「『鉄拳』は僕の人生」20歳のGENが語る2022年eスポーツ【DONUTS USG GEN(弦)選手インタビュー】
“神童”と呼ばれ続け、10代の頃から目覚ましい成績を残してきた 日本最強との呼び声も高いDONUTS USG所属 GEN(弦)選手。そんな彼の功績は海外でも高く評価され、ニューヨークで毎年行われる「New York Game Awarps」の「Joltin' Joe Award」を受賞した。
「New York Game Awards」は、日本では馴染みのない賞だが、日本人が受賞したのは、あの「メタルギアソリッド」シリーズの生みの親ともいえるゲームクリエイター、小島秀夫氏に次いでふたり目。それだけでも凄さは伝わったのではないだろうか。
今回は、若くして輝かしい賞を受賞したGEN選手に突撃インタビュー。受賞した率直な感想から、『鉄拳』eスポーツシーンの今後の展望など、GEN選手の心境をうかがった。
——まずは「New York Game Awards」の「Joltin' Joe Award」受賞、おめでとうございます! 率直に受賞した感想をお聞かせください。
GEN(弦)選手(以下、GEN):実は、この賞について知らなかったのですが、突然TwitterのDMで「受賞が決まりました」と、担当の方から英語でメッセージをいただいたのを覚えています。
——えっ、第一報がTwitterのDMだったんですか!?
GEN:はい(笑)。
それで、「New York Game Awards」について調べていくにつれて、ものすごい方々が受賞されているのを知って——。まさか僕が選ばれるとは思ってもいなかったので、正直驚きました。
——「New York Game Awards」について知ってからの心境は?
GEN:なんで僕なんだ? って感じはしましたね(笑)。
ただ、この受賞を通して『鉄拳』というタイトルをより多くの人に知ってもらえる機会になったのではないかと思うと、とてもうれしいです。
——確かに、『VALORANT』や『リーグ・オブ・レジェンド』といった海外のタイトルのプレイヤーがノミネートに名を連ねる中、日本のタイトルで日本人が受賞したというのは誉れ高いです。日本のプレイヤーが受賞するのはGEN選手が初となりますが、海外選手との交流はあったのでしょうか?
GEN:以前所属していたTeam Liquid時代には、海外の大会にも多く出場していたので、海外選手に声を掛けられることが多かったですね。
あと、僕は『鉄拳』の配信を見るのが好きで、まったく知らない海外ストリーマーの配信もよく見ています。それで「今のコンボいいね!」とか、結構英語でコメントもするんですけど、そうすると「おおっ、GEN!」って、相手は僕のこと知ってくれていたり、「いつも見てるよ」って返事してくれたりするんです。
——なるほど。海外でも知名度は十二分にあったんですね。「Red Bull Kumite Las Vegas」でも優勝してましたしね。
GEN:そうですね。あの「Red Bull Kumite Las Vegas」の優勝は大きかったと思います。
——ご自身も「まさか自分が受賞するなんて」と驚かれていたとのことですが、受賞の決め手はなんだったと思いますか?
GEN:年齢だと思います。
僕は2022年で21歳になるんですが、「若いのに、なんでこんなに強いんだ」って思われることが多いんです。特に海外プレイヤーからそう思われていることが多いので、その辺が注目されたのかなと思っています。
——確かに、格闘ゲームは他のジャンルに比べて選手の年齢層が高いですもんね。
——ここからは、GEN選手個人について少しお話をお聞かせください。GEN選手がプロになった経緯を教えてください。
GEN:僕は小学校1年生から『鉄拳』をプレイしていたこともあって、地元ではかなり強い方でした。そんな中、高校2年生の時にTeam Liquidさんから「うちのチームに入らないか」って声をかけていただいたんです。
ただ、僕は大学に進学したくて、勉強にも集中したかったので、その時はお断りさせていただきました。でも「大学受かるまで待ってるから」ってお返事をいただいて、進学後に改めて声をかけていただき、Team Liquidに所属することになりました。
なので、大学1年生の時にはじめてプロ選手になったという感じですね。
——ですが、世界トップクラスともいえるTeam Liquidを脱退して、DONUTS USGに移籍しました。
GEN:Team Liquidに所属していたときは、海外の大会にも多く出場させていただき、日本のみならず海外でも活躍することができたのですが、大学の方の課題や勉強まで手が回らなくなってしまったんです。
しかも毎月2回も海外の大会に出場させていただいたのに、なにひとつ結果が残せていませんでした。良くてベスト16とか。予選落ちも普通にありましたし……。
勉強と『鉄拳』の板挟みになりながら、どちらも中途半端で精神的にも参ってしまって——。
——それで、Team Liquidを脱退した?
