格ゲーにおけるBANシステムはどうだったのか?「ストリートファイターリーグ: Pro-JP operated by RAGE グランドファイナル」を振り返る

2019.12.26 岡安学
12月1日、品川プリンスホテル内にあるクラブexにて、ストリートファイターリーグ Pro-jpのグランドファイナルが開催されました。


ストリートファイターリーグは、3人ひと組で構成されるチームが6チーム総当たり戦を行い、上位3チームが今回のグランドファイナルに進出できます。ストリートファイターリーグは今回で3回目となり、毎回新しい趣向を入れ、リーグとしてチャレンジしています。

会場には出場する3チームのプロフィールを掲載。勝率やひと言コメント、使用キャラクターなどが記載されており、初めて観る人もすぐに楽しめた


会場はクラブex。戦いの舞台となるステージは会場中央にあり、観客はステージを囲むようになっていた


毎戦特徴なシステムを導入した「ストリートファイターリーグ」


2018年に行われた第1回は、代表者となる6人のプロ選手が自らチームメイトを選ぶ「ドラフト制度」を導入。2019年春に行われた第2回はリーダーのみがプロ選手で、残りの2名はプロ候補生であるハイアマチュアと、ほとんど『ストリートファイターVアーケードエディション』を触ったことがない初心者の「チーム制度」を導入しました。

そして第3回となる今回は、これまでのチーム制度、ドラフト制度を残しながら、相手チームからひとつのキャラクターの使用を禁止する「BANルール」が適用されました。これにより、チーム編成が単純な強さだけでなく、複数キャラクターが使える多様性も求められるようになりました。

また、絶対的な強さを持つキャラクターを持つ選手を囮として、残った選手でポイントを稼ぐという作戦もみられます。前者であれば、レインボー・ミカとバーディーのどちらもトッププレイヤーと互角に戦えるダブルメインのふ~ど選手、後者であれば唯一無二のザンギエフ使いのキチパーム選手がそうです。

試合前の作戦タイムで出場する順番とBANするキャラクターなどが話し合われた。この作戦会議の様子も目の前で見られるのも、来場者にとって嬉しいところ

6チームが総当たりで2回ずつ対戦するリーグ戦10節の結果は、マゴスカーレットが1位通過し、ネモオーロラが2位通過、ふ~どガイアが3位通過となりました。

ちなみに、今回のグランドファイナルは日本リーグでの最終戦です。この大会で上位2チームまでに入れば、「カプコンカップ」と同時にロサンゼルスで開催されるアメリカのリーグとの世界戦への出場権が与えられます。

グランドファイナルは、2位と3位のチームが戦い、その勝者が1位の選手と戦うトーナメントとなっているため、1位通過したマゴスカーレットは、この時点で世界大会への出場権を獲得しています。

グランドファイナルの司会は平岩康佑アナウンサーと並木万里菜アナウンサー。ゲスト解説としてゴールデンボンバーの歌広場淳が登場

『ストII』モノマネ芸人のNOモーション。も登場。会場内にあるフリープレイエリアで対戦会も実施された

準決勝:ネモオーロラ vs ふ〜どガイア


初戦はネモオーロラとふ~どガイアの対戦。ネモオーロラは、キチパーム選手をBANの囮とし、ネモ選手と竹内ジョン選手がポイントを稼ぐ作戦でここまで上がってきました。今回も狙い通りキチパーム選手のザンギエフがBANされます。

かたやふ~どガイアは、リーダーのふ~ど選手がミカとバーディ^、Shuto選手がユリアンとベガ、ぼんちゃん選手がかりんとサガットと、いずれもどちらをBANされてもさほど大きな影響がないという布陣。その中でもリーグ中BANされる回数が多かったバーディーがBANされました。

試合形式はこれまでのリーグ戦とは違い、6ポイント先取したチームが勝ち抜けとなります。先鋒、中堅が1ポイント、大将が2ポイントであることは変わりませんが、6ポイント先取なので、場合によっては3回対戦することになり、その都度作戦を立てる必要があります。また、準決勝は2位通過のアドバンテージとして、ふ〜どガイアに1ポイント入った状態でスタートです。

1回目の対戦はザンギエフをBANされたキチパーム選手とShuto選手。ネモオーロラとしては、いつもの作戦通りでポイントを落とすこともやむなしといったところですが、グランドファイナルに向けてアビゲイルを仕上げてきたキチパーム選手がShuto選手に善戦します。結果はShuto選手に軍配が上がりますが、キチパーム選手が戦力としてのアピールを十分にできた試合でした。

中堅戦はボンちゃん選手と竹内ジョン選手。ボンちゃん選手は「カプコンプロツアー」で好調さを見せているなか、「ストリートファイターリーグ」では絶不調。グランドファイナルでの巻き返しを誓いましたが、竹内ジョン選手が勝利しました。


今回もメインキャラクター、ザンギエフをBANされたキチパーム選手


大将戦は大将戦では無敗のネモ選手とバーディーをBANされたふ~ど選手。レインボー・ミカはネモ選手があまり得意としていないキャラクターだけに、あまりBANの恩恵を受けているとは思えない対戦です。

しかし、その懸念を払しょくするリーダーとしての活躍を見せ、ネモ選手が勝利。ポイントは4対1と、ネモオーロラが大幅リードで2戦目に入ります。

ある意味、リーチ状態となったネモオーロラとしてとれる作戦としては、キチパーム選手を大将に据え、先鋒、中堅でのポイントで勝負を決めることもできます。最悪、全敗したとしてもふ~どガイアは4ポイントしか取れず、第3戦で再度先鋒、中堅をとればネモオーロラが勝利できるという圧倒的有利です。

