【『LoL』DetonatioN FocusMe選手&コーチインタビュー】「正直Springは勝てないと思っていた」DFM完全勝利までの不安と葛藤
- 集団戦に強いSGと、マクロで押すDFM
- tol2選手「このチームで戦うためにはまだまだ成長が必要」
- Steal選手「チームがコミュニケーションを取れるように」
- Aria選手「LCKで学んだことをDFMで生かせた」
- Yutapon選手「リーグのレベルが上がりまだまだレベルアップできる」
- Harp選手「同じADCと2年以上組んだのは初めてだった」
- kazuコーチ「チームごとの特色、やりたいことが見えてきた」
『リーグ・オブ・レジェンド』(LoL)の日本リーグ「LJL 2023 Spring Split」の決勝戦が4月15日(土)に開催され、DetonatioN FocusMeがSengoku Gamingを3-0のストレートで下して優勝した。これでDFMは2021年春・夏、2022年春・夏から連続で、LJL史上最多となる5連覇を成し遂げた。
SGには今季、Reaperedコーチ、Loken選手が新たに加入し、トップのPaz選手も復帰を果たしたことで、Springを通して過去最強のチームと言われた。それはレギュラーシーズンを13勝1敗という首位で駆け抜けたことからも間違いないだろう。
一方、DFMは日本最強のトップレーナーであるEvi選手が海外に移籍したことで、アカデミーから抜擢されたルーキーのtol2選手を起用。ミッドにはAria選手が1年ぶりに復帰したものの、シーズン序盤はDFMらしからぬ姿にファンも不安を感じていたはずだ。
ただし、後半に向けて尻上がりにチームがまとまっていったDFMに対して、SGは2回目のDFM戦を落とし、プレイオフの準決勝ではシーズン4位のFENNELにリーチをかけられたところからの逆転勝利という不安な面ものぞかせた中での直接対決となった。
そんなSG vs DFMの決勝戦。DFMはバン&ピックから序盤の動きまで常にLoken選手のスノーボールを阻止する動きを徹底し、SGがやりたい試合をさせない。SG側としてはなんとか集団戦から活路を見出したいところだったが、DFMの鉄壁の視界管理とマクロにより、思うように動かせてもらえず2ゲーム目も落としてしまう。
そしてリーチのかかった3ゲーム目。SGはピックを変えることで試合の流れを変えたものの、覚醒したDFMの強さには届かず、DFMが3-0でSpring Split優勝と賞金1000万円を獲得。同時に5月から英国ロンドンで開催される「MSI 2023」への出場権を獲得した。
公式インタビューでKazuコーチが、「ベトナムのSaigon BuffaloとGAM Esportsが対SG戦に向けて協力してくれた」と感謝の言葉を口にしていたが、DFMとしてSGに対して相当の対策を練っていたという。世界を見据えながらも目の前の相手に全力を尽くし、一切の油断がなかったDFM。まさにLJL王者らしい戦いっぷりを見せてくれた。
ただ、選手たちは口々に「今シーズンはつらかった」とも語っており、DFMにとっては非常に難しいシーズンだったことも感じられた。彼らにとって「LJL 2023 Spring Split」はどんなシーズンだったのか、試合直後の興奮と疲れの中で短時間ではあったが、選手とKazuコーチにインタビューできたので、その内容をお届けしよう。
なお、配信の最後でも選手とコーチへの公式インタビューが行われている。そちらを先にご覧いただいた上でお読みいただければ幸いだ。
──まずは「LJL 2023 Spring Split」の優勝、おめでとうございます! 今シーズンは序盤からDFMとしては調子が良くなさそうなスタートとなりましたが、どんなシーズンだったか、おひとりずつお聞かせください。
tol2:今シーズン初めてDFMに参加して、いろいろ自分の力が足りない部分が多くて。最初の頃は特に大変だったんですけど、それでもこうして優勝することができてうれしいです。
──新人ではありますが、今までの実績やDFMというチームへの加入ということで、いろいろな声も耳に入ってきたと思います。そんな中でも、tol2選手はいつもすごく強気で「頑張ります」という姿勢が印象的でしたが、正直自分の中で「DFMきついな」とか「(みんなに)追いつけるのかな」ってくじけたことはなかったですか?
