Art選手がオーディンを使わなかった本当の理由とは——【Sengoku Gaming Art選手インタビュー】

VALORANT』の2022年シーズンもついにStage2へと突入!
世界進出をかけたプレイオフが「さいたまスーパーアリーナ」にて有観客での開催が決定した「VALORANT Champion’s Tour 2022」。そんなプレイオフへの進出をかけた「VCT2022 Stage2 Challengers Japan Week2 Main Event Day1」が2022年6月4日(土)に開催。

このチャンスを逃すと次がないということで、より白熱した戦いを見せたDay1では、Sengoku Gaming(以下、SG)とJadeite(以下、JDT)が勝ち残り、見事プレイオフ進出の切符を手にした。今回は、プレイオフ進出を1位で通過したSGのArt(アート)選手に独占インタビュー。試合直後の感想やプレイオフに向けての意気込みをおうかがいした。



オーディンというこだわりを捨てた新たなArt選手


——プレイオフ進出1位通過おめでとうございます!

Art選手(以下、Art):ありがとうございます。WeeK1では結果が出せなくて正直焦っていた部分もあったのですが、こうして自分たちが目標としていたスタートラインに立ててうれしいです!

——初戦のReignite(以下、RIG)戦では3マップ目まで持ち込む熱戦で、どのマップでも拮抗した戦いが続いていたと思います。1マップ目のアイスボックスでは惜しくも取られてしまったのですが、どういったところに苦しめられましたか?

Art:特にディフェンダーサイドで、ミッドを詰めようとコールをしたのですが、自分が出したコールに統一感がなく、プレイ自体に迷いがあったのが敗因だと思っています。

——第一戦ということもありますもんね。2マップ目のヘイヴンでは見事取り返しに成功しましたが、そういった迷いを修正できたことが勝因だったのでしょうか

Art:そうですね。練習通りに動けて、押すって決めたら「Go! Go! Go!」やめようって決めたらやめようって統一感を持って動けていたと思います。

——Cロングでオーディンを使った4キルなんかはArt選手っぽさがでてましたもんね!

Art:はい。気持ちよかったです(笑)。事前にRIG戦のデモを見て研究していたこともあり、RIGがどのタイミングで出てくるかというのもなんとなく把握していました。Misayaが早いタイミングで「トレイルブレイザー」(索敵アビリティー)を出してくれて、RIGの居場所が確定したのでCロングを撃ち抜いたって感じですね。

▲オーディンといえばArt選手と自他ともに認めるオーディンの使い手。この日もアグレッシブな連射でRIGを圧倒。出鼻をくじくとはまさにこのことだ!(https://youtu.be/uPRxBmMmnGQ?t=7632

——Art選手といえばオーディンというイメージでしたが、今回はヴァンダルやファントムを使うシーンも見受けられました。心境の変化があったのでしょうか?

Art:そうですね。今回からオーディンだけを使うというプレイスタイルをやめました。守りは「(オーディンが)刺さる!」って思ったタイミングで、攻めは正面が勝てている時やアンチエコの時に使うというのを決めていて、正面が苦しい時や相手のバックアップが早い時はファントムにしようという風に使い分けるようにしました。

実は、先週の「Week 2 Open Qualifier」でのDETONATOR戦で、自分の中で悔しい思いをしたことがありました。というのも、味方が負けている時にオーディンだと何も関与できないんです。「Week 1 Open Qualifier」のCrest Gaming Zst戦でも、味方が苦しい時に何もできなくて負けてしまったりと、本当に悔しい思いの連続でした。

そういう思いもあって、ヴァンダルやファントムを自信が付くまで練習してきました。今回、そういう努力が結果につながってめちゃめちゃうれしかったですね。

——なるほど。自らのポリシーを捨てたことで味方へのサポートが強化されたんですね。最後のスプリットは前半こそ7:5と不安を残した結果となりましたが、後半アタッカーサイドになってからはSGらしいガンガン攻めるスタイルがささり、連勝を重ねていました。基本的にアタッカーサイドが不利といわれているスプリットで、あそこまで圧勝できた要因はなんだったのでしょうか。

Art:元々BLUE BEESに所属していたZerostさんとスミス(something選手)がSGに加入したのですが、彼らはデュオで活躍していた程連携が取れています。彼らには阿吽の呼吸みたいなものがあったので、それを主軸に戦えてたのが勝因だと思っています。

