リアルレーサーとSIMレーサーの垣根をなくして、モータースポーツ界に新風を吹かせたい【レーシングドライバー 根本悠生氏インタビュー】

2020.6.4 井ノ川結希(いのかわゆう)
「eモータースポーツ」という言葉をご存じだろうか。

FPSやMOBA、格闘ゲームといったゲームタイトルが競技シーンとして注目を浴びている中、モータースポーツをドライビングシミュレーションゲームで再現してeスポーツ化したものが「eモータースポーツ」だ。

2019年には自動車メーカーのTOYOTAがeモータースポーツに参入。実際のサーキットで活躍しているリアルレーサーと、シミュレーションサーキットで活躍しているSIMレーサーが同じ土俵で戦えるーーそんなたぐいまれなるeスポーツが今注目を浴びている。

そして今、ひとりの現役のプロレーサーが、これまでのモータースポーツの常識を覆そうと新たな試みに挑戦している。それが「eRacer部」だ。

今回は、そんな現役レーサーの中でも特にeスポーツに造詣が深い根本選手に、リアルレースとeモータースポーツの違い、eモータースポーツの未来についてじっくりうかがってみた。

なお、今回は新型コロナウイルス感染症の影響を鑑みて、オンラインでのインタビューを実施した。

根本悠生(ねもとゆうき)プロフィール


1996年東京都生まれ。幼少期からカートに親しみ数々の優勝を重ねてステップアップ。2012年にカーレーサーの登竜門であるFTRS(フォーミュラトヨタ・レーシングスクール)に主席で合格し、トヨタの育成ドライバー入り。さらにZAP SPEEDの春季オーディションにも主席で合格し、翌2013年はスーパーFJ筑波シリーズを全勝で制覇。F4やイタリアGTで活躍し、2018年は全日本F3、2019年はランボルギーニ・スーパートロフェオ・アジアと、フォーミュラとGTカーのいずれでも活躍している。2020年現在はイタリアでのレースが休止となり、「eRacer部」の活動などに尽力している。

実はゲーマーの一面もあり、『レインボーシックス シージ』(R6S)では友人たちとクランを組んで大会にも出場しているほどの実力者でもある。

若くして世界を舞台に闘う
ランボルギーニレースドライバー


——eSports Worldの読者の中には、カーレースの世界を知らない方もたくさんいらっしゃると思います。まずは、根本選手のレースでのご活躍について教えてください。

根本:僕は1996年生まれなのですが、2001年の5歳にはカートを始めていて、国内のレースに出場して実力をつけていきました。そして、2011年に「全日本カート選手権」に出場したんです。

——中学生でいきなり全日本?

根本:はい。「全日本カート選手権」は参戦するのに特に必要な資格等はなくて、ある意味いつでも誰でもチャレンジできるんです。実力がついてきたと思った僕は、どうしても出てみたて参戦しました。

まあでも、いきなり優勝できるほど全日本は甘い世界ではなかったんですけどね(笑)。ただ、この出場をきっかけに、僕はモータースポーツ界で生きていく決意を決めました。

——すごい。もうそこで将来のビジョンを決めていたんですね!

根本:その後、「FTRS」(フォーミュラトヨタ・レーシングスクール)というトヨタの育成スクールに入ってプロレーサーへの道を歩み始めました。

また、アマチュアドライバーの登竜門ともいえる「スーパーFJ筑波シリーズ」では全戦全勝したり、その時に筑波2000のコースレコードも更新しています。

▲レースにおいて0.1秒というのは非常に大きい。自身の持つコースレコードを0.5秒も削ることに成功した57.571秒というタイムは、いまだに筑波のS-FJのコースレコードとして残っている(出典:https://www.tsukuba-circuit.jp/

そのあとは海外に進出したり日本のレースにも参戦したりしながら、現在は「Vincenzo Sospiri Racing」というイタリアのチームに所属しています。

プロとアマ、リアルレーサーとSIMレーサー
さまざまなレーサーが集う「eRacer部」


——そんな現役プロレーサーでもある根本選手が、「eRacer部」を立ち上げた経緯はなんだったんですか?

根本:もともとは、自宅にレーシングシミュレーターを導入したのがきっかけですね。

僕は現役のリアルレーサーの中でも特に、トレーニングとしてシミュレーターを活用している方だと思うのですが、自宅に導入するとなるとシミュレーターの専門的な知識が必要になるなと感じていました。

そこで、シミュレーターに関して専門的な知識のある方々と意見交換ができればと思い、2019年にFacebookで立ち上げたのが「eRacer部」というコミュニティです。実のところ、こんなに大きくなるとは思っていなかったんです(笑)。

ただ、時代的にシミュレーターに興味を持っている人が増え、現役のレーサーの中でもシミュレーターを導入したいという人が増えてきたということもあり、本格的に活動をするようになりました。

——具体的にはどういう活動をしているのですか?

