「僕らはもっと本気になれる」世界で活躍していくために必要なもの 【REJECTオーナー 甲山翔也氏インタビュー:後編】

2020.10.28 井ノ川結希(いのかわゆう)
若干21歳の若き青年によって設立されたチーム「REJECT」。発足2年にもかかわらず、数々のタイトルで頭角を現しeスポーツ界に新風を巻き起こしている。特に『VALORANT』部門では、一強だった「Absolute JUPITER」に勝ち星を挙げるなど、めきめきと実力をつけている。

神の子の異名を持つDep選手。恐ろしいまでのAIM力を持つHaReeee選手など、強者が続々とチームメンバーに入ってきた「REJECT」の『VALORANT』部門。

前編に引き続き、後編も「REJECT」の甲山さんにインタビュー。
後編は『VALORANT』部門に焦点を置いて、チーム結成のいきさつや、強くなるための秘訣などをおうかがいしました。

お前とならやっていける 幼なじみのDep選手の加入から動き出した『VALORANT』部門


——前編では「REJECT」と言うチーム全体についてお話をうかがいました。後編では『VALORANT』部門についてお話をお聞かせください。率直に気になったのが、どうやってこのメンバーを集めたのかなあというところです。

甲山さん(以下、甲山):チームをある程度強くするのってものすごく簡単で、「強いリーダーを取ってきたら勝ちゲー」なんです。

——そこでDep選手を起用した?

甲山:Depくんとは小学校くらいの頃から仲良しで、よく一緒にオンラインゲームで遊ぶ仲でした。その時から彼のセンスはピカイチでした。

その後、しばらくDepくんの姿を見なくなったんですが、気がついたら『オーバーウォッチ』でいきなり戻ってきて、しかもいきなり日本代表になって戦ってたんです(笑)。

Overwatch World Cup 2018の日本代表チーム。写真一番左がDep選手(出典:オーバーウォッチリーグ公式

——いきなり日本代表ってすごい……。

甲山:その後、活躍の場を『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下、『PUBG』)に移行してたので、そのタイミングで「うちのチームに来ない?」って誘ったんです。

そしたら「お前のチーム弱いからいかない」って断れてしまいました(笑)。

——なんと(笑)。

甲山:はい(笑)。

時は流れ、Depくんが『PUBG』を辞めたあたりで、急に彼から「今から会わない?」って話がきたんです。何だろうと思って会ってみたら、「お前、信頼できるからお前のところでプロとしてやっていこうかな」って言ってくれたんです。

一瞬冗談かと思って「えっ? 本気で言ってんの?」って何度も聞き直したのを覚えてます(笑)。


——それが、noteに書いてあった焼肉屋さんでの話だったんですね。

甲山:はい。そのあと程なくして、『プロジェクトA』(のちの『VALORANT』)が発表されたので、Depくんにリーダーとしてやってもらうことになりました。

——なるほど。そうやってリーダーが決まったんですね。

甲山:そうですね。

そのあとにDepくんから、HaReeeeとkaminariというプレイヤーがいることを聞きました。彼らは3人でずっと『CS:GO』をプレイしていたらしく、野良で一番強いやつらが彼らだと言ってました。

「ほんとかよ?」って思った僕は、彼らに『VALORANT』をやらせてみました。そしたらめちゃめちゃ強くて。Depくんも「こいつらがいれば勝てるぞ」って言ってたのもあったので、チームに入ってもらいました。

——おおっ、続々とメンバーが集まってきましたね。

甲山:残りのfeezさんや、dhimorutoさんも個人的に声を掛けて入ってもらいました。Norisenさんは一般応募から選んで入ってもらいましたね。

——彼らを選んだ決め手はなんだったのですか?

甲山:やっぱり『Counter-Strike: Global Offensive』(以下、『CS:GO』)がうまかったという点ですね。『VALORANT』は『CS:GO』がうまいやつが強くなれるタイトルだと思っているので、そこに注目してました。

——確かに、dhimoruto選手なんかもめちゃくちゃ強い時ありますよね。

甲山:彼はなぜか「Absolute JUPITER」戦の時だけ異常に強いんですよ(笑)。

——あはは(笑)

敗北から得たチームの結束力


——「REJECT」が注目された大会といえば、2020年8月8日(土)〜8月16日(日)に開催された「GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2020」(以下、「GGC2020」)ですね。

甲山:そうですね。あの大会はいろいろな意味で思い出に残る大会でした。

なんといってもGrand Final「Absolute JUPITER」戦、はじめてBO3の1マップ目で勝てたんです。ですが、2マップ目はオーバータイムまで持ち込んだんですけど負けてしまい、3マップ目のスプリットでは13対0でボコボコにされちゃいましてね……。

▲2マップ目のヘイヴンでは15対13という僅差で「Absolute JUPITER」が勝利。「REJECT」は確実にプレッシャーを与え続けていた。(出典:GGC2020

この大会、実はKaminari選手にとって「REJECT」での最後の試合だったんです。

——この試合を最後に辞めることが決まっていた?

