【インタビュー】なぜ日本が『オーバーウォッチ』国際大会の舞台に?——Blizzard × GANYMEDEが語る、新たな運営モデルと驚異の「グッズ力」、まさかの「西ファラ」エピソードまで
- 日本初開催の『オーバーウォッチ』国際大会、その手応えとファンの熱量
- なぜ国際大会の舞台に日本が選ばれたのか?
- パートナーチームと共催する「新しいモデル」
- 公平性と熱狂の両立、パートナーシップが築く新たな「伝統」
- 飛び出した「西ファラ」の話題——互いが抱く深いゲーム愛
2026年5月22日(金)〜24日(日)にアリーナ立川立飛にて「Overwatch Champions Clash hosted by GANYMEDE(OWCC)」が開催された。日本で行われる初めての『オーバーウォッチ』国際大会となった今大会では、世界の強豪8チームが集い、ダブルエリミネーション形式で対戦した。
決勝では、圧倒的な力でアッパーブラケットを駆け抜けるCrazy Raccoonと、ローワーからZETA DIVISIONを下し、たどり着いたTwisted Mindsが対戦。互いに譲らぬフルマップの激戦の末、Crazy Raccoonが優勝を収めた。

本稿では、本大会のホストを担うGANYMEDE株式会社の岩田遼太郎氏と、Blizzard Entertainment(Blizzard)のFernando Escamilla Valdez氏へのインタビューをお届けする。
なぜBlizzardは日本を開催地に選び、GANYMEDEに運営を任せたのか、それに対しGANYMEDEが展開したホスピタリティとは何か。OWCCの裏側に迫る。

——まずは、今回の大会での役割を含めた自己紹介をお願いします。
Fernando:私は現在、『オーバーウォッチ』eスポーツのディレクターを務めています。Blizzardには8年以上在籍しており、以前は「Call of Duty League」や「Overwatch League」の運営を担当していました。
現在は「Overwatch Champions Series(OWCS)」を含めた『オーバーウォッチ』のeスポーツ全般を統括しています。今回の大会ではグローバルリードとして、運営・放送パートナーと連携しながら大会を運営しています。
岩田:私はGANYMEDEおよびZETA DIVISIONのプロデューサーとして、イベント全体の責任者を務めています。今回の大会では、私たちが競技チームを保有しているという立場上、競技運営そのものには深く入り込まず、プロモーションやマーチャンダイズ(グッズ)、会場設営など、つまるところ「日本で大会を成功させるため」のサポートに注力させていただいています。
——日本のオーディエンスや大会全体に対する感想をお聞かせください(本インタビューはイベント3日目に実施)。
Fernando:実は、Blizzardとして「日本でトーナメントを開催したい」という思いはずっと持っていました。構想自体は1年以上前の「DreamHack Dallas」*でZETA DIVISIONの皆さんとお会いしたときから始まり、昨年の「OWCC」杭州大会の後にも日本を訪問し、協議を重ねてきました。今回、実際にイベントを開催してみて、チケットも即完売し、ファンの皆さんの熱量やエネルギーを肌で感じることができ、大成功だったと確信しています。
岩田:日本で初めての『オーバーウォッチ』公認国際大会ということでプレッシャーもありましたが、「DreamHack Dallas」で初めてお話ししたときから、すごくオープンにアイデアを共有できました。ゲーム内でこんなコラボをしたい、こんなグッズを作りたいという提案に対して、お互いのバイブスが合って会話が弾んだんです。もし今後も機会があったら、オーディエンスの反応を見ながら、より大きな会場でより盛り上がれるようなイベントをFernandoたちと一緒に考えていけたらうれしいですね。
——なぜ、国際大会の舞台として日本が選ばれたのでしょうか?