根本:大きく3つの活動の軸を設けています。

ひとつは、コミュニティという軸です。

FaceBookのグループ機能を使って、eスポーツとしてのレースやシミュレーターなどに関して、みなさんと情報共有しています。コミュニティの具体的な活動としては、初心者の方やシミュレーターに興味を持っている方々に情報を共有したり、一緒にレースをして楽しんだりしています。

▲FaceBookの「eRacer部」グループ。公開グループになっていて参加も閲覧も自由にできる

ふたつめは、eスポーツとリアルレーサーを結びつけるという軸です。

——というと?

根本:eスポーツでのレースと実車でのレースというのは、似て非なるものです。僕自身リアルレーサーでもありゲーマーでもあるので、その両方からレースを見ることができます。

実車でレースをしている人と、eスポーツとしてレースをしている人の価値観はまったく違います。

レースにもよりますが、リアルレースに参戦しようと思ったら、年間で数千万円単位のお金がなければ、マシン購入もドライバーの確保もレース参戦もできません。一方で、eスポーツはそれこそアマチュアレベルのチームから事業としてeスポーツを実施しているチームまでさまざまですが、リアルレースほどの予算は必要ないのが現状です。

こういった価値観の違いは、スポンサードしたいと思っている企業側にとっても同じこと。ただ、リアルレースのスポンサーはeスポーツの状況を知らないし、逆もまたしかりです。

僕はレースに参戦するためのスポンサー活動もしていますし、eスポーツファンでもあるので、eスポーツの現状もある程度は認識していると思います。なので、リアルレースのスポンサー企業がeスポーツに参加しやすいような架け橋としての役割を担いたいと思っています。

▲eRacer部の公式のパートナーとして、レーシングシミュレーター用のコックピットを制作している「DRAPOJI」が参入。eRacer部のレース車両にロゴが入っているなど、まさにリアルレースさながらのスポンサーステッカー!

たとえば、DRAPOJIさんはハンドルコントローラーを固定するスタンドを開発・販売している企業なのですが、eRacer部の選手からのフィードバックをもとに、スタンドを制作していただいたりもしています。

——なるほど。実際にプレイしている人の声って大事ですもんね。

根本:そうですね。そしてみっつめは、大会を開催・運営するという軸になります。こちらはコミュニティの軸に付随している形にはなりますね。

▲根本選手の自宅に設置したリアルレース用のシミュレーターを使って、オフラインで定例レースも開催している

eモータースポーツで活躍するSIMレーサーだけでなく、実車のレーサーを招待したりして、垣根を越えた大会を開催しています。


普段カジュアルにゲームを楽しんでいる人が本場のプロレーサーと同じコースを走れる。そういった場所を提供できるようになった点でも、「eRacer部」の存在意義はあるのかなと思っています。

ゆくゆくは、eスポーツ大会のプロリーグをサポートできるような立場になりたいですね。

実際のところどうなの?
実車とシミュレーターの違い


——今年は新型コロナの影響で世界中のレースが無観客や休止になり、その中でF1やインディカー、NASCAR、ラリーなどで、実車のプロレーサーがeスポーツ、いわゆるeモータースポーツに参戦する大会が注目を浴びていますよね。実際のところ、プロレーサーから見て、実車とシミュレーターって全然違うものですか?

根本:実車のレーサーの中で特に注目を浴びているタイトルは、『Assetto Corsa』や『iRacing』、『グランツーリスモ』などのタイトルですね。やはり実車に近い操作感があるのが特徴です。

▲実名かつ月額定額制という敷居の高さもあるが、本格的なシミュレーターでレースが楽しめる『iRacing

一方で、カジュアルに楽しめるダート系のレーシングゲームなども盛り上がっていますよ。

▲いわゆる未舗装であるコースで戦う『ダートラリー2.0』。迫力がありゲーム性が高いので、カジュアルに楽しむにはオススメ(出典:https://www.jp.playstation.com/games/dirt-rally-2-ps4/

ただ、大会となると現状PlayStation4だと『グランツーリスモSPORT』くらいしかないので、自ずとそこに人は集まっていきますね。

PCだと本格的にレースができる『iRacing』が主流です。日本では、『Assetto Corsa』を使って「インタープロトeシリーズ」(以下、IPeS)が主催している大会が有名です。