甲山:はい。彼はもともとプロ選手としての経験がなく、プロのプレッシャーに耐えられないということもあって辞めたいと言っていました。なんとか残ってもらえないかとチームのみんなで説得したりもしたのですが、結局この大会を最後に辞めるという話が決まってしまいました。

そんな状態で、決勝戦「Absolute JUPITER」との戦いがはじまり、1マップ目で勝利。もうこの時点で「うおおおおお」ってチーム全体のテンションが上がってました。2マップ目も負けてはしまいましたが、オーバータイムまで持ち込んでめちゃくちゃいい試合をしていた。そこで3マップ目の13対0ですよ。

僕としても「いやいや、どうした?」ってことになるわけですよ(笑)。

——確かに、マップがスプリットでアタッカー*からのスタートということもあったとは言え、急に1ラウンドも取れなかったのは見ている方も「どうしちゃったの?」って思ってました。

*スプリットというマップはディフェンダー側が有利とされているため、アタッカー側からスタートする「REJECT」は状況的に分が悪いという意味

甲山:うちはDepくんがIGL(ゲーム内のリーダー)で、彼が声を上げてチームが動き出すというチームなんですが、1マップ目に初めて「Absolute JUPITER」に勝利した喜びや、Kaminariくんがこの試合を最後に「REJECT」を辞めてしまうという悲しみから、3マップ目の1ラウンドあたりからウルッとしていて、全然声が出せなかったみたいなんです。


——あのクールなイメージのDep選手がですかっ?

甲山:はい。あのDepが泣いてるんですよ!

ただ彼が声を出さないとチームが動かない。そんな状態なのになかなか声が出せない。

普段クールなDepくんの声が震えていて、それを感じ取った選手全員も悲しい気持ちになって泣き出しちゃったりして、もはや誰もゲームできる環境じゃなくなっちゃったんです。

——まさかそこまでの状態だったとは!

甲山:試合が終わったあと、あとからその話を聞いた僕は「お前ら、泣くんか……」って。さらには「Absolute JUPITER」のbarce選手も、試合が終わったと「お前、辞めんなよ。お前ともっと戦いたいよ」って、なんかものすごくいい雰囲気だったんです。


——なんだろう。めっちゃ青春ですね。それでkaminari選手は残ることになったんですか?

甲山:はい。一度は抜けたんですが、またすぐに戻ってきてくれました。

あとfeezさんとは仲が良くて、普段から『VALORANT』で一緒に遊ぶ仲なのですが、この試合の後「お前やらかしたな〜(笑)」って冗談っぽく突っ込んでみたんです。

そしたら、ひどく落ち込んじゃって「もう、このまま選手やってくのきついっす」って言われて……。僕はそれを聞いたとき「あの冗談がそんなに効いてたのか!」って思いました。

またDepくんも「いや、みんな真剣にやってるのに、あんな言い方はないだろ」って僕に怒ってきたんです。僕はその彼らの気持ちがものすごくうれしくて……。

——うれしい?

甲山:僕は彼らが『VALORANT』を適当になんとなくやっているものだと思っていたのですが、ここまで真剣に取り組んでいるんだというのをその時肌で感じて、「ここまで悔しさを感情に出してくれるとは」って、めちゃめちゃうれしい気持ちになりました。

僕のひとことでfeezさんに辞めてもらっては困ると思い、その日にチケットを買って次の日の昼にはfeezさんの家に向かい、自分の思いを伝えて残ってもらうことになりました。

——すごいっ。熱意のある説得ですね。あの大会にはそんなドラマが隠されていたんですねー。

甲山:はい。「GGC2020」ではさまざまな発見や出来事があり、僕にとっては思い出に残る試合でした。

悔しいという感情を持つことはすばらしいこと


——例えば、試合に負けたときは選手にどのような声をかけたりしているんですか? またオーナーという立場では、どう接するべきだと思いますか?

甲山:負けたときの対応って状況によってさまざまですが、一番大事なのは選手が「負けて悔しい」と思っているかっていうところに注目しています。

そもそも悔しいという感情にも度合いがあって、泣くほど悔しいのか、味方に対してイライラしているのか、さまざまな心理があると思うんです。そういった感情によって対応の仕方を変えています。

逆に試合に負けたのに悔しがっていない選手がいた場合は叱ります。なんなら「別に選手を辞めてもいいよ」くらいきつい言い方もします。

また、そういう場合マネージャーやコーチが教育できていない可能性もありますし、オーナーとして僕の教育も行き届いてなかったという可能性もありますので、チーム全体で集まって反省会をします。

——なるほど。それはどうして?