GEN:いえ、大学を辞めて『鉄拳』に集中することにしました。そのおかげもあって、大会で優勝できるようになってきたんです。
ただ、大学を辞めたということは『鉄拳』が本格的に仕事になる。本格的にプロゲーマーとしての活動がはじまるわけです。そうなると、海外のチームに所属するというところに不安を感じるようになりました。
やっぱり物理的な距離もあるので、連絡事項のレスポンスが悪くなることも多く、悩みが増えてきました。Team Liquidはとてもいいチームなんですが、チームが大きすぎるが故に、チームと選手との間に距離を感じてしまう。
そういった面もあってTeam Liquid脱退を視野に入れるようになりました。そんな中、ユウ選手に「新しいチームが鉄拳プレイヤーを探している」という話を聞いて、DONUTS USGに移籍することにしました。
——DONUTS USGに所属する決め手は?
GEN:ひとつは、RANGCHU(ランチュ)とPINYA(ピンヤ)というチームメイトがいる点ですね。はじめて同じ鉄拳のプレイヤーがいるチームに所属できたことは僕にとって大きなメリットでした。
情報共有もできますし、何より心強かった。いつでも対戦できてお互い切磋琢磨して上達できる環境が良かったです。まあ、大会とかで同じチームの選手にあたっちゃうと気まずいんですけどね(笑)。
——実際に移籍して実力は上がりました?
GEN:そうですね。DONUTS USGに入ってからの方が優勝回数も増えた気がします。今はオフラインで気軽に会えない状況にはなっていますが、オンラインの大会中でもDiscordをつないでいるので、オフラインさながらの情報交換ができます。自分ひとりでは気づけなかった点をフォローしてくれる仲間がいるのは頼もしいです。
もちろん、Team Liquid時代に海外の大会に出させていただいた経験も生かされていますけどね。
——若くしてプロデビューし、今もなおめきめきと実力を付けているGEN選手ですが、ご自身の強さについてはどのように分析していますか?
GEN:僕は、相手の読みが鋭いってよく周りからは言われます。キャラ対策は得意ではないですが、瞬発的な判断力に長けているとは思っています。昔から駆け引きの判断が速くて、「お前相手に悩んだら負ける」とか「考えて戦うと行動が後手に回ってしまう」とか言われます。
なので、自分の強さを客観視するのであれば、判断力の速さと、読みの強さなのかなあ。昔は感性でプレイしている感覚が強かったですね。
——天才肌系ですね。でも、大人になるにつれてフレーム管理とか知識面も強化していますよね?
GEN:はい。プロになってからは感性や読みだけでは勝ち続けることは難しいので、フレーム管理やキャラ対策など知識を取り入れた戦い方をしています。日本の選手と海外の選手とは戦い方も違いますし、知らない立ち回りもたくさんある。そういった知識を吸収することは、勝ち続けるためには大切なことです。
——ちなみに、普段はどんな練習をしてますか?
GEN:僕は短期集中型なので、基本的には毎日4〜5時間くらいを練習に費やしています。プラクティスモードでキャラクターの対策を研究したり、ランクマッチで対戦したり——。
——GEN選手みたいになりたい、という人に向けてのアドバイスってありますか?