Fernando:理由は大きくふたつあります。ひとつは、特定のパートナーチームと共にイベントを共催するという「新しいモデル」に挑戦することです。その最初のパートナーとして、イベントの知見を持つGANYMEDEが最適だと考えました。
ふたつ目は、ネオ東京をモチーフとした新マップ「ネオンジャンクション(Neon Junction)」が発表されるタイミングだったことです。プロモーション戦略として、ゲーム内の展開と現実のライブイベントを連動させ、ファンのエンゲージメントをより高めたいという狙いがありました。
——日本の市場やファンの特徴をどのようにとらえていますか?
Fernando:国によってファンダムは全く異なりますが、東アジアのなか、特に日本市場で印象的なのは「マーチャンダイズ(グッズ)の力」です。グッズが大好きで、デザインもよくこだわっているものが多くあります。今回もGANYMEDEは『オーバーウォッチ』のIPとeスポーツチームを掛け合わせ、ファンの心に刺さる素晴らしいグッズを作ってくれました。会場でもよく売れていて、私の帰りのスーツケースもグッズで一杯になってしまったほどです(笑)。
岩田:マーチャンダイズは私たちが特に意識した部分です。日本市場におけるプロフェッショナルとして、素晴らしいIPをお借りして、それを日本のファンダムやカルチャーにフィットする形にデザインし直す「翻訳作業」を大切にしました。Blizzardのゲーム開発の知見と、私たちが持つ日本のファンコミュニティへの理解がうまく融合した結果だと思います。Blizzard側が非常に柔軟で、「こんなグッズを作りたい」と提案した際も快諾してくれましたし、かなり自由に制作できました。

——パートナーチームと一緒に大会を作っていくという「新しいモデル」には、どのような狙いがあるのでしょうか?
Fernando:何より現地の市場やファンを一番理解しているのは彼らだからです。私たちはeスポーツの大会運営や放送に関する専門知識を持っていますが、各国の細かなファンの好みや配慮すべき点については、現地で日々活動しているZETA DIVISIONのようなチームが最も深く理解しています。チームにとっていいプロモーションの機会にもなりますよね。
私たちが「BlizzCon」や「Overwatch League」といった大規模イベントの経験を持っているとはいえ、日本という市場でZETA DIVISIONのような地域の知見を持つパートナーがいなければ、このような成功は収められなかったということです。
——大会運営をGANYMEDEに任せるにあたり、どのようなことを求めたのでしょうか?
Fernando:もちろん最も重要なのはイベントの成功ですが、GANYMEDEに期待したのは「日本のファンをいかに満足させるか」という点です。マーチャンダイズや会場での体験、クリエイティブなど、日本のファンに刺さる部分はお任せしました。逆に、選手たちが平等に競技を行える環境作りなど、大会のバックグラウンドに関わる部分は、引き続き私たちが担当しています。役割を分担する形ですね。
岩田:日本では馴染みが薄いかもしれませんが、eスポーツチームを運営する会社が、大会を共催するというのは、海外では「Call of Duty League」などで既に存在しています。我々もそういった大会を直接見てきました。なので、最初にこのお話をいただいたとき、求められているものがある程度想像できたんです。また、「伝統」の土壌ができ始めたようで、うれしかったんです。
——伝統の土壌?
岩田:「Call of Duty League」でいう「OpTic Texas」vs.「FaZe Vegas(旧Atlanta FaZe)」といった、ファンから注目を集める対戦カードです。『オーバーウォッチ』ではZETA DIVISIONとCrazy Raccoonの対戦が“因縁の対決”のようになりはじめているのは個人的にとてもうれしいです。
——なるほど。日本に軸足を持つふたつのチームが世界のトップレベルで戦っていることを含めて、今後の地域大会でも「ただでは終わらない一戦」としてコミュニティの記憶に残る対戦カードですね。
——GANYMEDEでは、エンタメ要素の強いイベント(League The k4sen(LTK)やLEGENDUSなど)も多く手がけています。今回のような競技大会を担うにあたって、意識した点はありますか?