甲山:そもそも悔しいって言えることって、ものすごく素晴らしいことなんです。悔しいって気持ちは、今まで練習をちゃんとやってきたからこそ、負けたときに悔しさが湧き上がってくるものですしね。

なので、悔しがっていない選手がいた場合は「昔のことを思い出せ。俺らはもっと辛いときがんばってきたじゃないか」って選手を鼓舞しています。

ただそういう悔しさを共有することって、オンラインじゃ難しいと思っています。ですので、今『VALORANT』部門の選手がオフラインで集まって練習できる環境を急いで構築しています。

——悔しさをバネにして成長していくんですね。

甲山:また目標を高めることも大切だと思っています。例えば『VALORANT』だったら、目指すは「Absolute JUPITER」じゃなくて、「G2 Esports」。しかも「G2 Esports」に勝つだけで満足するのではなく、さらに高みを求めていく。そういったマインドの持ち方ひとつで選手の考え方も変わると思っています。

※G2 Esportsはトッププレイヤーが集結した世界最高峰のeスポーツチーム

——確かに気持ちの持ち方って大切ですよね。

チームを強くしていくために必要なのはコーチとマネージャー


——選手の考え方を変えるほかに、チームを強化していくには何が必要だと思いますか?

甲山:ここ最近、チームを強くする方法というのが段々見えてきて、強さに必要なのはコーチとマネージャーだと思っています。

『Apex Lgends』部門では韓国からベテランのコーチやマネージャーを取り入れているんですが、もう考え方が全然違っていて、選手たちもゲームに対して熱狂的になっていくんですよ。

——そんなに?

甲山:はい。そういった気持ちが『VALORANT』部門にあるかと言われると、現時点ではなくて、例えば試合に負けても悔しがることもなく普通にしていることもしばしば……。

それってやっぱりおかしいなと思っていて、最近の『VALORANT』部門では、選手ではなくコーチやマネージャーを指導することが多くなっています。

『VALORANT』は、すでに選手の強さやポテンシャルだけでは勝てないゲームになってきていますしね。そういった環境を自分自身で感じてみたいというのもあって、僕自身『VALORANT』をプレイしてました。

——そういえば、つい最近レディアントになってましたもんね。「VALORANT Mildom Masters」では選手としても参戦してたり。実際に大会に参加してみてどうでしたか?

▲Dep選手の代わりにNasteLの選手名で大会に出場した甲山さん。選手に引けを取らない個人技でチャットを沸かせていた(出典:VALORANT Mildom Masters Day7

甲山:結果的には負けてしまいましたが、練習すればまだまだ勝てるかもしれないって思いました。もしまた選手が風邪とかで休んだときはまた出てみたいなあ(笑)。

——あはは。ほんとNasteLとしての活躍も楽しみです。最後に、日本のチームが世界で活躍できるようになるためには何が必要だと思いますか?

甲山:勝つために必要なことって実はたくさんあると思っています。

まずは、チーム力。
選手が強くても選手だけでは心が折れてしまうこともあるので、そういった面をしっかりとサポートできる体制をつくることですね。先ほどのお話にも少しあがってましたが、コーチやマネージャー、アナリストといったところを強化していくことも大切だと思っています。

次に、世界を知ること。
今国内のチームは「Absolute JUPITER」を倒すことに注力していると思うんです。そういう偏った攻略をしていると、特に対象を絞らずチーム力を高めていける「Absolute JUPITER」の方がどんどん強くなってしまいます。ひとつのチームの対策にこだわるのではなく、海外のチームの大会動画や解説動画を見て、世界のトレンドを追っていくことも大切だと思っています。

最後は、本気で取り組める環境作りです
海外のチームは試合による取り組み方も全然違います。例えば『VALORANT』では、この選手はこのタイミングで顔を出す傾向にあるとか、こういう癖があるとか全部データ化されてて、もはやデータで勝っているところもあります。そういうゲームに対して本気で取り組める環境というのが、日本ではまだまだ行き届いていません。

そういう本気になれる環境を作るには日本国内のチームが協力し合って意識を高めていく必要があると思います。そのためにもチームはもちろん、企業ももっともっと本気で取り組んで欲しいという気持ちがありますね。


「REJECT」はまだまだ強くなれると思っていますし、強くなるためだったらどんなことだって取り組みたいと思っています。なので日本ではじめて世界一になるのは「REJECT」という目標を目指してがんばっていきたいと思います!

——ありがとうございました!

———


彗星のごとく現れた「REJECT」の『VALORANT』部門。そこには、彼らにしかわからないドラマがあり、戦いがあることを今回のインタビューで知ることができた。

なお「Absolute JUPITER」のオーナー西原氏とはとても仲がよいとのこと。思想が似ているところもあり、お互いを高め合う存在だと甲山さん。


日本の各チームが時には仲間となり、時には敵となる。そんな風に切磋琢磨して世界を勝ち取るチームへと駒を進めてほしい。


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公式サイト:https://playvalorant.com/ja-jp/
公式Twitter:https://twitter.com/valorantjp


【井ノ川結希(いのかわゆう)プロフィール】
好きが高じて若干19歳でゲーム系の出版社に所属。現在はフリーランスでライター兼編集として活動している。現在はゲームのほかにゴルフや料理にはまっている。最近はまっているゲームは『VALORANT』。

Twitter:@sdora_tweet

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