GEN:そうですね……知識を付けるためにプラクティスモードに籠もるというのもとても大切なのですが、より効率的に強くなりたいのであれば、すぐにでもランクマッチで戦った方がいいです。
そして、実際にほかのプレイヤーと戦い、負けた試合をすぐ振り返る。どのキャラ相手で、どの技で負けたのかを振り返ってから、プラクティスモードで対策をする。そうやってひとつずつ知識を増やしていくことで、効率よく上達できると思います。
やっぱり『鉄拳』の競技シーンも、まだまだ中高年のプレイヤーが上位に名を連ねています。若手でも強い子はたくさんいますし、大会に出場すれば優勝できるんじゃないかと思うくらいの腕前の子も少なくありません。
若手が中高年のプレイヤーに勝てない理由は、単純に経験値不足なんです。中高年の方は『鉄拳』を長年プレイされているので、知識も経験も豊富です。彼らに勝つためには、十分に経験を積んで、より多くのプレイヤーの知識を盗むことも大切だと思っています。
——なるほど、ひとつずつ弱点を潰していくスタイルですね。そう考えると小学校1年生からプレイされているGEN選手は、年齢こそ若手だけど、中高年並の知識や経験もある。そこに強みがあるんですね。
GEN:あはは、そうですね。鉄拳歴でいえば、間違いなく“おじ”の部類に入りますね(笑)。
——あと、GEN選手の強さの秘訣といえば、お父さん(通称、弦パパ)の存在なくしては語れないと思います。
GEN:そうですね。僕の父は勉強のことに関してはうるさく言いませんが、こと『鉄拳』に関してはめちゃめちゃ厳しいです。中途半端にプレイしていると怒られます(笑)。
「強くなりたくなければ辞めろ!」って言われたこともあります。
——あはは。ある意味、普通の家庭とは真逆な教育方針ですね。実際に辞めたいと思ったことはなかったんですか?
GEN:正直ありました。友だちと外で遊ぶのも好きだったので、『鉄拳』は辞めてもいいかなあとも思ってました。
ただ、ちょっと『鉄拳』から離れて、久しぶりにプレイすると、やっぱり楽しいんですよ。なので、怒られないように真剣に取り組むようになりましたね(笑)。
——そもそも『鉄拳』ってゲームだしやめるとかやめないじゃないと思うんですけど、すごくアスリート感がありますよね。まるでオリンピック選手のような意気込みというか……。
GEN:父いわく、確信があったみたいです。「今後、ゲームが流行って、プロ野球やプロサッカー選手みたいに人気が出る」っていうのを、僕が小学生の頃から言っていました。僕は正直「いや、ならんやろ」って思ってましたけど(笑)。
——めちゃめちゃ、先見の明があるお父さんじゃないですか!
GEN:そうですね。なので「お前が真剣に『鉄拳』をやるなら、世界一を取ってほしい」ってずっと言われ続けてました。
——そしてそれが現実になったと! すごいストーリーだー!
——GEN選手にとって『鉄拳』は、かけがえのない存在なのですね。そこで、あえておうかがいします。GEN選手にとって『鉄拳』とは?
GEN:僕にとっての『鉄拳』は“人生”ですね。今までずっと『鉄拳』をやり続けてきましたし、逆を言えば『鉄拳』しかやってなかったですもん(笑)。
——あはは。GEN選手らしいですね。ただ、新型コロナの影響で大会も少なくなり世界大会もなくなり、eスポーツシーンを観ている側からすると、ちょっと心配なタイトルなのではとも感じます。GEN選手が見ている『鉄拳』の未来はどのようなものなのでしょうか。
GEN:確かにそこは不安要素ではありますよね。「鉄拳は今後どうなってしまうんだろうか」というのは、僕たち『鉄拳』プレイヤーが常に抱えている不安ではあります。いくら新作が出たとしても人気が下がってしまえばシーン自体が衰退してしまいますから。
だから、僕たちができることは、『鉄拳』シーンを盛り上げること。少しでも『鉄拳』を知ってもらえるように、プロ選手は試行錯誤して活動しています。
——GEN選手自身は、『鉄拳』シーンを盛り上げるためにどのような活動をされていますか?
GEN:僕は若手の育成をしています。25歳以下の子たちを対象にしたDiscordグループを作成して、その中で僕が『鉄拳』の講習をしたり、会話をしながら対戦をしたりという活動を週に3〜4回のペースで行っています。
——おおっ、それはいいですね! 実際どれくらいの反響がありましたか?