岩田:オペレーションやグッズのアイデアなど、これまでの知見は間違いなく生かせています。ただ、今回は競技の世界大会なので、頭の切り替えが必要でした。これまではエンタメ7割、競技3割といったバランスでイベントを作ることもありましたが、今回は競技9割、エンタメ1割にすべきだと考えました。その限られた1割の余白の中で、ファンミーティングやグッズなど、いかにファンの皆さんに楽しんでいただけるかを考えるのが難しくもやりがいのある部分でした。
——ファンミーティングは欠かせませんよね。
岩田:トーナメント形式のなかで、どう組み込んでも試合前に実施する必要があります。ただ、アメフト、サッカー、野球などを見ても、なにかしらの方法で試合前にファンサービスを行っていますよね。
eスポーツ業界に携わってきた中で、競技の選手たちがファンとの交流を疎かにした結果、人気が落ちていったタイトルを数多く見てきました。なので、応援してもらう土壌を作るためにも、競技の公平性を保ちつつファンサービスを行う方法には非常に気を遣いました。
Fernando:エンタメと競技のバランスは長期的な成功の鍵です。最高の競技環境を提供しつつ、ファンが憧れる選手と交流できる機会を作らなければなりません。一方で、エンターテインメントを追求しすぎて競技性を損なうことは絶対に避けなければなりません。
その分、今回はショーマッチのような形で、ファンを楽しませるコンテンツを用意しました。ショーマッチには大会に進出したチーム以外のメンバーを選出し、選手の負担にならないよう配慮もしています。また、新マップ「ネオンジャンクション」のお披露目も行い、競技以外の面でもファンに楽しんでもらえるよう意識しました。
Blizzardでは選手のメディアトレーニングなども含め、競技とエンタメのバランスを保つための工夫は常に続けています。
——ZETA DIVISIONは、今回出場も果たした『オーバーウォッチ』の部門も保有しています。競技チームを保有するチームが大会をホストする上で、情報統制や公平性という点ではどのような工夫をされましたか?
岩田:SlackやDiscordなど、コミュニケーションツールのチャンネルを完全に切り分けました。大会のプロダクションや海外事業、グッズ制作のメンバーだけを集約し、eスポーツ部門の運営チームには一切情報が渡らないように徹底しました。
Fernando:私たちから見ても完璧に管理されており、懸念すら一切ありませんでしたね。とても感謝しています。
——『オーバーウォッチ』eスポーツ全体についてもいくつか質問させてください。「Overwatch League」が終了してからおよそ2年が経ちました。現在のコミュニティや競技シーンの変化をどう感じていますか?
Fernando:「Overwatch League」のクローズドな環境から、現在の「OWCS」のようなオープンなエコシステムへ移行したことは大きな変化です。オープンな環境が新しい才能やチームの参入を促す一方で、ZETA DIVISIONのようなパートナーチームが存在することで、安定したストーリーラインや競技性が担保されています。この両者の組み合わせが、『オーバーウォッチ』のeスポーツに新たな活気をもたらしていると感じています。
——2024年には「Esports World Cup(EWC)」が始まりましたが、『オーバーウォッチ』eスポーツのエコシステムにどのような影響を与えましたか?
