世界を相手にするために必要なものは「多くを経験すること」【ENTER FORCE.36 PUBG部門選手インタビュー】

2021.5.19 井ノ川結希(いのかわゆう)
2018年eスポーツ元年を皮切りに、日本でもeスポーツの大会が増え始め、プロ選手として活躍しているプレイヤーはもちろん、試合を観戦するファンも着々と増えてきている。

そんな中、世界を相手に世界大会で活躍するチームも少なくない。今回紹介するチームは、前回オーナーの池田氏にもインタビューさせていただいたENTER FORCE.36。

PUBG部門では、日本代表として何度も世界大会に出場している実力は折り紙付きのチームだ。2021年2月5日(金)から3月28日(日)に開催されていた『PUBG』の世界大会「PUBG Global Invitational.S 2021」では、「DetonatioN Gaming White」ともに日本代表として出場。

結果は29位と世界の強さを知らしめられる結果となってしまったが、日本選手としては大健闘したのではないだろうか。

今回は、そんなENTER FORCE.36 PUBG部門の選手に、世界大会に出場し続けるために必要なものとは、強さの秘訣はなんなのかをおうかがいしてみた。

▲左からSylphia(しるふぃあ)選手、amonot(あもん)選手、satou(さとう)選手、Pureboy(ぴゅあぼーい)選手

池田オーナーの「プレイヤーファースト」の理念に惹かれてチームを移籍


——まず、みなさんがPUBGをはじめた経緯を教えてください。

amonot選手:僕は中学1年生の頃、友人にオンラインゲームを誘ってもらったのがゲームを始めたきっかけですね。そして大学に入って、また同じ友人に『PUBG』を教えてもらいました。

Pureboy選手:僕は今年で23歳になるのですが、中学3年生の頃にPCを買ってもらい、そこからFPSをプレイしはじめました。2017年頃には『PUBG』にはまっていて、そこでamonotと出会いました。

satou選手:もともと親や兄がゲームをやっていたということもあって、小さい頃からゲームは身近にありました。その流れで『PUBG』で遊ぶようになり、ほどなくしてTeam RAYZEというチームで活躍していました。

Sylphia選手:姉がPCを持っていたので、小学校3年生の頃にはゲームを楽しんでいました。それこそ『PUBG』はリリース当初からプレイしていて、強い人があつめるコミュニティに参加しては、日々実力を磨いていいましたね。

——なるほど。amonot選手、Pureboy選手、satou選手はもともと、Team RAYZEで活躍していましたが、チーム解散後、なぜENTER FORCE.36に入ろうと思ったのですか?

amonot選手:イベントで偶然池田オーナーと話す機会があったのですが、最初は見た目もいかついし、不安なイメージでした。(笑)


ですが、話を聞かせていただいて、とても選手思いなオーナーさんだと感じ、ENTER FORCE.36に移籍を決めました。

——先のインタビューで池田オーナーとはお話をさせていただきましたが、確かに選手を第一に考えていますよね。

amonot選手:そうですね。オーナーだけどお兄さんみたいな存在で、普段からLINEをしたり、いろいろな相談を聞いてくれます。

Sylphia選手:僕はストリーマーとしても活動しているのですが、配信に遊びに来てくれることもあって、とてもアットホームなオーナーだなあというイメージですね(笑)。

——あはは。そういえば、一緒に旅行に行くこともあるとか(笑)。

satou選手:はい。この前は、一緒に北海道旅行に行ってきて、選手のみんなととてもリフレッシュさせていただきました。

——そんな、アットホームなチームなのですが、PUBG部門では日本代表として世界で活躍しています。世界で活躍するための秘訣というのはあるのでしょうか?