GEN:おかげさまで参加者も増えてきて、今は150人くらいは集まっています。いろんな人たちが集まってくれるし、若い子でも本当に強い子がたくさんいるんですよ。僕ですら普通に負けちゃうくらい(笑)。
そういう子たちの芽を潰さないためにも、僕たちプロ選手との対戦で知識や経験を得てもらって、大会に出場できるように活動しています。
——なるほど、ものすごく鉄拳愛を感じます! 最後に今後の展望をお聞かせください。
GEN:とにかく海外大会に出たいです。やっぱり、海外大会って楽しいんですよ。声援も大きいし、会場の盛り上がり方も日本より大きいし。まだまだ知らないプレイヤーがたくさんいるので、より多くの人と対戦して、より自分の経験を積んで行けたらと思っています。
そのためには、いち早くコロナが終息してくれることを祈るとともに、これから何年、何十年と『鉄拳』を続けられたらと思います。
これからも、応援よろしくお願いします!
——ありがとうございました!
———
eスポーツの英才教育ともいっても過言ではない、理解ある弦パパのサポートもあってか、若くしてプロシーンに参入し、世界一の座を手にしたGEN選手の偉業は、『鉄拳』シーンに大きな爪痕を残したといっても過言ではない。
「とにかく『鉄拳』を盛り上げたい」と、選手目線だけでなく、アンバサダー的な立ち回りもできるGEN選手の意気込みが、なにより今後のeスポーツシーンを明るくしてくれるのではないだろうか。
まだまだeスポーツシーンは混沌とした部分も多く、うれしい話題より悲しい話題が注目を浴びてしまうことも……。GEN選手のような若くて前向きで頼もしいプレイヤーが、もっともっと増えてきてくれることを願うとともに、今後のGEN選手の活動にも期待したい。
DONUT USG Twitter:
https://twitter.com/DONUTSUSG
GEN選手 Twitter:
https://twitter.com/gen0202
「New York Game Awards」は、日本では馴染みのない賞だが、日本人が受賞したのは、あの「メタルギアソリッド」シリーズの生みの親ともいえるゲームクリエイター、小島秀夫氏に次いでふたり目。それだけでも凄さは伝わったのではないだろうか。
今回は、若くして輝かしい賞を受賞したGEN選手に突撃インタビュー。受賞した率直な感想から、『鉄拳』eスポーツシーンの今後の展望など、GEN選手の心境をうかがった。
突然のDMで受賞を知らされ、鳩が豆鉄砲を食らったような気持ちに
——まずは「New York Game Awards」の「Joltin' Joe Award」受賞、おめでとうございます! 率直に受賞した感想をお聞かせください。
GEN(弦)選手(以下、GEN):実は、この賞について知らなかったのですが、突然TwitterのDMで「受賞が決まりました」と、担当の方から英語でメッセージをいただいたのを覚えています。
——えっ、第一報がTwitterのDMだったんですか!?
GEN:はい(笑)。
それで、「New York Game Awards」について調べていくにつれて、ものすごい方々が受賞されているのを知って——。まさか僕が選ばれるとは思ってもいなかったので、正直驚きました。
New York Game Awardsとは
New York Videogames Critics Circleが主催するゲームアワード。2021年よりNintendo of America Inc.の元社長兼COOのReginald Fils-Aime(レジナルド・フィサメィ)氏が共同開催者として参加している。
その中の「Joltin' Joe Award」は、アメリカで最も有名な野球選手のひとりである、ジョー・ディマジオのニックネーム「Joltin' Joe」を冠した、年間のベストeスポーツプレイヤーを称える賞。
New York Videogames Critics Circleが主催するゲームアワード。2021年よりNintendo of America Inc.の元社長兼COOのReginald Fils-Aime(レジナルド・フィサメィ)氏が共同開催者として参加している。
その中の「Joltin' Joe Award」は、アメリカで最も有名な野球選手のひとりである、ジョー・ディマジオのニックネーム「Joltin' Joe」を冠した、年間のベストeスポーツプレイヤーを称える賞。
——「New York Game Awards」について知ってからの心境は?
GEN:なんで僕なんだ? って感じはしましたね(笑)。
ただ、この受賞を通して『鉄拳』というタイトルをより多くの人に知ってもらえる機会になったのではないかと思うと、とてもうれしいです。
——確かに、『VALORANT』や『リーグ・オブ・レジェンド』といった海外のタイトルのプレイヤーがノミネートに名を連ねる中、日本のタイトルで日本人が受賞したというのは誉れ高いです。日本のプレイヤーが受賞するのはGEN選手が初となりますが、海外選手との交流はあったのでしょうか?