Fernando:直接的な影響はそこまでありません。EWCは選手やチームにとって素晴らしい機会を提供するプラットフォームですが、『オーバーウォッチ』eスポーツとしてのグローバルな目標や基本的な構造に変化はありません。
——今年復活する「オーバーウォッチ ワールドカップ2026」について、どのような大会にしていきたいか、日本のファンへのメッセージをお願いします。
Fernando:Team Japanは熱狂的で、前回の2023年大会でも素晴らしいパートナーシップを築けました。日本市場の盛り上がりには非常に興味深く注目しています。予選を勝ち抜いたトップ16のチームには専用のジャージが作られるのですが、Team Japanのジャージデザインは本当に美しいです。オーガナイザーという立場上、ひとつの国に肩入れすることはしませんが、ぜひ予選を突破して、そのジャージを皆さんに披露してほしいと願っています(笑)。
——最後に読者へメッセージをお願いします。
岩田:そもそも『オーバーウォッチ』は、GANYMEDEにとって非常に特別なタイトルなんです。代表の西原がeスポーツに関わるきっかけになったのも、約10年前、当時『オーバーウォッチ』のアマチュアチームだった「Green Leaves」の選手たちに、ボランティアでクリエイティブをはじめ、スポンサー営業などさまざまな形でサポートをしたことでした。現在のGM(PangTong(深谷晃広)氏)も元『オーバーウォッチ』のプロ選手です。
『オーバーウォッチ』の10周年という記念すべきタイミングで、日本初の世界大会を共に開催できたことは、西原を含めGANYMEDEにとって非常に光栄で、とてもエモーショナルだと感じています。
Fernando:『オーバーウォッチ』がリリースされてからの10年間、本当に多くの人がこのゲームと深い繋がりを持ってきました。私自身も2014年の発表時からずっと愛し続けています。レッドブルのイベントで西原さんの名前をもじった飛行機を作った「西ファラ」のエピソードも聞きました(笑)。
同じようにこのゲームを深く愛するパートナーと、この特別な瞬間を共有できたことに心から感謝しています。

———
まさかインタビューの最後に「西ファラ」というワードが飛び出すとは予想外だ。「西ファラZ輔」の頭(?)部分は現在もZETA DIVISIONのオフィスに保存されており、訪れたFernando氏とも話が弾んだそう。
GANYMEDEは、ZETA DIVISIONとして世界トップクラスの部門だけでなく、ta1yoやMeLtonといったコミュニティで名のあるクリエイターを抱え、「LTK」や「LEGENDUS」などイベント運営の知見、多彩なグッズ展開など、今回の「OWCC」を共催するに相応しいパートナーであることが伝わってくる。
筆者個人としては、熱量の高いファンにも驚かされた。スーパープレーやミラー構成で会場から割れんばかりの歓声が巻き起こり、決勝戦の最終マップではCrazy Raccoonが有利を握るたびに悲鳴にすら近い声があがっていた。近年さまざまな場所で「熱狂」という言葉が使われ、その意味が軽視されている気がするが、今大会の会場は間違いなく「熱狂」と表現していいと確信できる。
国内屈指の人気チームである「ムラッシュゲーミング(MURASH GAMING)」が部門設立を発表するなど、タイトルそのものの人気も相まって『オーバーウォッチ』の勢いはまだまだポテンシャルを秘めているかもしれない。インタビュー冒頭で岩田氏が述べた通り、『オーバーウォッチ』コミュニティを巻き込んだ、「より大きな熱狂」が、いつか再び日本から生まれることを願う。
編集:いのかわゆう
決勝では、圧倒的な力でアッパーブラケットを駆け抜けるCrazy Raccoonと、ローワーからZETA DIVISIONを下し、たどり着いたTwisted Mindsが対戦。互いに譲らぬフルマップの激戦の末、Crazy Raccoonが優勝を収めた。

写真提供:GANYMEDE株式会社
本稿では、本大会のホストを担うGANYMEDE株式会社の岩田遼太郎氏と、Blizzard Entertainment(Blizzard)のFernando Escamilla Valdez氏へのインタビューをお届けする。
なぜBlizzardは日本を開催地に選び、GANYMEDEに運営を任せたのか、それに対しGANYMEDEが展開したホスピタリティとは何か。OWCCの裏側に迫る。

▲Fernando Escamilla Valdez氏(画像左)と岩田遼太郎氏(画像右)
日本初開催の『オーバーウォッチ』国際大会、その手応えとファンの熱量
——まずは、今回の大会での役割を含めた自己紹介をお願いします。
