【LCP 2025】 SHG・Marble選手インタビュー。初戦でのチームの手応え、「アタカン」「フィアレスドラフト」の印象は?

2025.1.18 宮下英之
2025年より新設された『リーグ・オブ・レジェンド』の国際リーグ「LCP 2025」が1月17日(金)より開幕。日本代表のFukuoka SoftBank HAWKS gaming(SHG)は、ベトナム代表のGAM Esportsとの初戦を戦った。



シーズン最初のリーグである「LCP 2025 Season Kickoff」では、全チームが1回ずつ総当たりで戦う「レギュラーシーズン」を、Bo3(2ゲーム先取)、「フィアレスドラフト」で実施。最終的に、上位6位までが次の「クオリファイイングシリーズ」に進出できる。


サイド選択権をかけた1v1はMarble・ドレイヴンが勝利


「LCP 2025」では各試合で、必ず先にピックできるブルーサイドと、すべてのピックを見た上で必ず最後にピックできるレッドサイドという、ふたつのサイドの選択権を1v1のバトルで決めるシステムになっている。今大会では、ノクサス地域出身のチャンピオンから選ぶ決まりだ。

SHGはADCのMarble選手がドレイヴンを、GAMはミッドのKiaya選手がルブランをピック。先に2キルを取るか、タワーを破壊することが勝利条件だ。

Marble選手は、マークスマンの強みを生かしてミニオンをプッシュしレベル先行に成功。Kiaya選手のカウンターをうまく交わしつつAAを重ねて、早々に1キルを獲得する。これで得たゴールドでBFソード、ヌルマジックマントなどで強化したドレイヴンで2キルを上げ、ブルーサイドの権利を獲得した。



アグレッシブなベトナム地域の動きに翻弄


ゲーム1は、GAMがケイトリン&ラックスの安定ピックにガリオを先出しし、Levi選手のキンドレッドを最後まで隠し、シナジーの強い構成を作る。対するSHGは、コーキやランブルといった強いチャンピオンを積極的にピックし、ジン&レオナのコンビで対抗する狙いだ。


試合が始まるとGAMは、今季盛んに行われているトップとボットのスワップではなく、ボットのふたりをミッドレーンに配置。FATE選手のコーキを追ってファームを阻止しながら、その間にLevi選手のキンドレッドのファームを優先させる。この奇策もあって、SHGはダメージは出せていたものの、視界管理とオブジェクトでは常に後手に回らされてしまい、初戦を落としてしまった。


ゲーム2ではGAMがレッドサイドを選択。ADC、ジャングル中心のバンが重なる中、SHGはミス・フォーチュンをファーストピック。対するGAMはジャングルにAPチャンピオンのザイラ、ボットにジンクス&ブラウムという定番ピックを置く。


しかし、SHGの反撃が見事にハマる。Courage選手のセジュアニとFATE選手のヨネ、Marble選手のMFとGaeng選手のラカンでCCチェインからの大ダメージを何度も当て、圧倒的な差をつけてゲームカウントを1-1に戻す。


ゲーム3では、この日初めてGAMがブルーサイドを選択したものの、システムの不具合によりバンピックが何度もやりなおしに。「フィアレスドラフト」により20体がバンされた、Bo3中最も厳しい条件の中で、GAMはついにオープンになったヴァルス、オーロラをピック。対してSHGはエズリアル・ノーチラスによる安定したボットレーンと、ヴィエゴ・サイラズという相手のスキルを活用できるチャンピオンを揃えた。


GAMは最序盤に最も硬い、Evi選手のオーンを4人でのガンクで倒すなど、SHGの狙いをことごとく崩すような戦いを展開。サイラスのアルティメットやエズリアルの確実なポークで崩そうと試みたものの、GAMの勢いは止まらず、SHGは初戦黒星からのスタートとなった。


2種類の「アタカン」はどっちも強い


ここからは、試合直後のMarble選手への単独インタビューの模様をお届けする。

──初戦から深夜まで長時間の試合、お疲れさまでした。「LCP」初戦のGAM Esports戦でしたが、試合を終えた感想をお聞かせください。

Marble:そうですね。もう日本時間だと2時くらいですかね。遅い時間まで試合をして、最後勝てなかったという悔しさはあるんですけど、僕としては思っていた以上に僕たちのチームが戦えていると感じたので、すごくプラスに見ています。

──すごくいい試合でしたが、今シーズンから新しいシステムとして、新エピックモンスターの「アタカン」や「フィアレスドラフト」という仕組みが入りました。実際に大会で戦ってみてどう思われましたか?

Marble:まず、「アタカン」に関しては、やっぱり「ガーディアンエンジェル」のアタカン(1度だけ復活できる「貪欲」のアタカンのこと)が強いと感じてはいたんですけれども、実際本番でやってみても強くて。もう1つの「災禍」のアタカンも結構弱いんじゃないかと思っていたんですけど、レベル差が結構ついちゃって強いなと認識を改めないといけないと感じました。

「フィアレスドラフト」に関しては、やっぱり視聴者側からするとすごく面白いし、自分も見ている時はいろいろなチャンピオンが見られて面白いと思うんですけど、競技者視点だとチャンピオンを手広く練習していかないといけない点で、少し大変さを感じています。

──実際に今日の試合では3ゲームとも違うチャンピオンピックで、昨年までだとひとつのピックを通して使うことで持ち直したりできたのが、全部違うピックにせざるを得ないわけですよね。Marble選手自身の負担はやはり大きかったですか。

Marble:やっぱりスクリムでも「フィアレスドラフト」用の練習をしないといけないですし、ソロQとか個人の練習でもチャンピオンプールを幅広く、練度を上げなければいけないので、つらい部分はありますね。

──試合について、ゲーム1ではGAMがミッドにふたりを持っていく、変則的なスワップから始まりました。試合中はどう思われました?

