【Riot Games ONE 2024】「タイミーさんのおかげで勝てた」——IGL不在でスキマバイトの選手が参戦!? DetonatioN FocusMeインタビュー

2024.12.16 まいる
ライアットゲームズによる2024年最後の集大成ともいえる一大イベント「Riot Games ONE 2024」のオフラインイベントが12月14日(土)〜15日(日)に、Kアリーナ横浜で開催された。その中でも『VALORANT』の競技シーンにおいて、国内外の強豪4チームが対決する「PRO INVITATIONAL」が両日実施された。

▲左から🇯🇵DetonatioN FocusMe(DFM)、🇯🇵ZETA DIVISION(ZETA)、🇬🇧FNATIC(FNC)、🇦🇷Leviatán(LEV)

そんな出場チームの中から、今回は🇯🇵DetonatioN FocusMe(DFM)をピックアップ。2023年から始まったリーグ戦において、白星をほとんど上げることができず、チームにとっては長きにわたる苦難が続いていた。そんな中、今年の10月に新ロスターが発表され、Meiy(めい)を除く4名の選手が刷新。完全なる新体制となり、また「茨城忍者」ことArt(あーと)の選手復帰が話題となった。

そんなDFMは、このオフシーズンにおいて目まぐるしい進歩を見せている。特に11月~12月にかけて開催された中国のオフシーズン大会「VALORANT Radiant Asia Invitational」では、APAC・中国の強豪がひしめきあう中、準優勝という輝かしい成績をおさめた。

しかもこの大会では、なんとgyen(じえん)が体調不良で欠場。急遽SSeeS(せす)が代打として出場したものの、むしろSSeeSによるクラッチが目立つなど、サブメンバーながらに他チームを蹂躙した。その結果、SSeeS選手は、「スキマバイトとして大会に参加している」と冗談めかして言われるようになり、一部で「タイミーさん」などという呼び名がついた。

▲「VALORANT Radiant Asia Invitational」の決勝ではPaper Rexに敗れたものの、それ以外では全勝で勝ち進んだ。下馬評を大きく覆す快進撃だ(https://www.youtube.com/live/MVKFT4MXaKs?si=YDT-JFFAxv6iHQi6

一方、今回開催された「Riot Games ONE 2024」では、1日目にIGL(ゲーム内リーダー)であるArt選手が食中毒によりまさかの欠場。「タイミーさん」の再来が期待されるなど、チームにかなりの注目が集まる中、その期待に応えるかのように初戦のLEVを13-8で撃破。Day2に行われたFNC戦では10-13で、ZETA戦では4-13で敗れたものの、他のプロチーム相手に互角で渡り合う姿には、感動さえ覚えたものだ。


このArt不在の中どのように戦ったのか、そしてLEV相手になぜ勝利を収められたのか。今回はこのDay1のLEV戦直後に行われた、合同インタビューの様子をお届けしよう。

DetonatioN FocusMe 合同インタビュー


▲左からgyen(じえん)、Jinboong(じんぶー)、SSeeS(せす)、Akame(あかめ)、Meiy(めい)

▲インタビュー開始直前、ひとりだけ連れてこられたSSeeS選手。「ひとりは嫌だな」と言いながら記者の立つ壁際へと逃げて、会場を和ませた

——本日の試合の感想をお聞かせください。

gyen:一番最初の試合ということもあって結構盛り上がっていたと思うんですが、無事に勝ててよかったです。

Jinboong:強者に勝ててうれしいです。

SSeeS:今日体調不良ドッキリがあったんですけど、Meiyさんが頑張ってくれたおかげで勝てました。

Akame:体調不良で出れないって人がいたんですけど、タイミーさんがいばさん(Art)くらい喋ってくれて、マジでそのおかげで勝てたかなって思ってます。僕たちがやりたいプレーをして、うまくやって、勝てたと思います。ありがとうございます。

SSeeS:盛りすぎやろ(笑)

Meiy:僕はいつも通り——。まあ今日はIGL不在だったので、ランクみたいにたくさん喋りながらプレーしたら結構うまく行きましたね。

——gyen選手に質問です。先日開催された中国の大会で、gyen選手不在の中でDFMが2位という成績をおさめたわけですが、チームが勝ち進むにつれてプレッシャーは増えましたか?

gyen:入ったときからプレッシャーはずっとありました。それより自分のチームを応援するのは初めてだったので、普通にうれしいですね。プレッシャーはいつも通りあるので、これで別に変わるってことはないですね。


——今日はチームの注目度が上がった中での試合でしたが、これについてはいかがですか?

gyen:やっぱりオフラインの1試合目は緊張しますね。注目度が上がったのもあるし、会場もデカかったので。でもチームがいい感じで緩やかな雰囲気にしてくれたんで、めちゃくちゃ助かりました。

まさかのIGL不在——チームがとった作戦とは


——今回の試合において、チームのIGLは誰でしたか?

Meiy:割とみんなでやった感じですね。

——本日の試合(LEV戦)では、相手の動きを一度かわすような、動きを理解したプレーをしていたように感じました。なにか事前に分かっていたことや予想していたことはありましたか?

Meiy:いやLEVの試合情報がまったくなかったので、なにも情報のないままプレーしました。

——では逆に、なぜ今日のようなプレーができたのでしょうか。

Meiy:みんなの勝負感や直感がいい感じに働いた結果だと思いますね。

——本日お休みされているArt選手から、なにかアドバイスはありましたか?

Akame:俺、聞いたよ。

「バインドになっちゃったから、あと頑張って。この構成だったら多分勝てる。じゃ、俺は帰るね〜」

(一同笑い)

——エージェント構成はArt選手が決めたんですか?