結果として、2巡目は1巡目と同じカードでの対戦。Shuto選手とぼんちゃん選手が勝利し、4-3まで詰め寄りますが、絶対なるリーダーの意地を見せ、ネモ選手が自らの勝利で勝ち抜けを決めました。

ネモ選手の大将戦での強さはグランドファイナルで発揮

決勝:マゴスカーレット vs ネモオーロラ


決勝は、マゴスカーレットとネモオーロラ。BANはマゴスカーレットがまちゃぼー選手のネカリ、ネモオーロラはキチパーム選手のザンギエフと、リーグ戦でもっともBANされたふたりが今回もBANされました。しかし、まちゃぼー選手のサブキャラである豪鬼は、ダブルメインと言えるほど試合で見せなかったキャラクターですが、豪鬼の勝率100%とBANをまったく機能させない状態です。それでもネカリをBANしたいと思わせる強さがまちゃぼー選手のネカリにはあるわけです。

豪鬼で勝利を収め、BANを無効化するまちゃぼー選手


初戦はキチパーム選手とユージ選手の対戦。持ちキャラの春麗の優位を生かしたユージ選手がまず先勝。中堅戦はまちゃぼー選手と竹内ジョン選手。BANされたまちゃぼー選手ですが、まったくものともせず、竹内ジョン選手のラシードを退け、マゴスカーレットが連勝を飾ります。

大将戦はマゴ選手とネモ選手。マゴ選手はかりんではなくキャミィを使いネモ選手を倒し、なんと4-0の大差をつけます。

2巡目は先鋒戦で善戦むなしくキチパーム選手が敗退し、5-0の絶体絶命に。中堅戦は竹内ジョン選手がまちゃぼー選手の豪鬼に初黒星をつけ、メインキャラの面目を保ちます。大将戦もネモ選手が踏ん張り、これで5-3に。

決着の舞台は3巡目に。ネモオーロラが勝利するには3連勝しかなく、囮要員であったキチパーム選手も勝利が義務づけられます。

かたやマゴスカーレットは3試合中1試合勝利すればいいので、様々な作戦をとれます。もしネモオーロラが最終戦までの持ち越しを狙う場合はキチパーム選手を大将に据えることも考えられるため、先鋒、中堅で落としても十分勝ち筋はあると言えます。

結果、3巡目の先鋒戦に出場したのはリーダー、マゴ選手。ネモオーロラからはこれまで先鋒を務めたキチパーム選手ではなく竹内ジョン選手でした。ここで次に繋げたい竹内ジョン選手でしたが、残念ながらマゴ選手の前に敗れさりました。ここでマゴスカーレットの優勝が決定。見事、優勝賞金150万円を獲得しました。

最後は自らの勝利で優勝を引き寄せたマゴ選手

優勝トロフィーを掲げるマゴスカーレット



アーケードでもチーム戦で遊べる!


表彰式にはカプコンの小野プロデューサーが登壇し、「ストリートファイターリーグ」を含め、『ストリートファイターV』シリーズの新たな展開も発表されました。

ひとつめは『ストリートファイターVタイプアーケード』にて、ストリートファイターリーグでお馴染みのチームバトルモードを実装すること。3v3の熱い戦いが、ゲームセンターで体験できるようになります。

また『SFVタイプアーケード』のモバイルサイトでギルド機能も追加されます。ギルド自体のランクもあるので、ギルド同士のせめぎ合いも期待できそうです。

アーケードでもストリートファイターリーグと同じチーム戦が楽しめるようになります

公式モバイルサイトも一新。ギルドの作成が追加されます


2020はSHIELD方式を採用し、地方活性化へ


そして今後の「ストリートファイターリーグ」についてです。

来期は企業とプロ選手によるプロリーグを発足し、地方を拠点とするホームアンドアウェー方式で行われます。つまり、Jリーグやプロ野球に近い状態になり、地方でもプロ選手の活躍を目の前で体験することができるようになるわけです。

全国を拠点とするプロチームが地方活性化にもひと役買います


ストリートファイターリーグの準優勝と優勝チームが出場する「ストリートファイターリーグ ワールドチャンピオンシップ2019」では、新たなBANルールである「SHIELDシステム」を導入します。

これまでと同様に相手チームに使用を禁止するBANルールに追加されるルールで、BANするキャラクター数がこれまでの2倍の2キャラ分となる代わりに、BANをされても無効にできるSHIELDが加わりました。この新ルールにより、万年BAN候補であるキチパーム選手のザンギエフが日の目をみるのか、それともネモ選手や竹内ジョン選手のキャラクターにSHIELDを使い、これまでと同様の戦略で行くのかが見どころとなりそうです。

新たなBANシステムがどのような作戦を生むのか、乞うご期待

そして、マゴスカーレットはこの日本最強の勢いそのままに、チームUSAとの戦いにも勝利! 『ストリートファイターV』における世界一チームの称号を手にしました。

新たなBANシステム、チーム戦の醍醐味など、2020年も「ストリートファイターリーグ」から目が離せません。


ストリートファイターリーグ: Pro-JP operated by RAGE グランドファイナル
https://streetfighterleague.capcom-s.com/

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