Sylphia選手:やっぱり、コミュニケーションを取ることが一番大切だと思っています。『PUBG』は運の要素も多いので、運の要素を減らすためにも、極力コミュニケーションをしっかりとっていますね。どこに誰がいる、どこに何があるとか、当たり前のことですが、そういう細かい情報をチーム全体で共有しています。

——なるほど。各選手のここが強いポイントとかありますか?

amonot選手:じゃあ、僕はPureboyのいいところを。彼は、人の話をしっかり聞いてくれるところが優れています。常に冷静で落ち着いているので、チーム全体をまとめてくれます。また、チームの最前線に立つ、いわゆる「フラッガー」的な存在なので、冷静に状況を伝達してくれるところもすばらしいですね。

Pureboy選手:僕は、Sylphiaのいいところを。彼は、とにかく撃ち合いが強い。1対複数でも勝ってしまうほどの強さを持っています。あと、なんか知らないけど、地形の上り方がすごいうまいんです(笑)。気がついたらすごいところ上ったり、一体どこで覚えたんだろうってくらい。奇をてらった行動がうまいですね。


Sylphia選手:あはは。結構ひとりで練習しているんです。パルクール実装後はいろいろな場所を試してます。じゃあ僕は、satouのいいところを。彼もPureboyに似ていて、冷静で頼れる意見を言ってくれるところです。チーム全体の意見が分かれたときも、彼が総合的に全体を見て、どの作戦が適しているかを判断してくれます。臨機応変に自分の立ち位置を変えられるのはすごいなあと思います。

satou選手:こうなると、俺がamonotのいいところをいう流れですよね(笑)。彼は本当に頭が良くて、昔からぐんぐん成長しているのを実感します。撃ち合いに関しても、立ち回りに関しても、新しい環境に順応するスピードが全然違いますね。

世界各チームの強さを目の当たりにしたPGI.S


——ENTER FORCE.36は国際大会への出場が続いていますが、まずは世界大会「PUBG Global Invitational.S 2021」(以下、PGI.S)を振り返って、感想を教えてください。

amonot選手:satouとPureboyは世界大会に1度出た経験があるのですが、僕はNAやEUのチームと戦うのは初めてだったので、どんな戦い方をしてくるのか未知数な部分があって——。実際に戦ってみると、中国や韓国のチームに劣らず、ファイトもムーブもどちらも強いという印象でした。


Sylphia選手:自分もアジア以外のチームと戦った経験がまったくなかったので、不安もありました。特に🇺🇸Soniqsや、🇰🇷Gen.Gの活躍が目立っていたと思うんですけど、PGI.S全体を通して、本当にどの地域も強かったなと。レベルの差を感じた部分もありました。

——NAのチームによる活躍が印象的でしたが、皆さんの目線で印象に残っているリージョンやチームはありますか?

satou選手:NAのチームは、僕がもともと持っていたイメージよりも強かったです。🇺🇸Shoot To Kill(STK)が強いのは知っていたのですが、それ以外のチームも全然強くて、世界トップレベルだったのでびっくりしました。

個人的に一番印象に残っているのは、タイの🇹🇭Buriram United Esportsと、中国の🇨🇳Four Angry Men(4AM)🇹🇭Buriram United Esportsは、聞いたことがないチームだったんですけど、蓋を開けてみれば、中国チームにも劣らないフィジカルの強さと大胆さで驚かされました。


僕は中国リージョンが好きで大会をよく観るのですが、中国は本当にイメージ通りでしたね。自分たちの力でその後のムーブに繋いでいて、ルールを度外視したような、すべてを破壊しにくる動きが印象に残っています。

Pureboy選手:最終的なランキングとしても、1位がNAの🇺🇸Soniqs、2位もNAの🇺🇸Zenith、それに続いて韓国の🇰🇷Gen.Gが3位となっていたので、やはりNAのチームは全体的にレベルが高かったんだなと、結果からも思いました。

中国や韓国のチームは1年間ずっと戦ってきて、トップレベルだというイメージはあったんですけど、PGI.Sの2カ月間を戦って、中国や韓国より強いチームもいて、どのリージョンも強いんだと感じさせられました。

ドン勝を重視する、新たなWWCDルールへの適応


——直近のPUBG競技シーンでは、WWCDルールが採用されています。この新ルールへの適応について、チームではどんな話をされましたか?