GEN:以前所属していたTeam Liquid時代には、海外の大会にも多く出場していたので、海外選手に声を掛けられることが多かったですね。
あと、僕は『鉄拳』の配信を見るのが好きで、まったく知らない海外ストリーマーの配信もよく見ています。それで「今のコンボいいね!」とか、結構英語でコメントもするんですけど、そうすると「おおっ、GEN!」って、相手は僕のこと知ってくれていたり、「いつも見てるよ」って返事してくれたりするんです。
——なるほど。海外でも知名度は十二分にあったんですね。「Red Bull Kumite Las Vegas」でも優勝してましたしね。
GEN:そうですね。あの「Red Bull Kumite Las Vegas」の優勝は大きかったと思います。
優勝🏆嬉しくてさすがに泣きました。
— DONUTS USG|GEN (弦) (@gen0202) November 14, 2021
「日本の鉄拳が世界一や!」
日本には僕以外にも普段から切磋琢磨してるプレイヤーがたくさんいます!
日本の鉄拳界が今よりもっと盛り上がるように、これからも僕も協力して頑張っていきます!
皆様応援ありがとうございました😭🙏#RedBullKumite pic.twitter.com/Y2ffERiSoE
——ご自身も「まさか自分が受賞するなんて」と驚かれていたとのことですが、受賞の決め手はなんだったと思いますか?
GEN:年齢だと思います。
僕は2022年で21歳になるんですが、「若いのに、なんでこんなに強いんだ」って思われることが多いんです。特に海外プレイヤーからそう思われていることが多いので、その辺が注目されたのかなと思っています。
——確かに、格闘ゲームは他のジャンルに比べて選手の年齢層が高いですもんね。
チームとして動けるメリットに魅力を感じDONUTS USGへ移籍
——ここからは、GEN選手個人について少しお話をお聞かせください。GEN選手がプロになった経緯を教えてください。
GEN:僕は小学校1年生から『鉄拳』をプレイしていたこともあって、地元ではかなり強い方でした。そんな中、高校2年生の時にTeam Liquidさんから「うちのチームに入らないか」って声をかけていただいたんです。
ただ、僕は大学に進学したくて、勉強にも集中したかったので、その時はお断りさせていただきました。でも「大学受かるまで待ってるから」ってお返事をいただいて、進学後に改めて声をかけていただき、Team Liquidに所属することになりました。
なので、大学1年生の時にはじめてプロ選手になったという感じですね。
——ですが、世界トップクラスともいえるTeam Liquidを脱退して、DONUTS USGに移籍しました。
GEN:Team Liquidに所属していたときは、海外の大会にも多く出場させていただき、日本のみならず海外でも活躍することができたのですが、大学の方の課題や勉強まで手が回らなくなってしまったんです。
しかも毎月2回も海外の大会に出場させていただいたのに、なにひとつ結果が残せていませんでした。良くてベスト16とか。予選落ちも普通にありましたし……。
勉強と『鉄拳』の板挟みになりながら、どちらも中途半端で精神的にも参ってしまって——。
——それで、Team Liquidを脱退した?
GEN:いえ、大学を辞めて『鉄拳』に集中することにしました。そのおかげもあって、大会で優勝できるようになってきたんです。
ただ、大学を辞めたということは『鉄拳』が本格的に仕事になる。本格的にプロゲーマーとしての活動がはじまるわけです。そうなると、海外のチームに所属するというところに不安を感じるようになりました。
やっぱり物理的な距離もあるので、連絡事項のレスポンスが悪くなることも多く、悩みが増えてきました。Team Liquidはとてもいいチームなんですが、チームが大きすぎるが故に、チームと選手との間に距離を感じてしまう。
そういった面もあってTeam Liquid脱退を視野に入れるようになりました。そんな中、ユウ選手に「新しいチームが鉄拳プレイヤーを探している」という話を聞いて、DONUTS USGに移籍することにしました。
——DONUTS USGに所属する決め手は?
