投げが決まらないのは前提。それでも「キング」を使い続ける孤高の信念【『鉄拳7』プロゲーマー・破壊王選手インタビュー】
『鉄拳7』においては希代のキング使いとして名をはせているTeam HYDE所属の破壊王選手。マルチキャラクター使いが多い『鉄拳7』において、ひとつのキャラクターを使い続けている数少ない選手でもあります。本職を持ちつつ、兼業としてプロ選手を務め、妻子を支える大黒柱でもあります。
そんな破壊王選手の人と成りに興味を持ち、以前からインタビューを申し込んでいたのですが、大阪在住でなかなか仕事の休みも取れない状況に、ペンディングとなっていました。しかし、今回のコロナ禍により、リモートによるインタビューが特に珍しいものでもなくなりました。リモートであれば首都圏も地方も関係ないということで、破壊王選手にご対応していただくことになりました。
――Team HYDEは破壊王選手のために発足したとのことですが、どういった経緯でTeam HYDEと繋がりができたのでしょうか。
破壊王選手(以下、破壊王):Team HYDEを運営する株式会社ハイドはゲーム開発会社なんです。会社のPR活動やゲーム産業への恩返しとして、プロゲーマーを支援したいと考えていたそうです。eスポーツチームの発足を考え始めたのが2018年で、ちょうどその時、私がTGSの大会「鉄拳プロチャンピオンシップ」で優勝し、「スポンサーを募集しています」って冗談交じりで発言したんです。その所為かどうかわからないですが、ハイドが私に注目してくれるようになって、翌年チームの発足と共に契約をしました。
今は、『ウイニングイレブン』の選手ふたりを含む、3選手の体勢となっていますが、最初はチームとは名ばかりの私しか所属選手はいませんでした。
実は、チームに関してはTeam HYDE以外にもいくつかオファーをいただきいろいろ話を聞いてみたんですが、Team HYDEが一番自分のやり方に合わせてくれそうだったので、お願いすることにしました。
ちょうど新しい会社に移るタイミングでもあったので、プロ選手を副業としてやっていけるかどうか交渉するなど、チームと契約するまでには時間がかかってしまいました。
ちなみに、ハイドという会社自体は例年だと新卒の採用は10人ほどだったのが、2020年は前年の1.5倍も採用することができたと聞きました。eスポーツ事業を行っている効果も出ているみたいです。
――兼業の話が出ましたが、破壊王選手は終業後、お子さんが寝付いてからの1時間程度が毎日の練習時間と聞いています。1日のすべてをeスポーツ選手としての活動に費やせる他の選手に比べて厳しいところもありますが、どのような対応をしているのでしょうか。
破壊王:1時間しかプレイできないのはどうしようもないことですね。プロ選手やそれに近い実力のある選手を家に呼んでオフラインでやることで、濃密な練習時間を設けることもできますが、それも難しいのが現実です。
ただ、練習期間を空けてしまうと腕が鈍るタイプなので、とにかく毎日プレイすることは心がけています。それが1時間でも30分でも、です。
毎日のプレイ内容は、とにかく実戦の繰り返しです。オンラインでいろいろな人とやることで対応力を高めていきます。トレーニングモードで練習をすることもほとんどなく、ほぼランクマッチだけですね。
加齢選手はたまに家に来てくれるので、その時は濃密な対戦をしています。少し前まで広島で暮らしていたのですが、その時は本当にオフラインで対戦する相手がいませんでした。オンラインで練習している環境に必ずしも不利益があるとは思っていませんが、それでもオフラインで対戦できる環境はあればあったでいいですよね。
その意味では、大阪に加齢選手がいることが本当にありがたいです。加齢選手も、プロになってから大阪に誰も一緒にやれる人がいなくて、私が大阪に戻ったことが良かったと言ってくれています。
大会に参加すると休みとはいえ、丸一日ゲームに費やしてしまいますので、その時は妻に子どもの世話を任せっきりになってしまいます。一応、プロとしての活動なので、仕事としてみてもらえればと思っていますけど、妻からしてみれば、私だけ好きなことをしているように見られても仕方ないので、感謝しています。