WWCDルールとは

PUBG競技シーンでは、順位ポイント+キルポイントでランキングが決定する従来の「SUPERルール」から、ドン勝チームをラウンドの勝者とする新たな「WWCDルール」への変更が行われた。Weekly Suvivalでドン勝を獲得したチームがWeekly Finalへ進出、Weekly Finalではドン勝の獲得数によりランキングが決定するため、ドン勝に最も重きを置くルールとなっている。

「WWCDルール」の詳細はこちら
https://www.pubg.com/ja/2021/04/01/2021-pubg-esports%e3%83%9d%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%88%e3%82%b7%e3%82%b9%e3%83%86%e3%83%a0%e3%81%ae%e5%a4%89%e6%9b%b4/

amonot選手:キルを取るための足の引っ張り合いはせず、どんどん安全地帯の中を目視して、中央や空いている場所を探して取りに行くムーブを心掛けようという話をしましたね。

——今回のルール変更は、かなり大きな変化だったと思いますが、チーム内では落ち着いた反応だったのでしょうか。

amonot選手:そうですね。SUPERルールでもWWCDルールでも、そもそもムーブの正解がわかっていない状況だったので。コーチと話し合って、ドン勝を取れるように成長していこうという感じで、あまり重くはとらえていなかったです。

Sylphia選手:主な戦略はコーチが立ててくれるので、そこに関して大きな心配はありませんでした。ただ、なにせ初めてのルールなので、試合中にも「ここはどういう判断が正解なんだろう」と、今までとは違うことを考えなければならないところが難しかったです。



——新ルールに対する海外チームの適応力などは、印象としていかがですか?

satou選手:従来のSUPERルールでも、順位ポイントを獲得するために、生き残ってドン勝を狙うというのが明確な目的としてあります。なので、このルールになってSUPERルールと動きが大きく変わるかというと、それは違っていて。おそらく多くの海外チームも、そういった考え方をしているのではないかと思います。

その中で、このルールになって変わったのは、無駄なファイトを避けることと、生かしておくべき敵と倒すべき敵を判断をしなければいけないこと。WWCDルールは、こうした判断が難しいところです。

このルールでもキルが不要になったわけではなく、自分たちがドン勝するために敵チームのポジションを奪ったり、取得領域を広げるためにスプリットを潰したりする必要があります。そういう意味で、ルールが変わっても根本の考えはそれほど変わっていないと思うので、もともと基本ができている韓国の上位チームはやはり強いです。

Pureboy選手:satouが言った通りですね。基本の動きで変わったのは、キルポイントを取るための動きではなく、ポジションを確保するための動きが優先されるところ。これは各チーム意識していると思いますが、それくらいしか変わっていないかなと思います。

コーチのアドバイスで、チームの成長にも手応え


——試合数や日数が増え、国際大会のスケジュールがハードになったと思いますが、その中で意識していることはありますか?

amonot選手:今出場しているPWSは、最長で週に5日出ることになります。実際にWeek4がそうだったのですが、体力的にもすごく疲れるし、精神的にもつらい部分がありました。そうした中でもパフォーマンスが落ちないように、やるべき時はちゃんと練習して、休む時はちゃんと休むように心掛けていましたね。

Sylphia選手:今うちのチームはリザーブがいないので、誰かひとりでも体調を崩してしまうと、試合に支障が出てしまいます。なので、体調管理に関しては、よりいっそう気をつけるようになりました。

satou選手:メンタル面で、ミスをしてしまった時に気にしすぎないように、自分の中で折り合いをつけることを心掛けています。

Pureboy選手:もともと精神的にあまり引きずるタイプではないのですが、最近はより重く受け止めないようにしています。PGI.Sの頃から過密スケジュールが続いていて、ゲーム以外でも体力が必要だと感じたので、最近は空いている時間で運動を始めました。


——なるほど。ゲーム以外のことで意識することが多いんですね。ちなみにGikenコーチの加入後、チームでの変化や国際大会での手応えとしてはいかがですか?

Pureboy選手:コーチが入ってすぐの頃は、いろんなことを一度に教えてもらって、頭がパンクしていた時もありました。コーチのおかげで明確に成長した部分としては、しっかりと情報を取って戦うことですね。やはり情報がない状態で戦うとギャンブルになってしまうので、どれだけ情報が大切なのかを教えてもらいました。

satou選手:ムーブの選択肢や引き出しを増やしてもらえたことが一番大きいですね。「この安全地帯なら、こう動く」とスムーズに判断できるようになって、かなり動きが楽になってきました。あとは細かい部分を修正していけば、もっとうまくなれると感じています。