GEN:ひとつは、RANGCHU(ランチュ)とPINYA(ピンヤ)というチームメイトがいる点ですね。はじめて同じ鉄拳のプレイヤーがいるチームに所属できたことは僕にとって大きなメリットでした。
情報共有もできますし、何より心強かった。いつでも対戦できてお互い切磋琢磨して上達できる環境が良かったです。まあ、大会とかで同じチームの選手にあたっちゃうと気まずいんですけどね(笑)。
——実際に移籍して実力は上がりました?
GEN:そうですね。DONUTS USGに入ってからの方が優勝回数も増えた気がします。今はオフラインで気軽に会えない状況にはなっていますが、オンラインの大会中でもDiscordをつないでいるので、オフラインさながらの情報交換ができます。自分ひとりでは気づけなかった点をフォローしてくれる仲間がいるのは頼もしいです。
もちろん、Team Liquid時代に海外の大会に出させていただいた経験も生かされていますけどね。
強くなる近道は、負けた試合をすぐに振り返ること
——若くしてプロデビューし、今もなおめきめきと実力を付けているGEN選手ですが、ご自身の強さについてはどのように分析していますか?
GEN:僕は、相手の読みが鋭いってよく周りからは言われます。キャラ対策は得意ではないですが、瞬発的な判断力に長けているとは思っています。昔から駆け引きの判断が速くて、「お前相手に悩んだら負ける」とか「考えて戦うと行動が後手に回ってしまう」とか言われます。
なので、自分の強さを客観視するのであれば、判断力の速さと、読みの強さなのかなあ。昔は感性でプレイしている感覚が強かったですね。
——天才肌系ですね。でも、大人になるにつれてフレーム管理とか知識面も強化していますよね?
GEN:はい。プロになってからは感性や読みだけでは勝ち続けることは難しいので、フレーム管理やキャラ対策など知識を取り入れた戦い方をしています。日本の選手と海外の選手とは戦い方も違いますし、知らない立ち回りもたくさんある。そういった知識を吸収することは、勝ち続けるためには大切なことです。
——ちなみに、普段はどんな練習をしてますか?
GEN:僕は短期集中型なので、基本的には毎日4〜5時間くらいを練習に費やしています。プラクティスモードでキャラクターの対策を研究したり、ランクマッチで対戦したり——。
——GEN選手みたいになりたい、という人に向けてのアドバイスってありますか?
GEN:そうですね……知識を付けるためにプラクティスモードに籠もるというのもとても大切なのですが、より効率的に強くなりたいのであれば、すぐにでもランクマッチで戦った方がいいです。
そして、実際にほかのプレイヤーと戦い、負けた試合をすぐ振り返る。どのキャラ相手で、どの技で負けたのかを振り返ってから、プラクティスモードで対策をする。そうやってひとつずつ知識を増やしていくことで、効率よく上達できると思います。
やっぱり『鉄拳』の競技シーンも、まだまだ中高年のプレイヤーが上位に名を連ねています。若手でも強い子はたくさんいますし、大会に出場すれば優勝できるんじゃないかと思うくらいの腕前の子も少なくありません。
若手が中高年のプレイヤーに勝てない理由は、単純に経験値不足なんです。中高年の方は『鉄拳』を長年プレイされているので、知識も経験も豊富です。彼らに勝つためには、十分に経験を積んで、より多くのプレイヤーの知識を盗むことも大切だと思っています。
——なるほど、ひとつずつ弱点を潰していくスタイルですね。そう考えると小学校1年生からプレイされているGEN選手は、年齢こそ若手だけど、中高年並の知識や経験もある。そこに強みがあるんですね。
GEN:あはは、そうですね。鉄拳歴でいえば、間違いなく“おじ”の部類に入りますね(笑)。
——あと、GEN選手の強さの秘訣といえば、お父さん(通称、弦パパ)の存在なくしては語れないと思います。
GEN:そうですね。僕の父は勉強のことに関してはうるさく言いませんが、こと『鉄拳』に関してはめちゃめちゃ厳しいです。中途半端にプレイしていると怒られます(笑)。
「強くなりたくなければ辞めろ!」って言われたこともあります。
——あはは。ある意味、普通の家庭とは真逆な教育方針ですね。実際に辞めたいと思ったことはなかったんですか?