――破壊王選手というと、キング一筋のプレイヤーで『鉄拳』シリーズのプロゲーマーでは、結構珍しい存在だと思います。他だとダブル選手のマーシャル・ロウくらいでしょうか。キングを選んだ理由と、他のキャラクターに手を出さないのはなぜでしょうか。
破壊王:最初に『鉄拳』を知ったのは、中学生の頃、ゲームセンターでですね。その頃は『鉄拳5』でした。初めてキングを見た時、キングという名前と虎のマスクが格好よくて選びました。結構一途な方なので、それ以来13~14年間ずっとキングだけを使い続けていますね。
使っていても飽きがこないキャラクターなんですよね。他のキャラも触らないこともないですけど、なぜかすぐに飽きてしまうんです。『鉄拳』シリーズは、基本的の操作や戦い方はどのキャラクターもほぼ一緒なので、他の対戦格闘ゲームよりもキャラ変えはしやすいと思いますが、それでもキング以外は使う気になれません。
――ひとつのキャラクターだけを使うと、そのキャラクターがバランス調整でナーフ(弱体化)されてしまうと対応が難しくなると思うのですが、そこはどうでしょうか。
破壊王:『鉄拳7』では、リリース直後のキングが一番強くて、そこからかなり弱体化してきましたが、今はいいバランスの強さだと思っています。弱体化すると勝ちにくくなるのですが、過去の例を見てもずっと弱いままということもないので、これからもずっと使い続けますよ。『鉄拳タッグトーナメント2』のキングは本当に弱くて、今みたいにアップデートでバランス調整もされなかったので辛かったですね。まあ、それでもキングは使い続けたんですけど(笑)。
1キャラだけずっと使い続けていると、同じことの繰り返しになりがちです。自分だけで考えていると煮詰まってしまいますが、他のプレイヤーの動画を観たりすると「こんなこともできるんだ」って新しい発見もあります。
特に海外勢のキングを見ると、自分では考えつかないような戦い方をしていますね。ほとんどが魅せ技的なものなので、参考にすることは多くないんですけど、気持ちの切り替えにはなります。
――『鉄拳7』のプロシーンでは投げ技はほぼ決まらないのが基本となっていますが、その中で投げキャラのキングを使い、しかもその状態でも投げを通していくスタイルは、やはりプロ選手の中でも無二の存在に見えます。
破壊王:キングを使っていても、普通の投げ技は決まらないことを前提にプレイしています。その中で完全に2択になるキング特有の投げ技を仕掛け、投げていく感じですね。
――プロ選手として活動しようと考えたのはいつくらいからでしょうか。
破壊王:『鉄拳6』から本気で『鉄拳』に取り組むようになりました。それまでは『鉄拳』を楽しんでいただけですが、『鉄拳6』から技発生やガード硬直などのフレーム数を調べるようになって、キャラごとの対策も考えるようになりました。
それまで地元のゲームセンターで、仲間うちで楽しんでプレイしていましたが、どこどこのゲームセンターに強いプレイヤーがいるという話を聞きつけたら、そのゲームセンターに遠征するようにもなりました。
ただ、プロゲーマーになろうとは考えていませんでした。そもそもプロゲーマーという存在自体知りませんでしたからね。それでも『鉄拳』が好きだったので、自分には『鉄拳』しかない! と思ってやり続けていました。
そこでちょうどオンライン大会の開催を知り、出場したところ上位に入賞し、プロライセンスが取得できることになったわけです。
――プロ選手になって何か変わりましたでしょうか。
破壊王:プロ選手を目指していたわけではなかったので、実際プロになって何をすればいいか、最初はわかりませんでした。環境としては出演料がもらえる大会に招待されたり、ショッピングモールで催されるイベントに呼ばれるようになったり、人前に出るようになったことですね。元々人見知りで人前に出るのは不得意でしたが、今はだいぶ慣れました。
そんな環境の変化だけでなく、自分自身もプロとして何かできることがないかなと考えるようにもなりました。プロ選手はファンあっての存在だと思いますので、ファンに何が還元できるかを模索しています。
そのひとつが、『鉄拳』がうまくなりたい人にアドバイスをすることです。Twitterでアドバイスして欲しい人を募って、オンラインで対戦部屋を作ってプレイヤーマッチでプレイをします。そこで気がついたことをアドバイスしています。その様子は配信もしています。