Fernando:私は現在、『オーバーウォッチ』eスポーツのディレクターを務めています。Blizzardには8年以上在籍しており、以前は「Call of Duty League」や「Overwatch League」の運営を担当していました。
現在は「Overwatch Champions Series(OWCS)」を含めた『オーバーウォッチ』のeスポーツ全般を統括しています。今回の大会ではグローバルリードとして、運営・放送パートナーと連携しながら大会を運営しています。
岩田:私はGANYMEDEおよびZETA DIVISIONのプロデューサーとして、イベント全体の責任者を務めています。今回の大会では、私たちが競技チームを保有しているという立場上、競技運営そのものには深く入り込まず、プロモーションやマーチャンダイズ(グッズ)、会場設営など、つまるところ「日本で大会を成功させるため」のサポートに注力させていただいています。
——日本のオーディエンスや大会全体に対する感想をお聞かせください(本インタビューはイベント3日目に実施)。
Fernando:実は、Blizzardとして「日本でトーナメントを開催したい」という思いはずっと持っていました。構想自体は1年以上前の「DreamHack Dallas」*でZETA DIVISIONの皆さんとお会いしたときから始まり、昨年の「OWCC」杭州大会の後にも日本を訪問し、協議を重ねてきました。今回、実際にイベントを開催してみて、チケットも即完売し、ファンの皆さんの熱量やエネルギーを肌で感じることができ、大成功だったと確信しています。
岩田:日本で初めての『オーバーウォッチ』公認国際大会ということでプレッシャーもありましたが、「DreamHack Dallas」で初めてお話ししたときから、すごくオープンにアイデアを共有できました。ゲーム内でこんなコラボをしたい、こんなグッズを作りたいという提案に対して、お互いのバイブスが合って会話が弾んだんです。もし今後も機会があったら、オーディエンスの反応を見ながら、より大きな会場でより盛り上がれるようなイベントをFernandoたちと一緒に考えていけたらうれしいですね。
※アメリカ・テキサス州ダラスで開催される、世界最大級のゲーム・eスポーツの総合イベント。
なぜ国際大会の舞台に日本が選ばれたのか?
——なぜ、国際大会の舞台として日本が選ばれたのでしょうか?
Fernando:理由は大きくふたつあります。ひとつは、特定のパートナーチームと共にイベントを共催するという「新しいモデル」に挑戦することです。その最初のパートナーとして、イベントの知見を持つGANYMEDEが最適だと考えました。
ふたつ目は、ネオ東京をモチーフとした新マップ「ネオンジャンクション(Neon Junction)」が発表されるタイミングだったことです。プロモーション戦略として、ゲーム内の展開と現実のライブイベントを連動させ、ファンのエンゲージメントをより高めたいという狙いがありました。
Neon Junctionお披露目!🇯🇵
— オーバーウォッチ (@jpPlayOverwatch) May 24, 2026
この新ハイブリッド・マップはシーズン3で登場します🌃#オーバーウォッチ pic.twitter.com/ha9rf48R78
▲秋葉原をモチーフにしたという「Neon Junction」はシーズン3で実装される
——日本の市場やファンの特徴をどのようにとらえていますか?
Fernando:国によってファンダムは全く異なりますが、東アジアのなか、特に日本市場で印象的なのは「マーチャンダイズ(グッズ)の力」です。グッズが大好きで、デザインもよくこだわっているものが多くあります。今回もGANYMEDEは『オーバーウォッチ』のIPとeスポーツチームを掛け合わせ、ファンの心に刺さる素晴らしいグッズを作ってくれました。会場でもよく売れていて、私の帰りのスーツケースもグッズで一杯になってしまったほどです(笑)。
岩田:マーチャンダイズは私たちが特に意識した部分です。日本市場におけるプロフェッショナルとして、素晴らしいIPをお借りして、それを日本のファンダムやカルチャーにフィットする形にデザインし直す「翻訳作業」を大切にしました。Blizzardのゲーム開発の知見と、私たちが持つ日本のファンコミュニティへの理解がうまく融合した結果だと思います。Blizzard側が非常に柔軟で、「こんなグッズを作りたい」と提案した際も快諾してくれましたし、かなり自由に制作できました。

▲ZETA DIVISIONの公式キャラクター「ZETAくん」。ぬいぐるみだけでなく、ポーチやデスクトップアプリなど、さまざまなグッズを展開している
パートナーチームと共催する「新しいモデル」
——パートナーチームと一緒に大会を作っていくという「新しいモデル」には、どのような狙いがあるのでしょうか?