GEN:正直ありました。友だちと外で遊ぶのも好きだったので、『鉄拳』は辞めてもいいかなあとも思ってました。
ただ、ちょっと『鉄拳』から離れて、久しぶりにプレイすると、やっぱり楽しいんですよ。なので、怒られないように真剣に取り組むようになりましたね(笑)。
——そもそも『鉄拳』ってゲームだしやめるとかやめないじゃないと思うんですけど、すごくアスリート感がありますよね。まるでオリンピック選手のような意気込みというか……。
GEN:父いわく、確信があったみたいです。「今後、ゲームが流行って、プロ野球やプロサッカー選手みたいに人気が出る」っていうのを、僕が小学生の頃から言っていました。僕は正直「いや、ならんやろ」って思ってましたけど(笑)。
——めちゃめちゃ、先見の明があるお父さんじゃないですか!
GEN:そうですね。なので「お前が真剣に『鉄拳』をやるなら、世界一を取ってほしい」ってずっと言われ続けてました。
——そしてそれが現実になったと! すごいストーリーだー!
僕たちプロ選手がいまできることは『鉄拳』シーンを盛り上げること
——GEN選手にとって『鉄拳』は、かけがえのない存在なのですね。そこで、あえておうかがいします。GEN選手にとって『鉄拳』とは?
GEN:僕にとっての『鉄拳』は“人生”ですね。今までずっと『鉄拳』をやり続けてきましたし、逆を言えば『鉄拳』しかやってなかったですもん(笑)。
——あはは。GEN選手らしいですね。ただ、新型コロナの影響で大会も少なくなり世界大会もなくなり、eスポーツシーンを観ている側からすると、ちょっと心配なタイトルなのではとも感じます。GEN選手が見ている『鉄拳』の未来はどのようなものなのでしょうか。
GEN:確かにそこは不安要素ではありますよね。「鉄拳は今後どうなってしまうんだろうか」というのは、僕たち『鉄拳』プレイヤーが常に抱えている不安ではあります。いくら新作が出たとしても人気が下がってしまえばシーン自体が衰退してしまいますから。
だから、僕たちができることは、『鉄拳』シーンを盛り上げること。少しでも『鉄拳』を知ってもらえるように、プロ選手は試行錯誤して活動しています。
——GEN選手自身は、『鉄拳』シーンを盛り上げるためにどのような活動をされていますか?
GEN:僕は若手の育成をしています。25歳以下の子たちを対象にしたDiscordグループを作成して、その中で僕が『鉄拳』の講習をしたり、会話をしながら対戦をしたりという活動を週に3〜4回のペースで行っています。
【拡散希望】
— DONUTS USG|GEN (弦) (@gen0202) January 22, 2022
鉄拳若手プレイヤー同士の交流をもっと増やして、鉄拳力をお互いに高めあえたらなと思い
若手(25歳以下)限定discordサーバーを作りました!
アドバイスや質問等なども受付してます🙌
鉄拳をしている25歳以下の方がいましたら、誰でも参加ください!https://t.co/bYsqJlIM5t pic.twitter.com/fqTSTJwmBZ
——おおっ、それはいいですね! 実際どれくらいの反響がありましたか?
GEN:おかげさまで参加者も増えてきて、今は150人くらいは集まっています。いろんな人たちが集まってくれるし、若い子でも本当に強い子がたくさんいるんですよ。僕ですら普通に負けちゃうくらい(笑)。
そういう子たちの芽を潰さないためにも、僕たちプロ選手との対戦で知識や経験を得てもらって、大会に出場できるように活動しています。
——なるほど、ものすごく鉄拳愛を感じます! 最後に今後の展望をお聞かせください。
GEN:とにかく海外大会に出たいです。やっぱり、海外大会って楽しいんですよ。声援も大きいし、会場の盛り上がり方も日本より大きいし。まだまだ知らないプレイヤーがたくさんいるので、より多くの人と対戦して、より自分の経験を積んで行けたらと思っています。
そのためには、いち早くコロナが終息してくれることを祈るとともに、これから何年、何十年と『鉄拳』を続けられたらと思います。
これからも、応援よろしくお願いします!
——ありがとうございました!