Marble:2024年末の「Kespa Cup」という大会で、一度ベトナムチームがミッドにADCを置くスワップ戦術を試していたので、僕たちもベトナムチームと戦う時はこういった意外な戦術にも対策しようということで、頭には入っていました。スワップ対策としてはすごくうまくいったと思います。

GAMは最初からケイトリン&ラックスをミッドのコーキに当てるレーンスワップからスタート。今季の特徴的な戦術が見られた

──Levi選手のキンドレッドがかなり育ってしまって厳しくなりましたね。

Marble:そうですね。やっぱり戦えるタイミングでファイトしなかったのが一番大きな原因かなと思いますね。例えば、相手のフラッシュやサモナースペルが落ちている状態でも自分たちから戦わずにファームしていて、相手もファームさせてしまったのが敗因だと感じます。

──続くゲーム2ではミス・フォーチュンをファーストピックして、しっかり勝ち切りましたが、ブルーサイドの時にもカリスタなどは全試合でバンしていて、MFを優先したのは意外に感じました。

Marble:今のメタって、レーンの主導権を取りに行くピックが正義という状況なので、その中でミス・フォーチュンが一番強いと思ってピックしました。

GAMがリフトヘラルドを狙った場面。Courage選手のセジュアニの仕掛けから針の穴を通すようなCCとMarble選手のRをきっかけに崩し切った

──結果的に、見事にハマって何度も味方のCCとMarble選手のアルティメットが刺さっていましたね。最後のゲーム3では初めてレッドサイドになって、カリスタ・スカーナー・ヴァイをバンをした結果、ついにヴァルスを取られてしまいました。最終的に負けはしましたが、Marble選手のエズリアルはノーデッドでしたよね。

Marble:正直、レベル1でのトップへのスワップが予想外で、相手にうまくしてやられたなという感じでした。トップのオーンが4人のガンクで2回やられてしまい、そこで経験値がうまく得られなくなって。ボットもボットで、レーンで有利を取られてしまいました。

試合開始2分半で、ファームを捨てて4人でトップガンクするGAM。アグレッシブなベトナムらしい、セオリーを無視した戦い方

──ただ、GAMには「Worlds 2024」のプレイインステージで2-0で負けていましたが、今回は1ゲーム取れました。今後「LCP」で戦っていく上で通用する点、修正すべき点などは見えましたか?

Marble:今大会は観客はいないんですがオフラインという形で、やっぱりみんな緊張もあったと思うので、本番での慣れの部分で経験を積んで、こういった環境に適応できる能力が必要かなと思います。

──チームとしては2人の新メンバーが加入しましたね。

Marble:コミュニケーション面で、韓国人の2人もすごく頑張っていて、FATEさんとCourageさんは一応チームからも日本語講師をつけてくれて、積極的に言語を学ぶ取り組みがすごく成長につながっていると思います。去年Forest選手が加入した時よりも、はるかにコミュニケーション面は向上していると思います。

──Gaengさんとのコンビも馴染めましたか?

Marble:今はスワップをすごく多用するメタなので、あまりレーン戦でコミュニケーションを取る練習はできていないんですけども、それでも今はすごくうまくいっていると思います。レーン戦でのいい姿を次からの試合でも見せられればと思います。

──チームにとってもMarble選手にとっても、初めて長期での海外での暮らしになります。

Marble:正直言って、暮らしの面も練習の面も、いまの環境はちょっと良くない部分があります。ですが、今月のうちにようやくゲーミングハウスに入居できるということで、やっと練習が安定してできるような環境になるので、そこからですね。

──逆に、苦しい中でも今日は成果も見せられて、自信につながる部分もありましたか?

Marble:そうですね、練習でうまくいかなかった部分も多くあったので、本番でどうなるか心配だったのですが、思った以上にうまく戦えました。今後の練習でまた経験値を積んで、いい姿を見せれたらなと思います。

──今日はめちゃくちゃ惜しい試合でした。次からの試合にも期待しています。お疲れのところありがとうございました。

Marble:
こちらこそありがとうございました!

※ ※ ※ 

チームとしては敗退してしまったが、Marble選手のパフォーマンスは初戦とは思えないほどに力みも見られず、常に自分の役割を果たしていた印象だった。シーズン初戦ならではのシステムの不具合による長時間の試合、「フィアレスドラフト」により思うようなバンピックができない中でも、最善を尽くしたと言えるだろう。

GAMのアグレッシブさが勝る形になったものの、SHGとしての強みもしっかり発揮できており、長い「LCP 2025」の1年間を渡りあえるという確信は、ファンも選手自身も感じられたのではないだろうか。

SHGの次戦は、1月19日(日)21:30頃より、「PCS」時代にも対戦経験のあるCTBC Flying Oyster(CFO)戦が予定されている。ぜひ日本からもSHGとMarble選手の活躍に期待したい。



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