インタープロトeシリーズ(IPeS)とは

世界3大レースのひとつであるル・マン24時間レースで日本人初の総合優勝を成し遂げたレジェンドドライバー、関谷正徳氏がプロデュース。「同じ車で同条件下で勝負したら誰が一番速いのか」を決めるリアルレース、「インタープロトシリーズ(IPS)」をシミュレートしたeモータースポーツだ。


リアルレーサーが、実際のマシンの設計データをもとに『Assetto Corsa』内でコースやマシンの挙動、操作性を忠実に再現したMODをセッティング。そのマシンMODとコースMODで実際のレースフォーマットを用いてSIMレースを開催している。そして、全国のSIMレーサーNo.1を決定し、最終的にIPSのリアルレーサーとSIMレーサーが、実車体験走行権をかけてSIMで対決するというもの。

公式サイト:https://ipes.xyz-one.jp/

さまざまなレースゲームがありますが、やはりeモータースポーツの大会となると『iRacing』が一強です。しかし、『iRacing』はサブスクリプション方式ですので、プレイするには月額料金がかかるのがネックです。コースや車もゲーム内で購入することになるので、カジュアルに遊ぶとなるとかなり敷居が高いと思います。

——それだけ本格的ということなんですね。

根本:そうですね。そこで『iRacing』と『Assetto Corsa』の間をとった『Assetto Corsa Competizione』(以下『ACC』)が登場しました。

▲GT3マシンを使った耐久レースとして名高い、GTワールドチャレンジ(旧ブランパンGT)を完全再現している『ACC

『ACC』はもともとPC版のみの展開だったのですが、今年の6月に海外版ですがPlayStation4版の発売が予定されているんです。

今までリアルなロードレースを楽しめるタイトルというとPC版しかなかったのですが、PlayStation4でも『ACC』をプレイできる環境が整うため、一気にeモータースポーツ参戦の敷居は下がると思います。

——デバイス面でいうとどうなんでしょうか? 例えばシートとかハンドルとかは必須ですよね?

根本:eモータースポーツで活躍しているレーサー、いわゆるSIMレーサーは、どちらかというと「大会で指定されているからこのデバイスを使う」とか、「デバイスに自分を合わせていく」という意味で「あるものでベストを尽くす」という感じだと思います。

ただ、僕らのような実車のレーサーがプレイする場合は、デバイスが結構重要になってきますね。実車のバケットシートをそのまま導入したり、ハンドルの取り付け角度などもリアルさを忠実に再現したりしていますね。


リアルなマシンで考えると、フォーミュラカーとGTカーではまったく姿勢が異なるので、極論を言えば両方のシートが欲しいですね(笑)。

ただこれはあくまでリアルレーサーの意見であって、eモータースポーツで活躍しているSIMレーサーの多くは実車での走行感覚がないわけですから、手元にあるものに素直に自分を合わせこんでいける、という結論に至るのだと思います。

——自分がしっくりくるものが一番ということですね。

根本:そうですね。

——ハンドルはどうでしょうか? やっぱりハンドルコントローラーは必須ですか?

根本:もちろんあった方がいいとは思いますが、ゲームパッドでも速い人は全然いますよ。

——ええっ、そうなんですか?

根本:昨年開催された『グランツーリスモSPORT』を用いた「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」でも、パッドで参戦している人がいたくらいですからね。

要は、トリガーやアナログスティックのようなアナログなコントローラーは、アクセルペダルやハンドルと変わらないわけですから、ここをしっかりと使いこなせればハンドルコントローラーとなんら変わらずレースができます。

——確かに!

根本:まあぶっちゃけ、速ければなんでもいいんです(笑)。

——シミュレーターの中には走行時のG(重力加速度)を擬似的に再現するものもありますが、そういった挙動もあった方がいいものでしょうか?

根本:これは難しい問題で、僕は「あってもいい」派ですね。

——あっても?

根本:はい。「あった方がいい」ではないところがポイントで、今現状あるモーションのシステムって大げさな挙動をするものが多くて、やたら動くんですよ。ハンドル切ったら身体がぐわんと動く、みたいな(笑)。

——(笑)。

根本:でも実際のレースで身体がぐわんぐわん動くことはないですし、実はリアルではないんです。なので、大げさに動かない範囲であれば、あった方がいいと思っています。

——そこは「あった方がいい」んですね。

根本:はい。

実車での振動や揺れを体感している人は、多少の揺れを感じると、それを脳内でリアルに近づけることができるんです。ただ、揺れがまったくなければそれを感じることができない。そういった意味で、少しの振動が欲しいということです。

その揺れを感じることでリアルさを感じて運転しやすくなったりします。

——あった方が速くなる?