Sylphia選手:いろんな視点からコーチが見てくれているので、今まで1試合で得られていた経験値が10だとしたら、同じような試合でも100くらい得られているような感覚があります。1試合ごとの成長度合いが、大きく変わりました。

amonot選手:以前までは意見が割れた時に、ヒートアップして言い合いになってしまうこともあったんですけど、コーチがいることで最終的に答えがひとつになるので、自分的にはそれが一番良かったところだと思います。

実際にPWSの試合でも、Weekly SuvivalのWeek4でドン勝を取った時は、手応えを感じましたね。ただ中で耐えるだけでなく、敵がやり合っているところに仕掛けて、自分たちの取得領域を増やしていく。こうした戦い方は頭ではわかっていても、なかなか実行できずにいたのですが、コーチのアドバイスのおかげで戦いやすくなりました。

今改めて感じる、世界で戦うために必要なこと


——直近の国際大会を経て、世界との差を感じる部分や、世界で戦うために必要だと感じていることを教えてください。

Pureboy選手:韓国選手と一緒にプレイする機会があるのですが、単純にフィジカルの強さと敵を見つける速さが違うなと感じます。しかも、その優れた個々の力を、うまくチームで生かしているんですよね。やはり生き残るには、チームファイトで勝たなければ次に繋げられないので、そこが一番の差かなと思います。

satou選手:大まかなムーブはコーチが考えてくれていますが、安全地帯が狭まってきた時や敵が近くなってきた時の、各々の判断能力がまだ海外チームに比べて劣っているかなと。そういった力は経験を積まないと身につかないので、もっと大会やスクリムの場数を踏んで養っていきたいと思っています。

Sylphia選手:ゲームの中にも、戦略や判断力などいろいろな要素がありますが、それ以外のところでも、ちゃんとプロとしてゲームに向き合う意識を、常に頭に入れていることが大事なのかなと思います。

amonot選手:チームプレイですね。僕らはひとりで戦ってしまう場面も多く、それで負けてしまうこともあるので。チームプレイを徹底できている海外チームはやはり強いですし、チームプレイのレベルを上げていかなければ、世界では勝てないと感じています。

——なるほど。やっぱり場数を踏むということは大切なんですね! それでは最後に、チームや個人として達成したい目標を教えてください。

Pureboy選手:僕はまだ国内大会で優勝した経験がないので、日本で1位を獲ることです。これまでPJSでは、シーズン優勝をしたことがなくて。いつも国際大会の出場権を2位で獲得していたので、ちゃんと国内で優勝したいなと思っています。

satou選手:直近ではPWSのGrand Finalで、PCS4への出場権を獲得できる順位に入ることが目標です。PCS4に出たらPJC Phase2には出られない(次回PWSへのシード権が付与される)ので、Pureboyの目標達成は遠のくかもしれないですが(笑)。

Sylphia選手:多くの選手が思っていることだとは思いますが、選手として有名になったり、海外大会でいい成績を残したり、そういう基本的なところをひとつひとつしっかりと叶えていきたいです。



amonot選手:世界大会でデカい賞金を獲ることですね。PGI.Sでトップチームが獲得したような(優勝チームの「Soniqs」は日本円で約1億4000万円の賞金を獲得)、億を超える規模の賞金をゲットしたいです。

——ENTER FORCE.36の皆さん、ありがとうございました!

———

2018年、eスポーツ元年を皮切りに、日本でも数多くのeスポーツチームが設立された。選手にとってはプロチームに所属できる間口が広がったというメリットがある反面、選手活動に恵まれた環境を探すということが難しくなったと感じる。

そんな中、「プレイヤーファースト」を理念としたENTER FORCE.36に移籍したPUBG部門の選手らは、国際大会というハードな世界で戦い抜くための最良な環境を手に入れたのではないだろうか。

世界と戦うために切磋琢磨しながら成長していく彼らを、eSports World編集部として見守っていきたい。


ENTER FORCE.36公式:
https://enterforce-36.com/

ENTER FORCE.36 Twitter:
https://twitter.com/ENTERFORCE_36

amonot選手 Twitter:
https://twitter.com/Blue_berrycso

satou選手 Twitter:
https://twitter.com/satoooooodd

Pureboy選手 Twitter:
https://twitter.com/pureboy0

Sylphia選手 Twitter:
https://twitter.com/Sy1phia

取材サポート:綾本ゆかり

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