Fernando:何より現地の市場やファンを一番理解しているのは彼らだからです。私たちはeスポーツの大会運営や放送に関する専門知識を持っていますが、各国の細かなファンの好みや配慮すべき点については、現地で日々活動しているZETA DIVISIONのようなチームが最も深く理解しています。チームにとっていいプロモーションの機会にもなりますよね。
私たちが「BlizzCon」や「Overwatch League」といった大規模イベントの経験を持っているとはいえ、日本という市場でZETA DIVISIONのような地域の知見を持つパートナーがいなければ、このような成功は収められなかったということです。
——大会運営をGANYMEDEに任せるにあたり、どのようなことを求めたのでしょうか?
Fernando:もちろん最も重要なのはイベントの成功ですが、GANYMEDEに期待したのは「日本のファンをいかに満足させるか」という点です。マーチャンダイズや会場での体験、クリエイティブなど、日本のファンに刺さる部分はお任せしました。逆に、選手たちが平等に競技を行える環境作りなど、大会のバックグラウンドに関わる部分は、引き続き私たちが担当しています。役割を分担する形ですね。
岩田:日本では馴染みが薄いかもしれませんが、eスポーツチームを運営する会社が、大会を共催するというのは、海外では「Call of Duty League」などで既に存在しています。我々もそういった大会を直接見てきました。なので、最初にこのお話をいただいたとき、求められているものがある程度想像できたんです。また、「伝統」の土壌ができ始めたようで、うれしかったんです。
——伝統の土壌?
岩田:「Call of Duty League」でいう「OpTic Texas」vs.「FaZe Vegas(旧Atlanta FaZe)」といった、ファンから注目を集める対戦カードです。『オーバーウォッチ』ではZETA DIVISIONとCrazy Raccoonの対戦が“因縁の対決”のようになりはじめているのは個人的にとてもうれしいです。
——なるほど。日本に軸足を持つふたつのチームが世界のトップレベルで戦っていることを含めて、今後の地域大会でも「ただでは終わらない一戦」としてコミュニティの記憶に残る対戦カードですね。
公平性と熱狂の両立、パートナーシップが築く新たな「伝統」
——GANYMEDEでは、エンタメ要素の強いイベント(League The k4sen(LTK)やLEGENDUSなど)も多く手がけています。今回のような競技大会を担うにあたって、意識した点はありますか?

▲「Red Bull LEGENDUS STREET FIGHTER 6 師弟杯 ~2025 冬 後楽園の陣~」の模様国内のeスポーツでも、ここまで多くのイベントを主催・運営しているチームはないだろう © 2018 - 2026,GANYMEDE, Inc. All rights reserved.
岩田:オペレーションやグッズのアイデアなど、これまでの知見は間違いなく生かせています。ただ、今回は競技の世界大会なので、頭の切り替えが必要でした。これまではエンタメ7割、競技3割といったバランスでイベントを作ることもありましたが、今回は競技9割、エンタメ1割にすべきだと考えました。その限られた1割の余白の中で、ファンミーティングやグッズなど、いかにファンの皆さんに楽しんでいただけるかを考えるのが難しくもやりがいのある部分でした。
——ファンミーティングは欠かせませんよね。
岩田:トーナメント形式のなかで、どう組み込んでも試合前に実施する必要があります。ただ、アメフト、サッカー、野球などを見ても、なにかしらの方法で試合前にファンサービスを行っていますよね。
eスポーツ業界に携わってきた中で、競技の選手たちがファンとの交流を疎かにした結果、人気が落ちていったタイトルを数多く見てきました。なので、応援してもらう土壌を作るためにも、競技の公平性を保ちつつファンサービスを行う方法には非常に気を遣いました。
Fernando:エンタメと競技のバランスは長期的な成功の鍵です。最高の競技環境を提供しつつ、ファンが憧れる選手と交流できる機会を作らなければなりません。一方で、エンターテインメントを追求しすぎて競技性を損なうことは絶対に避けなければなりません。
その分、今回はショーマッチのような形で、ファンを楽しませるコンテンツを用意しました。ショーマッチには大会に進出したチーム以外のメンバーを選出し、選手の負担にならないよう配慮もしています。また、新マップ「ネオンジャンクション」のお披露目も行い、競技以外の面でもファンに楽しんでもらえるよう意識しました。
Blizzardでは選手のメディアトレーニングなども含め、競技とエンタメのバランスを保つための工夫は常に続けています。
——ZETA DIVISIONは、今回出場も果たした『オーバーウォッチ』の部門も保有しています。競技チームを保有するチームが大会をホストする上で、情報統制や公平性という点ではどのような工夫をされましたか?