根本:僕の場合はあった方が速くなりますね。

▲根本選手の自宅にあるプレイシート。リアルレースに近づけるために、マシンの挙動にあわせて油圧シリンダーが振動したり動いたりするようになっている

——おおおお。それはすごい!

根本:ただ、これはあくまでリアルレーサーの話であって、SIMレーサーからすればGのシミュレーションはいらないという人が圧倒的に多いですね。

やっぱり彼らは実車の感覚がないわけですから、揺れはなんの情報源にもならず邪魔でしかないわけです。そういった部分はリアルレーサーとSIMレーサーの大きな違いかもしれませんね。

素朴&率直な質問!
リアルレーサーとSIMレーサー、どっちが速いの?


——eモータースポーツはリアルレーサーとSIMレーサー、つまりリアルとバーチャルの選手が同じ環境で競える数少ない競技だと思うのですが、eモータースポーツにおいて、実際のところどちらの選手が強いんでしょうか?

根本:レースとは言えやはりそこはゲームなので、タイトルによってゲームならではの特性があると思うんです。SIMレーサーはそこを上手に使えているというイメージです。

リアルレーサーは基本的にどのタイトルのゲームもそれなりに走れます。しかし、SIMレーサーは特定のタイトルでものすごく速い。ざっくり言うとそういう違いがありますね。

ただこれも、タイトルによって違う部分があって。『iRacing』だとリアルレーサーの方が上位を占めているんですけど、『グランツーリスモSPORT』だとSIMレーサーの方が上位を占めていることが多いんです。もちろん、大湯選手など一部例外はありますが(苦笑)。

大湯 都史樹(おおゆとしき)

現役リアルレーサーでありながら、eモータースポーツ界でもその実力をとどろかせている若手レーサー。


——リアルレーサーから見て、SIMレーサーの強みとか速さの秘密ってなんだと思いますか?

根本:僕らリアルレーサーの場合、実車での練習は頻繁にできるわけではないので、短い期間でセッティングを詰めたり、タイムを出すという点についてはプロフェッショナルです。

一方で、SIMレーサーの場合はある意味無限に走ることができるので、その集中力とひたすら走って何かポイントを見つけるという部分はうまいですね。

なので、SIMレーサーの人は「リアルレーサーに時間を与えてはいけない」ってよく言いますね(笑)。

——なるほど。本気で時間をかけられちゃうとリアルレーサーには敵わないということを肌で感じているわけですね(笑)。

根本:そうかもしれませんね(笑)。

それと、これはSIMレーサーならではだと思うんですが、FF車のドライビングについては本当に速いです。

ーーそれはどうしてですか?

根本:
僕のようなリアルレーサーは、基本的にFR車、MR車でレースに出場しているので、FF車については知見が少ない。そうなると、俄然SIMレーサーの強さが際立ちますね。

『グランツーリスモSPORT』などのFF車でのレースなんかは、本当にSIMレーサーたちは速いです。正直僕はどうやったら速く走れるのかよくわかりません(笑)。

FF、FR、MRとは

車の駆動方式を表す言葉で、FFはフロントエンジン、フロントドライブ、、FRはフロントエンジン、リアドライブ、、MRは、ミッドエンジン、リヤドライブの略である。

またこのほかにもRR(リヤエンジン、リヤドライブ)や4WD(フォーバイフォー)がある。


簡単に言うと、ハンドルを切ったときにどのタイヤがハンドルの通りに曲がるかを示していて、FFは前輪が、FRやMR、RRは後輪が駆動する。4WDは前輪後輪すべてが駆動する。

FR、RR、MRの違いはエンジンの搭載場所で、FRは前方、RRは後方、MRは前輪と後輪の間に搭載されている。

ハンドルを切ったときに前輪が動くのと後輪が動くのとではカーブに対する考え方が異なるため、両立して速さを求めるにはどちらも十分な経験が必要となる。

——意外な弱点というわけですね(笑)。逆に、実車での経験がSIMレースにおいて邪魔をするということはあるんですか?

根本:大いにありますね。

例えばギヤの使い方ひとつとっても、シフトダウンの仕方などゲーム特有のやり方があったりするんですが、僕らの常識にはないものだったりするので、そういった意味では結構自分の常識を覆さないといけない部分もあります。実車だとパーツを壊してしまいそうな乱暴な操作とか、現実にはあり得ない操作なども、ゲームではできてしまいますから。


——なるほど。ちなみにSIMレーサーで強者といえばどんな選手がいますか?