――ファンのアドバイスに練習時間を割かれてしまいませんか。
破壊王:時間を削ってやっているという感じではないですね。自分もプレイしていて楽しいですし、アドバイスを希望してくれる人たちも喜んでくれていますので。配信もできるので多くのファンにアピールできる場となっています。
――ファンサービスと言えば、大会も開催されていますよね。コロナ禍前のオフライン大会やコロナ禍中のオンライン大会も話題になりました。
破壊王:コロナ禍で「鉄拳ワールドツアー」の大会の多くが延期・中止となってしまいました。そんな状況なので、オンラインでの大会開催は需要があると思いましたし、意味があるとも思いました。それが5月3日に開催した「STEAM TEKKEN7 HYDE FUSION PRESENTS STAYHOMECUP」ですね。近々第2回も開催したいと思っています。
あと、今年は仕事のシフトが土日出勤となってしまったので、大会に出場するには有給を使わないといけないんです。会社のみんなは私のことを「破壊王」と呼んでくれているくらい、プロ選手の活動を応援してくれていますけど、ひとりでも抜けると残った人にかなり負担がかかってしまう仕事なため、有給を連続で取得するのは業務内容的に難しい。
なので、たまにある土日休みに合わせて大会を計画しています。だからTeam HYDEや私が主催の大会を多めに開催しているわけです。そういった事情から「TOPANGA LEAGUE × TEKKEN」は参加を辞退させていただきました。
――「TOPANGAリーグ」でも破壊王選手が出ていないことを残念に思っているコメントを残している人が散見されました。
破壊王:キングファンが多いですからね。キングファンのコミュニティで「キング総会」というのがあるんですけど、オフラインの大会に出場するといつも彼らに応援していただけるんです。野郎ばかりなので、他の選手に比べると野太い声の応援でちょっと異様ではありますけど(笑)。本当にありがたいんですよ。
――修羅の国と呼ばれる韓国勢、新興でありながらその実力の高さで台風の目となったパキスタン勢と『鉄拳』界隈は海外の勢力も注目されつつ、日本勢もかなり巻き返しをしていると思いますが、現在の『鉄拳』事情はどう見ていますでしょうか。
破壊王:パキスタン勢は本当に強いですね。国の事情で海外に出られる機会が少ないようですが、出られるようになったら一気に勢力図は変わりそうです。まあ、今は国の事情だけでなく、コロナ禍で海外遠征は難しいですが。
日本はチクリン選手が飛び抜けていますね。昨年の「鉄拳ワールドツアー ファイナル」で並み居る強豪を倒して優勝しました。
あと、「TOPANGAリーグ」や日韓戦で活躍したTeam Liquid所属の弦選手が強いですね。小学生の頃から活躍しているのでキャリア的には若手ではないですが、年齢的にはかなり若いので、今後10年は弦選手が『鉄拳』のeスポーツシーンを牽引してくれそうです。
韓国も相変わらず強いですが、日韓戦は2年連続で日本が勝利していますし、今は日本の方が層も厚くなっているのかもしれません。
――日本人選手が充実しているだけに、コロナ禍で大会がないのはなおさら残念です。
破壊王:そうですね、コロナは仕方がないので、それでもできることをやっていきます。数少ない日祭日の休みに合わせてTeam HYDEで大会を開催していきます。配信も少しずつですが頑張っていきます。
あとは、そうですね……。大会自体は少なくなりましたが、参加できるところを見つけて参加していきたいと思います。目標っていうわけではないですが、年内に1回は優勝したいですね。ファンの方には優勝した姿を見せたいです。
プロゲーマーにとって、勝つことはなによりも重視する命題であることは間違いありません。しかし、ファンビジネスであるeスポーツにおいて勝つこと以外の魅力を出すことも重要です。キング一筋でそれでも好成績を残し、強い時も弱い時も数多のキング使いのトップに立ち続ける姿は多くのファンを魅了しているわけです。
また、プロゲーマーは、プロ選手としてゲームにすべてを捧げ、他のことを諦める姿が美しく感じます。しかし普段の生活での幸せや充実を捨てて欲しくありません。家庭を持ち、本業を持つ破壊王選手が、プロ活動もプライベートも仕事もすべてにおいて充実することが、今後のプロゲーマーの在り方のひとつとして、指針になっていくことでしょう。