tol2:そうですね、正直練習でもめちゃめちゃつらい時とかもありました。それでも自分の目標はもう何年も前からずっと「(LoLを)うまくなること」で、「世界大会に行きたい」という気持ちがあって。だから、いまいる環境が自分が成長するには最高の環境だし、幸せなことだなって思ってやっていました。
──「DFMでやっていける」と思えた試合や瞬間はありましたか?
tol2:正直、まだですね、まだまだです。 このチームにふさわしい選手になるには、もっと自分自身の成長が必要だなって思っているので。
──今季、レギュラーシーズンの最後にトリスターナを出して、ほかの手を持ってるんじゃないかってちら見せしつつ、プレイオフも決勝戦も最終的にタンクでしたね。ご自身としてもっとキャリー系を使って活躍したいという思いはありますか?
tol2:キャリー系のチャンピオンは楽しいので好きなんですけど、それ以上に今の(メタ)チャンピオンを使って、正しいマクロでちゃんと試合を進められる方が大事だと思っています。
──公式インタビューではCeros選手からもかなりフィードバックを受けているとお話しされていましたが、入ったばっかりのtol2選手にとって、Ceros選手ってどんな存在でしたか?
tol2:正直DFMに入るまで、CerosさんがまだDFMにいるというのは知っていたんですけど、具体的にどういう活動をしているのかを全く知らなくて。選手引退した後にDFMにいる人っていうか、謎の人のイメージがあったんですよ。
で、最初の頃はCerosさんが僕の専属コーチというわけではなくて、その頃はかなり僕に対して優しかったんですけど、日が経つにつれてどんどん厳しくなっていきました。
──それは練習する時の話ですか? それとも練習が終わった後もですか?
tol2:いつも厳しいです。でも最近は優しいです。
──続いて、Steal選手は今季はいかがでしたか?
Steal:そうですね、(春の)試合が始まる頃にはいつもスロースターターと言われるし、僕たちもなんか満足できない試合が多いんですけど、レギュラーシーズンの後半とかプレイオフに入ってからはどんどん仕上がってきて、いつも通りの自然な感じになりましたね。
──確かにDFMはよくスロースターターと言われますが、Steal選手自身はそういうイメージはありますか? シーズンが進むごとに慣れていくというか……。
Steal:少し思う時もあるんです。やっぱり新シーズンって環境にも慣れていない中で、ピックとか僕たちの練習が足りていなかった部分とかもあると思います。
──そういう慣れていない状況下で、Evi選手が移籍したいまのDFMで一番チーム全体を見られるのは、性格的にもポジション的にもJGのSteal選手なのかなと思うのですが、Steal選手自身はチームでどういう立ち位置にいるのでしょうか?
Steal:難しい質問ですね。僕自身はちょっとよくわからないですけど、韓国人と日本人がちゃんとコミュニケーションが取れるように通訳に付くとかができているかなと思います。
──続いて、Aria選手、お願いします。
Aria:まずは、つらいことも多かったんですけれど、結果的に優勝できたので良かったです。
──具体的にはどんなことがつらかったですか?
Aria:いつもやっている練習の過程で、うまくいかなかったり、イライラしてしまうこともあったんです。でも、シーズン最初の頃に比べたらすごく良くなっていったんじゃないかなって思っています。
──特にAria選手は1年ぶりにDFMに帰ってきて、見事な活躍をされました。その1つ前のLCK時代を経て、自分自身で成長できたと感じるところとかはありますか?
Aria:LCKの時に学んだことはすごくありました。ただ、LCKのSpringの時はちょっと自信をなくしてしまって、Summerになって自信が戻ってきて、正常にゲームができるようになった時期があったんです。
その時期に学んだこととかで、DFMに教えられる知識もありましたね。あとは、リスクを負ってゲームをする、ということができるように変わりましたね。
──では、Yutapon選手、お願いします。
Yutapon:今シーズンは特に最初の方で大変なことが多くて、久々に「しんどいな、このシーズン」って思いました。去年は割とシーズン中から不安なくやってこれましたし。なんなら春はプレイオフも厳しいかなって思っていたんです。でもみんなすごく頑張って、ファイナルまでのチームの成長の度合いが良かったですね。
──スタッツを見ると、ADCではYutapon選手はダントツだったんですが、しんどかったのはチームワークの部分ですか?