岩田:SlackやDiscordなど、コミュニケーションツールのチャンネルを完全に切り分けました。大会のプロダクションや海外事業、グッズ制作のメンバーだけを集約し、eスポーツ部門の運営チームには一切情報が渡らないように徹底しました。
Fernando:私たちから見ても完璧に管理されており、懸念すら一切ありませんでしたね。とても感謝しています。
飛び出した「西ファラ」の話題——互いが抱く深いゲーム愛
——『オーバーウォッチ』eスポーツ全体についてもいくつか質問させてください。「Overwatch League」が終了してからおよそ2年が経ちました。現在のコミュニティや競技シーンの変化をどう感じていますか?
Fernando:「Overwatch League」のクローズドな環境から、現在の「OWCS」のようなオープンなエコシステムへ移行したことは大きな変化です。オープンな環境が新しい才能やチームの参入を促す一方で、ZETA DIVISIONのようなパートナーチームが存在することで、安定したストーリーラインや競技性が担保されています。この両者の組み合わせが、『オーバーウォッチ』のeスポーツに新たな活気をもたらしていると感じています。
——2024年には「Esports World Cup(EWC)」が始まりましたが、『オーバーウォッチ』eスポーツのエコシステムにどのような影響を与えましたか?
Fernando:直接的な影響はそこまでありません。EWCは選手やチームにとって素晴らしい機会を提供するプラットフォームですが、『オーバーウォッチ』eスポーツとしてのグローバルな目標や基本的な構造に変化はありません。
——今年復活する「オーバーウォッチ ワールドカップ2026」について、どのような大会にしていきたいか、日本のファンへのメッセージをお願いします。
Fernando:Team Japanは熱狂的で、前回の2023年大会でも素晴らしいパートナーシップを築けました。日本市場の盛り上がりには非常に興味深く注目しています。予選を勝ち抜いたトップ16のチームには専用のジャージが作られるのですが、Team Japanのジャージデザインは本当に美しいです。オーガナイザーという立場上、ひとつの国に肩入れすることはしませんが、ぜひ予選を突破して、そのジャージを皆さんに披露してほしいと願っています(笑)。
🇯🇵オーバーウォッチ日本代表 2026
— オーバーウォッチ 日本代表 | Overwatch Japan National Team 🇯🇵 (@OWWCTeamJapan) May 9, 2026
🛡️ KSG @ksg1912
⚔️ Nico @nico_oq
⚔️ Qki @QKi25
⚔️ Rrmy @BiLaLeRoAv3
💊 epic @ow_epic
💊 FiNN @SEjFiNN
💊 Ydot @ow_ydot
👨💻ハワード / Pain / みずイロ
皆様、応援よろしくお願いします!#OWWCJP #OWWC2026 #CarryTheSun pic.twitter.com/4UCAT8Gp3n
▲2026年の日本代表チームでも、VARRELを中心に編成された。本戦出場をかけた予選も5月29日(金)より開催される
——最後に読者へメッセージをお願いします。
岩田:そもそも『オーバーウォッチ』は、GANYMEDEにとって非常に特別なタイトルなんです。代表の西原がeスポーツに関わるきっかけになったのも、約10年前、当時『オーバーウォッチ』のアマチュアチームだった「Green Leaves」の選手たちに、ボランティアでクリエイティブをはじめ、スポンサー営業などさまざまな形でサポートをしたことでした。現在のGM(PangTong(深谷晃広)氏)も元『オーバーウォッチ』のプロ選手です。
『オーバーウォッチ』の10周年という記念すべきタイミングで、日本初の世界大会を共に開催できたことは、西原を含めGANYMEDEにとって非常に光栄で、とてもエモーショナルだと感じています。