その破壊王選手の姿にいち早くTeam HYDEは魅力を見いだし、活動の手助けをしています。きっと、多くのファンも彼の強さだけに惹かれているのではないのではないでしょうか。今後の活躍にますます期待を寄せたいところです。
Team HYDE:http://www.hyde.co.jp/teamhyde/
破壊王選手のTwitter:https://twitter.com/1206_king
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCHH9fKCeU3axdNwIljCBmcg/featured
そんな破壊王選手の人と成りに興味を持ち、以前からインタビューを申し込んでいたのですが、大阪在住でなかなか仕事の休みも取れない状況に、ペンディングとなっていました。しかし、今回のコロナ禍により、リモートによるインタビューが特に珍しいものでもなくなりました。リモートであれば首都圏も地方も関係ないということで、破壊王選手にご対応していただくことになりました。
破壊王(はかいおう)
Team HYDE所属の28歳のプロゲーマー。2019年からTeam HYDEの立ち上げと同時に兼業プロゲーマーとして活動を始める。『鉄拳』シーンの中では非常に珍しい、一貫してキングを使い続ける1キャラ使いとして知られ、そのストイックさと豪快な投げを通すプレイスタイルは見る者を惹きつける。ちなみに、プロレスの故・橋本真也選手の異名「破壊王」とは関連がなく、単に響きから名付けたという。
■主な戦績:
闘会議2018 鉄拳7 Final 〜Royal Championship〜 4位(プロライセンス獲得)
鉄拳7 プロチャンピオンシップ(2018) 準優勝
鉄拳7 プロチャンピオンシップ(2018) 日本代表決定戦 優勝
第10回eスポーツワールドチャンピオンシップ 鉄拳7部門 準優勝
Team HYDE所属の28歳のプロゲーマー。2019年からTeam HYDEの立ち上げと同時に兼業プロゲーマーとして活動を始める。『鉄拳』シーンの中では非常に珍しい、一貫してキングを使い続ける1キャラ使いとして知られ、そのストイックさと豪快な投げを通すプレイスタイルは見る者を惹きつける。ちなみに、プロレスの故・橋本真也選手の異名「破壊王」とは関連がなく、単に響きから名付けたという。
■主な戦績:
闘会議2018 鉄拳7 Final 〜Royal Championship〜 4位(プロライセンス獲得)
鉄拳7 プロチャンピオンシップ(2018) 準優勝
鉄拳7 プロチャンピオンシップ(2018) 日本代表決定戦 優勝
第10回eスポーツワールドチャンピオンシップ 鉄拳7部門 準優勝
「練習は1日1時間」のプロゲーマー
――Team HYDEは破壊王選手のために発足したとのことですが、どういった経緯でTeam HYDEと繋がりができたのでしょうか。
破壊王選手(以下、破壊王):Team HYDEを運営する株式会社ハイドはゲーム開発会社なんです。会社のPR活動やゲーム産業への恩返しとして、プロゲーマーを支援したいと考えていたそうです。eスポーツチームの発足を考え始めたのが2018年で、ちょうどその時、私がTGSの大会「鉄拳プロチャンピオンシップ」で優勝し、「スポンサーを募集しています」って冗談交じりで発言したんです。その所為かどうかわからないですが、ハイドが私に注目してくれるようになって、翌年チームの発足と共に契約をしました。
今は、『ウイニングイレブン』の選手ふたりを含む、3選手の体勢となっていますが、最初はチームとは名ばかりの私しか所属選手はいませんでした。
実は、チームに関してはTeam HYDE以外にもいくつかオファーをいただきいろいろ話を聞いてみたんですが、Team HYDEが一番自分のやり方に合わせてくれそうだったので、お願いすることにしました。
ちょうど新しい会社に移るタイミングでもあったので、プロ選手を副業としてやっていけるかどうか交渉するなど、チームと契約するまでには時間がかかってしまいました。