Yutapon:そうですね、練習からうまくいかないことも多かったですし、実際に序盤もSHGとかSGとか、強いチームには勝てなくて大変でした。
──キャスターからも「LJL」で15タイトル(春・夏の優勝など)という話がありましたね。
Yutapon:どうなんですかね……。なんか15回勝ったというのも「そんなにやってるかなぁ」って感じで、毎年一生懸命やっていて、前のこととかは忘れちゃってますね。
──でも、今年は「LJL」自体のレベルもすごく上がった気がします。
Yutapon:うまい選手が敵にも味方にも入ってきて、そこから学ぶこともいろいろありました。リーグ自体のレベルが上がるってことは自分の勉強の機会も増えますし、レベルアップはこれからもできるんじゃないかなとは思います。
──今季はEvi選手が離脱されましたが、Steal選手とYutapon選手以外はほぼ毎年メンバーが入れ替わっています。DFMのADCとして長年担当されるプレッシャーとかはないですか?
Yutapon:いろんな考え方があるかもしれないんですけど、僕個人のADCに対する考えって、与えられた役割をこなすだけって感じなんですよ。チーム自体が(戦える)土俵を作ってくれるので、そこでやるべきことをやる。ミッドのAriaがキャリーとしてすごく信頼できますし、やるべきことをやればだいたい勝てるっていう気持ちの方が強くありますね。
──Evi選手が抜けたこともそうですが、アカデミーからステップアップした選手を育てた経験って、Ace選手がいた時期くらいでDFMとしてはあまりなかったように記憶しています。人を育てることを「LJL」の舞台でやることの難しさもありましたか?
Yutapon:僕だけじゃなくて、チームのスタッフももちろん経験のないことだったので、かなり心配もありましたね。ちょっと深く掘ると、やっぱり(tol2選手以外の)僕たち他の4人って一緒にチームでやっている時間も結構ありましたし、そこに新しく入るとなると、同じラインじゃないんですよね。結構プレイがずれちゃったり、いろいろ大変なことがあったりはしました。
──そんなYutapon選手も26歳で、世界で見てもベテランですし、日本最強のADCですが、Evi選手の移籍を受けてその先のことって考えたりもされるんですか?
Yutapon:最近はすごく考えちゃいますね、全然ビジョンはないですけど。特にADCとかキャリーって年齢的に厳しいという話もあるので。自分的には正直そんな感じはしないし「うまくなりたい」という気持ちもあるので、まだわからないですけどね。
──公式インタビューの最後に「もっと『LoL』を見てほしい。ファンが増えてほしい」っておっしゃっていたのには、正直少し驚きました。
Yutapon:僕はゲームを見るのがそんなに好きじゃないんですね、自分でやりたい派なので。ただ、最近ストリーマーさんが『LoL』を配信してくれることが多くて、そのおかげで自分の個人配信も見てくれる人が増えましたし、『LoL』の注目度もある程度上がった感じがしています。
だから、ルールとかは難しいですけど、さわらないにしてもこの機会に見てくれる人が増えたらいいなっていう気持ちはすごいありますね。
──では、これから『LoL』を始めたい人に「ADCのここが面白い!」って言うとしたらどんなところですか?
Yutapon:ADC、何が面白いんすかね(笑)。
やっぱり敵を一番倒せるロールなんですよね。しかも倒す時って一方的なので、一方的に敵を蹂躙したい人におすすめです。逆にやられる時も一方的なんでその時はストレス溜まりますけどね(笑)。
──続いて、Harp選手、お願いします。
Harp:僕も今シーズンが始まった時は正直心配で、ちょっと無理なんじゃないかって思っていました。でも、後半まで耐えていい結果に結びついたんじゃないかと思っています。
──Harp選手のスタッツを見ると、シーズンを通して本当にデッド回数が少なかったのですが、なぜそんなに死なずにサポートができるんでしょうか?
Harp:結構自分ではやられたと思っているんですけど……単純に死ぬ時は死ぬし、死なない時は死なないし、結構そういう感じです。
──今日の試合に関して言うと、ゲーム2でブリッツクランクが大活躍していましたが、過去の試合を調べてみたら、LCK時代も含めて公式戦で使った記録が多分1回もないんです。そもそもブリッツってお得意なんですか?
Harp:正直ブリッツは好きじゃないです。今まで1回も使ってなかったし、でも、今日はなんか行ける感じがして。結局めちゃめちゃ良かったですね。
──スレッシュに対する対抗として用意していた?
Harp:そうですね。スレッシュがきたらブリッツという考えはありました。
──そんなHarp選手もDFMで2年目ですが、正直「LJL」の実力について、当初思っていたことと実際に入ってきてからとでどんな印象がありました?