OVERWATCHのリリースから、今日でちょうど10年。自分が本格的にeスポーツ業界に入るきっかけになったゲームの世界大会を、その記念日に東京で、しかも自分たちがホストとして迎えることになるとは思ってもいませんでした。… pic.twitter.com/pTePGfPTdR
— Daisuke Nishihara // ZETA DIVISION (@TWOF0UR) May 24, 2026
Fernando:『オーバーウォッチ』がリリースされてからの10年間、本当に多くの人がこのゲームと深い繋がりを持ってきました。私自身も2014年の発表時からずっと愛し続けています。レッドブルのイベントで西原さんの名前をもじった飛行機を作った「西ファラ」のエピソードも聞きました(笑)。
同じようにこのゲームを深く愛するパートナーと、この特別な瞬間を共有できたことに心から感謝しています。

▲2024年5月に行われた「Red Bull Flight Day 2024」にて、ZETA DIVISIONは西原大輔CEOをもじった「西ファラZ輔」を空に飛ばした(?)。名前のファラは『オーバーウォッチ』のファラからとったもので、当時Blizzard Japanにも確認をとったうえで敢行していたという(Suguru Saito / Red Bull Content Pool)
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まさかインタビューの最後に「西ファラ」というワードが飛び出すとは予想外だ。「西ファラZ輔」の頭(?)部分は現在もZETA DIVISIONのオフィスに保存されており、訪れたFernando氏とも話が弾んだそう。
GANYMEDEは、ZETA DIVISIONとして世界トップクラスの部門だけでなく、ta1yoやMeLtonといったコミュニティで名のあるクリエイターを抱え、「LTK」や「LEGENDUS」などイベント運営の知見、多彩なグッズ展開など、今回の「OWCC」を共催するに相応しいパートナーであることが伝わってくる。
筆者個人としては、熱量の高いファンにも驚かされた。スーパープレーやミラー構成で会場から割れんばかりの歓声が巻き起こり、決勝戦の最終マップではCrazy Raccoonが有利を握るたびに悲鳴にすら近い声があがっていた。近年さまざまな場所で「熱狂」という言葉が使われ、その意味が軽視されている気がするが、今大会の会場は間違いなく「熱狂」と表現していいと確信できる。
国内屈指の人気チームである「ムラッシュゲーミング(MURASH GAMING)」が部門設立を発表するなど、タイトルそのものの人気も相まって『オーバーウォッチ』の勢いはまだまだポテンシャルを秘めているかもしれない。インタビュー冒頭で岩田氏が述べた通り、『オーバーウォッチ』コミュニティを巻き込んだ、「より大きな熱狂」が、いつか再び日本から生まれることを願う。
編集:いのかわゆう
【岡野朔太郎プロフィール】
「AUTOMATON」や「Game*Spark」に寄稿するフリーライター。「狭く深く深淵へ」をモットーにシューティングやアクションゲームを貪り食って生きている。オフラインイベントが大好きで、幼少期からゲームイベントに通っているが、いまだに武蔵野線と京葉線は間違える。
X:@sakunationninth
「AUTOMATON」や「Game*Spark」に寄稿するフリーライター。「狭く深く深淵へ」をモットーにシューティングやアクションゲームを貪り食って生きている。オフラインイベントが大好きで、幼少期からゲームイベントに通っているが、いまだに武蔵野線と京葉線は間違える。X:@sakunationninth
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