▲AサイトはZerost選手とsomething選手(通称、スミス選手)が、残りの選手はBサイトやミッドから前線をあげるという戦いが多く見られたSG。ラウンド14では、Zerost選手が「ホウント」で索敵。敵を視認した瞬間にsomething選手がなだれ込み、そこからエースを決めた。「ホウント」で発見したkuro選手の目の前に「クラウドバースト」を炊いて視界を奪いながらのキルはあまりのも早すぎる連携だ(https://youtu.be/uPRxBmMmnGQ?t=12151

——RIG戦に特化した対策というのはありましたか?

Art:そうですね。RIGはしっかりとチームプレイを主体としているチームだったので、逆に僕たちはスローで進行してフィジカルを押しつけていこうという作戦で挑みました。アビリティーを入れてからのエントリーというチームプレイをイメージしている相手からすれば、とても戦いづらかったんじゃないかな。

考えすぎないことが大切!
それがSGのスタイルだ!


——続けて決勝のJDT戦ですが、1マップ目、2マップ目ともに圧勝でしたね。1マップ目はRIG戦でもピックしていたアイスボックスをピックしていました。RIG戦では取られてしまったマップを再びピックした理由はなんだったのでしょうか?

Art:今までの試合と今日のRIG戦を含めて3回アイスボックスをピックしたんですが、実は3回とも負けていて、JDT戦は4回目のピックだったんです(笑)。

ただRIG戦自体は勝利して緊張がほぐれていて、緊張がほぐれいていた状態でアイスボックスをどう攻略できるのかチェックしてみようという気持ちでピックしました。

——3連敗中のマップをあえてピックしていたんですね!ある意味挑戦でもあった?

Art:そうですね。

——アイスボックスではArt選手の「ヴァイパーズピット」の使い方が印象的でした。RIG戦でもありましたが、あえて毒を解除させて視界を広げ、その場にいないと思いきや、実は近くにまだ潜んでいたこともあったりと、相手の心理をうまく読み取っているようにも感じました。どういった考えで毒を解除していたのでしょうか?

▲ヴァイパーのアルティメットスキル「ヴァイパーズピット」は、広範囲を毒霧で覆い、相手の視界を奪いつつ毒による一時的なダメージを奪う強力な技。毒霧の中にヴァイパーがいれば毒霧は維持され続けるため、毒霧が晴れたということはヴァイパー自身が毒霧周辺にはいないと相手視点からは思えるのだが、Art選手はあえて毒霧の中にいながらも毒霧を自身のタイミングで解除。毒が晴れた瞬間にオーディンを構えたArt選手が目の前にいたallow選手は何を思う……(https://youtu.be/uPRxBmMmnGQ?t=29622

Art:敵が毒霧の中に入っていれば、敵の体力は減り続けるので毒霧を出し続けているのは味方にとって有利なことなんですが、味方にとっても射線が通らなくなるというデメリットもあります。特にスパイク設置後に敵がリテイクに来た時は「下げるよ!せーの!」ってコールをして、毒霧が晴れた瞬間に一斉に射線を通すという作戦で毒を解除しています。

——なるほど。あえての解除にはそういった味方への気遣いもあったんですね。2マップ目のバインドは、とにかくJDTのやりたいことをさせない一方的な戦い方が刺さっていたように感じました。どのような作戦で挑んだのでしょうか?

Art:特に作戦とかはなくて、良くも悪くもアドリブというか、行き当たりばったりというか——。SGの本来のスタイルとして「考えすぎない」というのがあるんで、ものすごくSGらしいスタイルで戦えたんじゃないかなと思っています。

——守りなのに攻めるという展開は見ている側としても面白い試合展開でした。

Art:JDTがマップをコントロールしやすく、セットが強いエージェント構成だったので、当たれるところで当たらないと押しつけられちゃうという気持ちもあったので、なるべく前に出て撃ち合いをするというのは意識していました。

▲攻めなのか守りなのか混乱してしまうほどに前に出るSG。JDTが思い描いていたセットアップをことごとく潰してくスタイルはキャスター陣も驚きを隠せない(https://youtu.be/uPRxBmMmnGQ?t=32136

——なるほど。確かにJDT側からしたら、やりたいことができなかったという印象でしたね。

Art:そうですね。やりたいことをさせないように意識しました!