Harp:正直に話すと、元々「LCK」にいたので「LJL」とはやっぱり結構レベル差はあると思いました。だから、自分が入ったら絶対に優勝しなきゃいけないっていうプレッシャーもありましたし、自分ならやれるはずっていう自信も持っていたんです。
でも、実際に「LJL」でRJとの試合(2022年Springの2回目の試合)で負けたんです。それで、「やっぱり油断しちゃいけない」とそこから気合を入れ直した記憶があります。
──個人の成長という意味では、「LCK」よりも「LJL」の方がうまく成長できないんじゃないかって勝手に思ってしまうんですが、どうですか?
Harp:最初に来た時は若かったこともあって、「LJLで成長できるかなぁ」という気持ちはあるにはありました。ただ、今はまったく違うと思っていて、どんなリーグでもどんなチームと戦うか、どんなメンバーで戦うかが一番重要だと思っています。去年「うまく成長できないかもしれない」と思っていた自分に対しては、すごく間違っていると感じています。結局マインドが重要ですね。
──実際、昨年も強かったですが、今年は特にHarp選手の活躍は目覚ましいですね。
Harp:実はこれまで、2年間同じADCと組んだ経験がなかったんです。なので、Yutapon選手とは今はスクリムでもあまり話をしなくても、お互いに求めていることがわかるし、万が一通じ合えなくてもすぐフィードバックすれば済みます。おかげで自分のプレイにも集中できるので、その部分でもすごく成長できたんじゃないかなと思っています。
──ちなみに余談ですが、なぜわずか2年でそんなに日本語がうまくなれたんですか? 彼女ができたんじゃないかという噂がありますが(笑)。
Harp:やっぱりSteal選手の存在が大きくて、生活面、ゲーム面、両方の部分ですごく助けてくれました。ぶらぶら散歩しながら日本のこととかを話して学んだり。やっぱり現地の言語を駆使できる韓国人がいるところが、自分の成長にも大きかったんじゃないかなって思っています。
──では、彼女はいないってことですね?
Harp:そうですね、欲しいですね(笑)。
──kazuコーチには、今期はSGとSHGが言ってみればライバルとして「LJL」の中で強くなってきたと思いますが、 コーチの立場から今の「LJL」のリーグとしての強さについてどう感じますか?
Kazu:全体的にリーグとしてのレベルはもちろん年々上がっていると思いますし、今シーズンは新しい選手、新しいコーチ陣が「LJL」に参入してきて、また新たにレベルアップしていると思います。チームごとの色がより出てきて、それぞれにやりたいゲームが見えたシーズンでしたね。
──その中でも、やっぱりDFMが最も優れていると自信を持って言える部分ってなんなんでしょうか?
Kazu:チーム力と優勝経験が、プレイオフで一番差が出るところかなと思います。他のチームは「打倒DFM」という目標があると思うんですけど、僕たちは常に目の前の相手としっかり戦って勝つことだけに集中できる。結果として僕たちが優勝できているってことなので、そこは他のチームとは少し違うかもしれないですね。
──最後にYutapon選手に、「MSI 2023」に向けた新しいDFMとしての目標をお聞かせください。
Yutapon:「MSI」って敵もチームも「Worlds」とは違って、本当に全部最強クラスの相手が来るので、まずは初戦に勝つことですね。Bo5でも初戦に勝つと結構勢いというか流れもつかめますし。トーナメントも1戦目に勝つのが大事かなって思うので。
──「LJL」では最強のDFMに、いま必要なことってなんでしょう?