根本:冨林勇佑というドライバーには注目してほしいですね。

彼は、『グランツーリスモSPORT』の世界大会で優勝したSIMレーサーなのですが、そのままリアルレーサーへと転身し、実車でも優勝を勝ち取ったレーサーです。

冨林勇佑(とみばやしゆうすけ)

▲写真右が冨林勇佑選手(出典:https://www.gran-turismo.com/jp/gtsport/livereport/00_8296476.html

2016年「FIA グランツーリスモマニュファクチャラーカップ」をはじめとするeモータースポーツ大会で優勝を果たし、その実力から実車のリアルレーサーへと転身を果たした数少ないハイブリッドレーサー。

リアルレーサー転身後は、2018年にワンメイクの「ロードスター・パーティレースIII クラブマンクラス」で優勝など、数々の結果を残している。

なにがすごいって、もともとカートの経験もなく完全にSIMレーサーからリアルレーサーに転身したというところですね。

——SIMレーサーからリアルレーサーってなれるものなのですね!

根本:リアルレーサーに必要なのは、実は「度胸」なんですよ。

——ええっ、そうなんですか?

根本:レーシングカーってテクニックで動かしているイメージですが、実際は「メンタル」で動かしているんです(笑)。

僕が普段レースで乗っている車両なんて1台4000万円くらいするんですよ。そんな高価な車を時速280kmで走らせて、隣の車と1メートルもない場面もあるわけです。わずかでもぶつかればそれだけで走れませんし、大けがだってするかもしれない。

そう考えると、メンタルで車を動かしている部分が大きくて、そこがSIMレーサーとの大きな違いでもあるんです。その点、彼は度胸があった。だからリアルレーサーにもなれたんだと思います。

——なるほど。

根本:あともうひとり。普勝崚というドライバーもSIMレーサーからリアルレーサーに転身しています。

普勝崚(ふかつりょう)

リアルを追求した秋葉原のレーシングシミュレーターショップ「D.D.R」で開催された「DDR F壱GP」や「DDR GT」、「DDR RRC」で優勝を果たすなど、SIMレーサーとして活躍。のちにリアルレーサーに転身し、2018年「もてぎチャンピオンカップレース」にスポット参戦し3位に入賞。その後も、リアルレースに尽力を注いでいる。

世界3大レース「ル・マン24時間」出場が目標。

今現在このふたりがSIMレース出身の注目のレーサーですね。

——いやあ、eスポーツには夢がありますねー。

根本:そうですね。

やっぱり実車のレーサーというのは初期投資の面でも敷居が高く、なかなか目指せるものではありません。

一方で、SIMレーサーならば初期投資も少なく、練習の環境も比較的簡単に整えられる。そういった環境からリアルレーサーになれるというのは、夢があると思います。

——今後eモータースポーツにどんなことを期待していますか?

根本:やっぱり、eモータースポーツがeスポーツとして定着してくれたらいいですね。リアルレーサーとSIMレーサーが同じ土俵で戦えたりふれあえる機会が増えたのは、とてもいいことだと思っています。

また、SIMレーサー目線から見れば、リアルレーサーが参戦してきたことで業界全体のレベルが上がっていくと感じているとも思います。

例えば、リアルレーサーのプロリーグとSIMレーサーのプロリーグが並列してあって、そのさらに上にふたつが融合したリーグがあるとか……そんな未来を期待しています。

ーー最後に、根本選手自身がeモータースポーツに対してやりたいこと、今後の展望などあればお聞かせください。

根本:今後は、プロのeモータースポーツ選手が生まれるよう、僕自身も活動していけたらいいなと思います。

eモータースポーツはeスポーツを代表するFPSやMOBAの世界と比べたらまだまだ発展途上です。しかし、発展途上の現状でも、これだけの盛り上がりを見せているのですから、1年後、2年後が楽しみな業界だと僕は思っています!

——ありがとうございました!

———

プロレーサーになる以前に、モータースポーツというのは恵まれた環境でなければなかなか挑戦することのできない、敷居の高いジャンルであることは言うまでもない。

そんな常識を覆す希望の光が「eモータースポーツ」ともいえる。導入しやすい練習環境、シミュレーターという安全性、そしてなにより現役プロレーサーと気軽にレースができるという環境は、プロを目指すレーサーにとって恵まれた環境にほかならない。

根本選手が立ち上げた「eRacer部」は、リアルとバーチャル、プロとアマチュアをつなぐ架け橋として、これからも新風を吹かせてくれるだろう。

彼のレーシングドライバーとしての活躍を祈念するとともに、「eモータースポーツの革命家」としての活躍にも期待したい。


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根本悠生公式サイト:http://www.yukinemoto.com/index.php
eRacer部公式サイト:https://eracerclub.com/

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