———
eスポーツの英才教育ともいっても過言ではない、理解ある弦パパのサポートもあってか、若くしてプロシーンに参入し、世界一の座を手にしたGEN選手の偉業は、『鉄拳』シーンに大きな爪痕を残したといっても過言ではない。
「とにかく『鉄拳』を盛り上げたい」と、選手目線だけでなく、アンバサダー的な立ち回りもできるGEN選手の意気込みが、なにより今後のeスポーツシーンを明るくしてくれるのではないだろうか。
まだまだeスポーツシーンは混沌とした部分も多く、うれしい話題より悲しい話題が注目を浴びてしまうことも……。GEN選手のような若くて前向きで頼もしいプレイヤーが、もっともっと増えてきてくれることを願うとともに、今後のGEN選手の活動にも期待したい。
DONUT USG Twitter:
https://twitter.com/DONUTSUSG
GEN選手 Twitter:
https://twitter.com/gen0202
【番外編】昔のゲーセンは怖かった?
——小学校1年生の頃からゲーセンに通い、勝ち続けいてたという武勇伝は各所で拝見していますが、当時のゲームセンター事情ってぶっちゃけどうでしたか?
GEN:僕の地元は福岡で、地元のこぢんまりとしたゲームセンターで遊んでいたんですが、ある日「向こうのゲーセンにもっと強い人がいるから遊びにおいでよ」って誘われたんです。
それでそのゲームセンターに行ってみると、めちゃめちゃ強いプレイヤーたくさんいましたが、まあ治安は良くなかったですよ(笑)。
——話によると、向こう側から灰皿が飛んでくることもあったとかなかったとか(笑)。
GEN:灰皿は飛んでくるし、筐体ごと押されて壁にぶつかりそうになったこともありますよ(笑)。
ただ、直接文句を言われることはなかったですね。文句を言いたそうにこちらの筐体に向かってきたことはありましたが、なんせ当時の僕はいわゆる「お子さま」でしたからね。
子ども相手に声を荒らげることもできず、そのままスーッといなくなってしまいました(笑)。
——あはは。そりゃ子ども相手に文句はいえないですもんね(笑)。
GEN:まあでも、おかげさまで腕は上がりましたよ。最初は全然勝てなかったですけど、小学校4年生の頃には普通に勝てるようになってましたしね。
——でも、怖かったでしょうに。
GEN:僕、肝が据わってたんで全然大丈夫でした(笑)。
なんていうか、そういう光景が日常茶飯事になっていたので、見慣れていたというのもありますね。その辺で台パンなんて当たり前でしたし。
——あはは。GEN選手のメンタルの強さはそこで培われたのかもですね(笑)。
GEN:そうですね(笑)。
——小学校1年生の頃からゲーセンに通い、勝ち続けいてたという武勇伝は各所で拝見していますが、当時のゲームセンター事情ってぶっちゃけどうでしたか?
GEN:僕の地元は福岡で、地元のこぢんまりとしたゲームセンターで遊んでいたんですが、ある日「向こうのゲーセンにもっと強い人がいるから遊びにおいでよ」って誘われたんです。
それでそのゲームセンターに行ってみると、めちゃめちゃ強いプレイヤーたくさんいましたが、まあ治安は良くなかったですよ(笑)。
——話によると、向こう側から灰皿が飛んでくることもあったとかなかったとか(笑)。
GEN:灰皿は飛んでくるし、筐体ごと押されて壁にぶつかりそうになったこともありますよ(笑)。
ただ、直接文句を言われることはなかったですね。文句を言いたそうにこちらの筐体に向かってきたことはありましたが、なんせ当時の僕はいわゆる「お子さま」でしたからね。
子ども相手に声を荒らげることもできず、そのままスーッといなくなってしまいました(笑)。
——あはは。そりゃ子ども相手に文句はいえないですもんね(笑)。
GEN:まあでも、おかげさまで腕は上がりましたよ。最初は全然勝てなかったですけど、小学校4年生の頃には普通に勝てるようになってましたしね。
——でも、怖かったでしょうに。
GEN:僕、肝が据わってたんで全然大丈夫でした(笑)。
なんていうか、そういう光景が日常茶飯事になっていたので、見慣れていたというのもありますね。その辺で台パンなんて当たり前でしたし。
——あはは。GEN選手のメンタルの強さはそこで培われたのかもですね(笑)。
GEN:そうですね(笑)。
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