも言いづらい部分でもあるのに、そうやってチームのためを思って気を遣ってくれるなんて、チームの鏡ですよ本当に。
——そんな中実力を発揮しているなんて、ちょっと泣けてきますね。
大輪:そうなんですよ。なのでコール・オブ・デューティ部門はできるだけ残していきたいと思っています。
野望はただひとつ!世界で活躍するチームになりたい
——今まで話してきた流れだと、NORTHEPTIONに応募してくる選手側の意識も変わったんじゃないでしょうか。
大輪:募集となるとまた少し変わってきて、「どうせ受からないけど応募だけしてみよう」みたいないわゆる記念応募の子たちもいるかもしれないですね。これはどこのチームさんも同じなんじゃないかな。
——それはどの辺で感じてますか?
大輪:とにかくすごい数の応募が来るんですが、例えば募集条件でランクは○○以上っていうのを明記していても、そのランクに満たない人からの応募も多いですしね。
——まあその子たちからしたらなんとしてでもプロになりたいという思いかもしれませんね。
大輪:そうですね。最近専門学校の先生とお話しする機会があったのですが、eスポーツ科の就職先がないのもこういった応募が増えている要因になっていると感じました。
——なるほど全員がプロになれるわけではないから、卒業したところで就職先がないんですね。
大輪:例えばeスポーツ科の生徒全員をNORTHEPTIONアカデミー部門して、そこから強い子を集めるとか、そういったイベント形式で選手を集めるのもいいかもしれませんね。
——その流れでいうとeスポーツという業界も陰りが見えている部分もあるかと思います。ビジネスとしてeスポーツはどのように見えていますか?
大輪:今現在NORTHEPTIONは、僕が代表として経営している株式会社札幌ビケ足場の事業部として活動していますが、今後はNORTHEPTIONというチームを会社にしようとは思っています。
会社にすることによってNORTHEPTIONの事業を多角化しやすくなりますしね。
——NORTHEPTIONを会社にするということは、チーム全体としてメンバーを養っていける資金力や集客力を感じているから?
大輪:そうですね。あとはNORTHEPTIONを多角化することで、例えばアパレルだったり飲食だったり、eスポーツに特化した事業も進めやすいと思っている部分もあります。
「株式会社札幌ビケ足場の大輪です」っていうより「NORTHEPTIONの大輪です」いった方が話しも進めやすいじゃないですか。
——確かに現状、NORTHEPTIONにとって株式会社札幌ビケ足場の大輪さんはチームのスポンサーという立ち位置に見られてしまうかもしれませんもんね。
大輪:あとは北海道に拠点を置きつつも、ゲーミングブースを含めたオフィスは東京に構えたいなあとは思っています。やっぱり、人が集まるとなると東京の方がいいですし。
——eスポーツのオーナーからそういった前向きな話が聞けたのはうれしいですね。最後に、今後の展望として次に北から目指したい場所というのをお聞かせください。
大輪:5年後には名実ともに日本一のチームに持って行きたいですね。10年後にはNORTHEPTION EUとか、世界に拠点があるチームでありたいです。
世界で活躍できる選手を育てるために世界に出なければならない。世界の経験を積まなければならないし、注目されなければならないですしね。なので2023年度は全部門制覇したいなという野望はあります。
直近でいうと、VALORANT部門に関してはアカデミーや女子部門に力入れていきたいですね。やっぱり新しい選手を見つけるのは面白いですしね(笑)。
——ありがとうございました!
———
『VALORANT』の公式大会でZETA DIVISIONに勝利して日本一を獲得。そして国際大会で世界を相手に戦った2022年は、NORTHEPTIONにとって大きく飛躍した一年だったに違いない。
しかしインターナショナルリーグ導入により、チームメンバーは半ば散り散りに。新ロスターでインターナショナルリーグ進出を目指すという長い道のりを歩むこととなった。
一方で、『Apex Legends』や『コール・オブ・デューティ』、さらには格闘ゲームの部門などさまざまな部門でも活躍を見せるNORTHEPTION。2023年はさらに躍進する年となることを願いたい。
大輪オーナー Twitter:
https://twitter.com/r1o_a1
NORTHEPTION Twitter:
https://twitter.com/northeption
NORTHEPTION公式:
https://www.northeption.com/
札幌ビケ足場:
http://www.bi-ke.com/
番外編【プロチームとしてプロ選手として気をつけることは?】
——2022年でNORTHEPTIONの知名度も大きくなったということですが、知名度が上がったことで特に気をつけるようになったことってありますか?
大輪:SNSでの発言はコンプライアンス的にも気をつけるようにしています。今後はもっと大事になってくるとも感じています。
——NORTHEPTIONとしては大きな炎上はなかったですよね。
大輪:そうですね。僕らは最初から選手に伝えてあるので、炎上することはなかったと思います。
——場合によっては過去のツイートまで掘り下げて炎上しちゃうこともありますからね……。
大輪:そうそう。僕らもそこまで遡って調査することはできませんからね。本当に難しい問題ですよね。もう少し寛大な目で見守るような感じで観戦してくれるといいんだけどなぁ。
——大輪さんは朗らかというか、あまり物言い的なツイートはしませんんよね。
大輪:いや、いいたいことはあるんですけど(運営陣に)止められてます(笑)。
——2022年でNORTHEPTIONの知名度も大きくなったということですが、知名度が上がったことで特に気をつけるようになったことってありますか?
大輪:SNSでの発言はコンプライアンス的にも気をつけるようにしています。今後はもっと大事になってくるとも感じています。
——NORTHEPTIONとしては大きな炎上はなかったですよね。
大輪:そうですね。僕らは最初から選手に伝えてあるので、炎上することはなかったと思います。
——場合によっては過去のツイートまで掘り下げて炎上しちゃうこともありますからね……。
大輪:そうそう。僕らもそこまで遡って調査することはできませんからね。本当に難しい問題ですよね。もう少し寛大な目で見守るような感じで観戦してくれるといいんだけどなぁ。
——大輪さんは朗らかというか、あまり物言い的なツイートはしませんんよね。
大輪:いや、いいたいことはあるんですけど(運営陣に)止められてます(笑)。
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