ちなみに、ハイドという会社自体は例年だと新卒の採用は10人ほどだったのが、2020年は前年の1.5倍も採用することができたと聞きました。eスポーツ事業を行っている効果も出ているみたいです。
――兼業の話が出ましたが、破壊王選手は終業後、お子さんが寝付いてからの1時間程度が毎日の練習時間と聞いています。1日のすべてをeスポーツ選手としての活動に費やせる他の選手に比べて厳しいところもありますが、どのような対応をしているのでしょうか。
破壊王:1時間しかプレイできないのはどうしようもないことですね。プロ選手やそれに近い実力のある選手を家に呼んでオフラインでやることで、濃密な練習時間を設けることもできますが、それも難しいのが現実です。
ただ、練習期間を空けてしまうと腕が鈍るタイプなので、とにかく毎日プレイすることは心がけています。それが1時間でも30分でも、です。
毎日のプレイ内容は、とにかく実戦の繰り返しです。オンラインでいろいろな人とやることで対応力を高めていきます。トレーニングモードで練習をすることもほとんどなく、ほぼランクマッチだけですね。
加齢選手はたまに家に来てくれるので、その時は濃密な対戦をしています。少し前まで広島で暮らしていたのですが、その時は本当にオフラインで対戦する相手がいませんでした。オンラインで練習している環境に必ずしも不利益があるとは思っていませんが、それでもオフラインで対戦できる環境はあればあったでいいですよね。
その意味では、大阪に加齢選手がいることが本当にありがたいです。加齢選手も、プロになってから大阪に誰も一緒にやれる人がいなくて、私が大阪に戻ったことが良かったと言ってくれています。
大会に参加すると休みとはいえ、丸一日ゲームに費やしてしまいますので、その時は妻に子どもの世話を任せっきりになってしまいます。一応、プロとしての活動なので、仕事としてみてもらえればと思っていますけど、妻からしてみれば、私だけ好きなことをしているように見られても仕方ないので、感謝しています。
キング1キャラにこだわる“浅くて深〜い”理由
――破壊王選手というと、キング一筋のプレイヤーで『鉄拳』シリーズのプロゲーマーでは、結構珍しい存在だと思います。他だとダブル選手のマーシャル・ロウくらいでしょうか。キングを選んだ理由と、他のキャラクターに手を出さないのはなぜでしょうか。
破壊王:最初に『鉄拳』を知ったのは、中学生の頃、ゲームセンターでですね。その頃は『鉄拳5』でした。初めてキングを見た時、キングという名前と虎のマスクが格好よくて選びました。結構一途な方なので、それ以来13~14年間ずっとキングだけを使い続けていますね。
使っていても飽きがこないキャラクターなんですよね。他のキャラも触らないこともないですけど、なぜかすぐに飽きてしまうんです。『鉄拳』シリーズは、基本的の操作や戦い方はどのキャラクターもほぼ一緒なので、他の対戦格闘ゲームよりもキャラ変えはしやすいと思いますが、それでもキング以外は使う気になれません。
――ひとつのキャラクターだけを使うと、そのキャラクターがバランス調整でナーフ(弱体化)されてしまうと対応が難しくなると思うのですが、そこはどうでしょうか。
破壊王:『鉄拳7』では、リリース直後のキングが一番強くて、そこからかなり弱体化してきましたが、今はいいバランスの強さだと思っています。弱体化すると勝ちにくくなるのですが、過去の例を見てもずっと弱いままということもないので、これからもずっと使い続けますよ。『鉄拳タッグトーナメント2』のキングは本当に弱くて、今みたいにアップデートでバランス調整もされなかったので辛かったですね。まあ、それでもキングは使い続けたんですけど(笑)。
1キャラだけずっと使い続けていると、同じことの繰り返しになりがちです。自分だけで考えていると煮詰まってしまいますが、他のプレイヤーの動画を観たりすると「こんなこともできるんだ」って新しい発見もあります。
特に海外勢のキングを見ると、自分では考えつかないような戦い方をしていますね。ほとんどが魅せ技的なものなので、参考にすることは多くないんですけど、気持ちの切り替えにはなります。
――『鉄拳7』のプロシーンでは投げ技はほぼ決まらないのが基本となっていますが、その中で投げキャラのキングを使い、しかもその状態でも投げを通していくスタイルは、やはりプロ選手の中でも無二の存在に見えます。