日本人とロシア人との混合チーム
コミュニケーションの秘訣は?


——SGはsomething選手とVici選手がロシア人選手で、日本人とロシア人で構成されたチームですね。普段はどのようにコミュニケーションをとっているのでしょうか?

Art:お互い日本語とロシア語を教え合って雑談することもありますが、基本的には共通言語は英語ですね。

——なるほど。試合中は英語で話している?

Art:試合中は英語ですね。あまり英語得意ではないんですけど……(笑)。伝えようとがんばってはいます!

——あはは。配信ではキャスター陣のインタビューを通訳するシーンもありましたもんね(笑)。具体的にどんなコールをしているんですか?

Art:いやぁ、もうゴー or キャンセルですね(笑)。

——いくか、やめるかみたいな?

Art:はい。8割ぐらいゴーですね(笑)。

——ただそういうわかりやすいコールがsomething選手とVici選手には伝わりやすいんですね。

Art:そうですね。あとは if〜というのもたまに使いますね。「もし、○○だったらこうしよう」みたいな。

イフ デイ カウンター ハード ゴー キャンセル! アフター トゥギャザー レッツゴー!

みたいな感じですね。はい(笑)。

——試合中は展開がめまぐるしいから、そういう簡単なコールはわかりやすくていいですね!

Art:簡単に伝えようと努力しています!

——あと、ひとつ気になったのがあります。SGって試合中あまりタイムアウトを取らない印象でした。今日も1回取っただけだったような……。その辺にもなにか意図があるのでしょうか?

Art:僕たちはコーチがいないので取る回数が少ないというのはありますね。あと僕が相手を研究するのが好きで、普段から相手の試合の動画をみることが多いのですが、このタイミングで話し合いしたいなと感じた時にコールするくらいですね。

あとは流れが変だなぁって感じたら雰囲気で取ってます。今日はスミスが「ここで1回タイムアウト取って欲しい」っていってコールしてましたね。

——確かに今日のタイムアウトはRIG戦のスプリットでしたね。

Art:そうですね。でも、話し合うのも英語だから、なかなかうまく伝わらず、逆に頭がごちゃごちゃしちゃうこともあるので、あまり取らないように意識はしています。

——最後に、ファンに向けてひとことと、プレイオフに向けての意気込みをお願いします!

Art:いつもたくさんの応援ありがとうございます!

プレイオフに進出できて上り調子というか、ようやく自分たちの目標としていたスタートラインに立つことができたので、ここからは解き放たれた野獣じゃないですけど、引っかき回していこうと思っているので応援よろしくお願いします!

——ありがとうございます!ちなみに、プレイオフのDay4、Day5が「さいたまスーパーアリーナ」で開催されることが決定したことも後押しになっていますか?

Art:あれってチケットが抽選販売で、選手側からしても行きたい気持ちがあるから(抽選販売に応募して)取っちゃいたい……。でも自分で行きたいじゃないですか?

なので、絶対に選手として行ってやるぞ!って気持ちにはなりましたね(笑)。

——あはは。選手ならではの複雑な心境ですね。ぜひ選手としてお願いします!

———

Sengoku Gamingは『VALORANT』の競技シーンが始まった初期から活躍していたチームだが、なかなか思うように結果が出せず、2021年4月にはVALORANT部門を解散することに——。そんなSengoku Gamingが2021年9月に新メンバーを迎えて再始動。そのタイミングで加入したひとりがArt選手なのだ。

「今大会における思いは大きい」と語るArt選手。自身のポリシーを捨て、新たな戦い方を見いだすだけでなく、各チームの対戦動画を見ては研究に余念がないその姿は、配信での明るい彼とは違う、新たな一面を見ることができた。

そんな長い長い戦いの末ようやく手に入れたプレイオフへの切符。Art選手本人がいうように、解き放たれた野獣のごとくSengoku Gamingらしい、勢いのある戦いが「さいたまスーパーアリーナ」の場で見られることを楽しみにしたい。

Art選手Twitter:
https://twitter.com/ibaraki_ninja

配信アーカイブ
Twitch:
https://twitch.tv/valorant_jpn

YouTube:
https://youtube.com/c/VALORANTjp

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