Akame:Artが1回決めて、僕たちがちょっと調整して、この構成で決まりましたね。

——自信はありましたか?

Meiy:どうだろう?

Akame:半分半分?

Meiy:いや、ないね! ない方が……強いかも?

Akame:そうだよね?

SSeeS:まあ俺はMeiyがやってくれると信じてました。

Meiy:らしいです。俺は(自信が)なかったですけど、ある人もいたってことです。

SSeeS:うん、まあ……自信はなかった。

Meiy:ないんかい!

(一同笑い)


——Art選手が不在という形ですが、いないことで分かるArt選手のありがたみは何か実感しましたか?

Akame:俺はあるな。

Meiy:俺もある。

——どういったところでしょうか?

Akame:僕たちだけだと、例えばバインドの攻めで「Aがいいかな、Bがいいかな」って、僕たち5人だけだとどこへ行くのかが分からなくて……。もちろんできるラウンドもあったけど、いばにん(Art)なら全部のラウンドですぐに判断できるし。

あとタイミングとかアビリティーの合わせ方とかも分からなくて、サイトに入る前にも時間がかかった感じがします。いばにんのIGLの大事さがより分かる試合だったと思います。

Meiy:今回のLEV戦は、正直相手の傾向を読むとかではなくて、とにかく自分たちがやりたいことをぶつけて、その中でも僕たちだけで対応できる部分は対応したって感じです。

ただ、いばにんがいると、本当に2~3ラウンドで相手の傾向を掴んで「俺らがこうしたら、相手はこうする。相手がこうしたら、俺らはこうするべき」みたいな話がすぐに出てくるんです。

僕たちはそのいばにんができる部分ができなかったので、そういう点でいばにんさんいてほしいなと思います。

封印されたデュエリストの感覚


——DFMに入ってからはイニシエーターを使うことが多かったと思いますが、今回は久々のデュエリストでした。その感想をお聞かせください。

Akame:スパイクが僕の体にないのが一番うれしいです。自分の好きなプレーができるのも結構久しぶりで、封印されたデュエリストの感覚がでてきて面白かったです。

——スパイクを持つのは義務ですか?

Akame:前のチームでは他の人にあげてたから、その時は気持ちが分からなかったけど、今は分かります。今回はそれがないからちょっとうれしかったです。

——Meiy選手におうかがいします。今まで他のリージョンのプロチームとあまり戦う機会がなかったかと思いますが、戦う上でなにか学びたい点や吸収したい点などはありましたか?

Meiy:とりあえず、いつも通りのプレーをして、すごく強いチーム相手にそれが通用するかどうかは見てみたかったです。何かを学ぶっていうよりかは、とにかく勝ちたいなって。純粋に勝ちに行くつもりでやりました。

——先日の中国での大会、そして今日のLEV戦での勝利。順調にオフシーズンでは勝利を積み重ねているかと思いますが、現時点でのチームの感触はいかがでしょうか。

Meiy:僕に関しては前シーズンから負けが続いていたので、今のオフシーズンで勝ちの感覚が分かってきたというか。「負けるかもしれないな」ってマインドでやることがなくて、不利な状況でも「どうせ勝てるだろうな」というマインドでやれているので——。それが僕なりの心の変化だと思います。

——では最後に、来シーズンへの意気込みをお聞かせください。

gyen:とりあえずMastersに行けるよう、チーム全体で頑張っていきたいと思います。

Jinboong:来シーズンもこのまま勝てるように準備していきたいと思います。

SSeeS:応援……がんばります。

Akame:僕はプロゲーマーを始めたときから世界一になるのが夢だったんですけど、仲の良かったZmjjKK(かんかん)がChampionsで世界一になるのを見て「俺もそっち行けるように頑張る」と思いました。なので、Championsまで頑張ります。

Meiy:オフシーズンは、SSeeSが僕たちのチームに貢献してくれました。「Mastersの開催国を観光したい」って言ってたので、まずはMastersに進出して、SSeeSを観光に連れていけたらと思います。

SSeeS:あざす!

(一同笑い)

▲度重なる主要メンバーの欠場を救った「タイミーさん」ことSSeeS選手。観光に連れていってもらうことはできるのだろうか?

Meiy:Mastersを目指して頑張ります。

SSeeS:楽しみ。

——ありがとうございました!

———

今回のインタビューではArt選手本人は不在だったものの、チームメンバーからは彼の重要さがよく伝わってきた。広い視野で相手の傾向と味方の動きをよく理解したArtのIGLは、かつてJadeiteを日本2位にまで導いたという実績がある。だがそんな彼の不在でもアドリブ的に勝利を収められた他のメンバーについても、それはそれでかなりのポテンシャルを感じられて、2025年に向けてとても期待ができる。

オフシーズンということもあり、どのチームもまだまだ発展途上。とはいえ、DFMは国内でも屈指のプレーヤーをそろえることができたといえる。さまざまな挑戦を繰り返し、ようやく見え始めたこの光明を、DFMはそのまま掴み切ることができるのだろうか。そして、SSeeS選手はこのまま何事もなく、Masters開催地を観光することができるのだろうか。この躍進が続くことを願いたい。


Riot Games ONE:
Day1:
Day2:https://www.youtube.com/watch?v=ijtxGYD0lDQ


撮影:まいる
編集:いのかわゆう


【まいるプロフィール】
関西を拠点にする男性コスプレーヤー。イベントや大会によくコスプレ姿で出没する。2021年頃から『VALORANT』にハマり、競技シーンを追い続ける。現在の推しチームは「CREST GAMING」。

X:@mlunias(Photo by Subaru.F.)
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