破壊王:キングを使っていても、普通の投げ技は決まらないことを前提にプレイしています。その中で完全に2択になるキング特有の投げ技を仕掛け、投げていく感じですね。
――プロ選手として活動しようと考えたのはいつくらいからでしょうか。
破壊王:『鉄拳6』から本気で『鉄拳』に取り組むようになりました。それまでは『鉄拳』を楽しんでいただけですが、『鉄拳6』から技発生やガード硬直などのフレーム数を調べるようになって、キャラごとの対策も考えるようになりました。
それまで地元のゲームセンターで、仲間うちで楽しんでプレイしていましたが、どこどこのゲームセンターに強いプレイヤーがいるという話を聞きつけたら、そのゲームセンターに遠征するようにもなりました。
ただ、プロゲーマーになろうとは考えていませんでした。そもそもプロゲーマーという存在自体知りませんでしたからね。それでも『鉄拳』が好きだったので、自分には『鉄拳』しかない! と思ってやり続けていました。
そこでちょうどオンライン大会の開催を知り、出場したところ上位に入賞し、プロライセンスが取得できることになったわけです。
――プロ選手になって何か変わりましたでしょうか。
破壊王:プロ選手を目指していたわけではなかったので、実際プロになって何をすればいいか、最初はわかりませんでした。環境としては出演料がもらえる大会に招待されたり、ショッピングモールで催されるイベントに呼ばれるようになったり、人前に出るようになったことですね。元々人見知りで人前に出るのは不得意でしたが、今はだいぶ慣れました。
そんな環境の変化だけでなく、自分自身もプロとして何かできることがないかなと考えるようにもなりました。プロ選手はファンあっての存在だと思いますので、ファンに何が還元できるかを模索しています。
そのひとつが、『鉄拳』がうまくなりたい人にアドバイスをすることです。Twitterでアドバイスして欲しい人を募って、オンラインで対戦部屋を作ってプレイヤーマッチでプレイをします。そこで気がついたことをアドバイスしています。その様子は配信もしています。
――ファンのアドバイスに練習時間を割かれてしまいませんか。
破壊王:時間を削ってやっているという感じではないですね。自分もプレイしていて楽しいですし、アドバイスを希望してくれる人たちも喜んでくれていますので。配信もできるので多くのファンにアピールできる場となっています。
――ファンサービスと言えば、大会も開催されていますよね。コロナ禍前のオフライン大会やコロナ禍中のオンライン大会も話題になりました。
破壊王:コロナ禍で「鉄拳ワールドツアー」の大会の多くが延期・中止となってしまいました。そんな状況なので、オンラインでの大会開催は需要があると思いましたし、意味があるとも思いました。それが5月3日に開催した「STEAM TEKKEN7 HYDE FUSION PRESENTS STAYHOMECUP」ですね。近々第2回も開催したいと思っています。
あと、今年は仕事のシフトが土日出勤となってしまったので、大会に出場するには有給を使わないといけないんです。会社のみんなは私のことを「破壊王」と呼んでくれているくらい、プロ選手の活動を応援してくれていますけど、ひとりでも抜けると残った人にかなり負担がかかってしまう仕事なため、有給を連続で取得するのは業務内容的に難しい。
なので、たまにある土日休みに合わせて大会を計画しています。だからTeam HYDEや私が主催の大会を多めに開催しているわけです。そういった事情から「TOPANGA LEAGUE × TEKKEN」は参加を辞退させていただきました。
――「TOPANGAリーグ」でも破壊王選手が出ていないことを残念に思っているコメントを残している人が散見されました。
破壊王:キングファンが多いですからね。キングファンのコミュニティで「キング総会」というのがあるんですけど、オフラインの大会に出場するといつも彼らに応援していただけるんです。野郎ばかりなので、他の選手に比べると野太い声の応援でちょっと異様ではありますけど(笑)。本当にありがたいんですよ。
【告知】
— FIGHTER/ファイター (@FIGHTER0214) June 5, 2020
6月13日(土)22:00~(予定)
10先シリーズ第3弾!
破壊王【@1206_king】の前に敗れ去った〝総帥〟鉄塔の敵を討つため、スズキング【@suzuking1030】が次期挑戦者に名乗り上げ!
〝キラー〟vs〝最強〟
今回も私の配信内で勝利者予想を実施予定です!
↓イベントPVhttps://t.co/LaTnZOgSDn pic.twitter.com/ZsZLqPkLSv
――修羅の国と呼ばれる韓国勢、新興でありながらその実力の高さで台風の目となったパキスタン勢と『鉄拳』界隈は海外の勢力も注目されつつ、日本勢もかなり巻き返しをしていると思いますが、現在の『鉄拳』事情はどう見ていますでしょうか。
破壊王:パキスタン勢は本当に強いですね。国の事情で海外に出られる機会が少ないようですが、出られるようになったら一気に勢力図は変わりそうです。まあ、今は国の事情だけでなく、コロナ禍で海外遠征は難しいですが。
日本はチクリン選手が飛び抜けていますね。昨年の「鉄拳ワールドツアー ファイナル」で並み居る強豪を倒して優勝しました。
あと、「TOPANGAリーグ」や日韓戦で活躍したTeam Liquid所属の弦選手が強いですね。小学生の頃から活躍しているのでキャリア的には若手ではないですが、年齢的にはかなり若いので、今後10年は弦選手が『鉄拳』のeスポーツシーンを牽引してくれそうです。
韓国も相変わらず強いですが、日韓戦は2年連続で日本が勝利していますし、今は日本の方が層も厚くなっているのかもしれません。
――日本人選手が充実しているだけに、コロナ禍で大会がないのはなおさら残念です。
破壊王:そうですね、コロナは仕方がないので、それでもできることをやっていきます。数少ない日祭日の休みに合わせてTeam HYDEで大会を開催していきます。配信も少しずつですが頑張っていきます。
あとは、そうですね……。大会自体は少なくなりましたが、参加できるところを見つけて参加していきたいと思います。目標っていうわけではないですが、年内に1回は優勝したいですね。ファンの方には優勝した姿を見せたいです。
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プロゲーマーにとって、勝つことはなによりも重視する命題であることは間違いありません。しかし、ファンビジネスであるeスポーツにおいて勝つこと以外の魅力を出すことも重要です。キング一筋でそれでも好成績を残し、強い時も弱い時も数多のキング使いのトップに立ち続ける姿は多くのファンを魅了しているわけです。
また、プロゲーマーは、プロ選手としてゲームにすべてを捧げ、他のことを諦める姿が美しく感じます。しかし普段の生活での幸せや充実を捨てて欲しくありません。家庭を持ち、本業を持つ破壊王選手が、プロ活動もプライベートも仕事もすべてにおいて充実することが、今後のプロゲーマーの在り方のひとつとして、指針になっていくことでしょう。
その破壊王選手の姿にいち早くTeam HYDEは魅力を見いだし、活動の手助けをしています。きっと、多くのファンも彼の強さだけに惹かれているのではないのではないでしょうか。今後の活躍にますます期待を寄せたいところです。
Team HYDE:http://www.hyde.co.jp/teamhyde/
破壊王選手のTwitter:https://twitter.com/1206_king
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCHH9fKCeU3axdNwIljCBmcg/featured
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