Yutapon:やっぱり大会となると試合数が少ないですし、今のメタや相手チームの得意なことの分析とかの準備をしっかりできたらと思います。
レギュラーシーズンのBo3化による対戦スケジュールの変化や、ベテランの離脱、ルーキーの加入といった要素がDFM内でも大きな変化だったようだ。それにも耐えられたのは、コーチ陣も含めたチームとしての層の厚さと、長年ともに戦ってきた選手ひとりひとりの力があればこそだろう。
最強メンバーを集めても必ずしも強いチームにはなれないことは、『LoL』というゲームの面白さと奥深さであり、それはそのまま『LoL』におけるチームワークの重要性の裏返しでもある。同じメンバーで戦い続けることで得られる強さは、DFMが証明してくれている。
それでも、来たる「MSI 2023」でのDFMは、グループステージを突破するという目標に向けたチャレンジャー。「LJL」史上最も激戦となった春を経て仕上がったDFMの活躍に期待したい。
tol2選手
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Steal選手
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集団戦に強いSGと、マクロで押すDFM
SGには今季、Reaperedコーチ、Loken選手が新たに加入し、トップのPaz選手も復帰を果たしたことで、Springを通して過去最強のチームと言われた。それはレギュラーシーズンを13勝1敗という首位で駆け抜けたことからも間違いないだろう。
一方、DFMは日本最強のトップレーナーであるEvi選手が海外に移籍したことで、アカデミーから抜擢されたルーキーのtol2選手を起用。ミッドにはAria選手が1年ぶりに復帰したものの、シーズン序盤はDFMらしからぬ姿にファンも不安を感じていたはずだ。
ただし、後半に向けて尻上がりにチームがまとまっていったDFMに対して、SGは2回目のDFM戦を落とし、プレイオフの準決勝ではシーズン4位のFENNELにリーチをかけられたところからの逆転勝利という不安な面ものぞかせた中での直接対決となった。
そんなSG vs DFMの決勝戦。DFMはバン&ピックから序盤の動きまで常にLoken選手のスノーボールを阻止する動きを徹底し、SGがやりたい試合をさせない。SG側としてはなんとか集団戦から活路を見出したいところだったが、DFMの鉄壁の視界管理とマクロにより、思うように動かせてもらえず2ゲーム目も落としてしまう。
そしてリーチのかかった3ゲーム目。SGはピックを変えることで試合の流れを変えたものの、覚醒したDFMの強さには届かず、DFMが3-0でSpring Split優勝と賞金1000万円を獲得。同時に5月から英国ロンドンで開催される「MSI 2023」への出場権を獲得した。
公式インタビューでKazuコーチが、「ベトナムのSaigon BuffaloとGAM Esportsが対SG戦に向けて協力してくれた」と感謝の言葉を口にしていたが、DFMとしてSGに対して相当の対策を練っていたという。世界を見据えながらも目の前の相手に全力を尽くし、一切の油断がなかったDFM。まさにLJL王者らしい戦いっぷりを見せてくれた。
ただ、選手たちは口々に「今シーズンはつらかった」とも語っており、DFMにとっては非常に難しいシーズンだったことも感じられた。彼らにとって「LJL 2023 Spring Split」はどんなシーズンだったのか、試合直後の興奮と疲れの中で短時間ではあったが、選手とKazuコーチにインタビューできたので、その内容をお届けしよう。
なお、配信の最後でも選手とコーチへの公式インタビューが行われている。そちらを先にご覧いただいた上でお読みいただければ幸いだ。
tol2選手「このチームで戦うためにはまだまだ成長が必要」
──まずは「LJL 2023 Spring Split」の優勝、おめでとうございます! 今シーズンは序盤からDFMとしては調子が良くなさそうなスタートとなりましたが、どんなシーズンだったか、おひとりずつお聞かせください。
tol2:今シーズン初めてDFMに参加して、いろいろ自分の力が足りない部分が多くて。最初の頃は特に大変だったんですけど、それでもこうして優勝することができてうれしいです。
──新人ではありますが、今までの実績やDFMというチームへの加入ということで、いろいろな声も耳に入ってきたと思います。そんな中でも、tol2選手はいつもすごく強気で「頑張ります」という姿勢が印象的でしたが、正直自分の中で「DFMきついな」とか「(みんなに)追いつけるのかな」ってくじけたことはなかったですか?
tol2:そうですね、正直練習でもめちゃめちゃつらい時とかもありました。それでも自分の目標はもう何年も前からずっと「(LoLを)うまくなること」で、「世界大会に行きたい」という気持ちがあって。だから、いまいる環境が自分が成長するには最高の環境だし、幸せなことだなって思ってやっていました。
──「DFMでやっていける」と思えた試合や瞬間はありましたか?
tol2:正直、まだですね、まだまだです。 このチームにふさわしい選手になるには、もっと自分自身の成長が必要だなって思っているので。
──今季、レギュラーシーズンの最後にトリスターナを出して、ほかの手を持ってるんじゃないかってちら見せしつつ、プレイオフも決勝戦も最終的にタンクでしたね。ご自身としてもっとキャリー系を使って活躍したいという思いはありますか?
tol2:キャリー系のチャンピオンは楽しいので好きなんですけど、それ以上に今の(メタ)チャンピオンを使って、正しいマクロでちゃんと試合を進められる方が大事だと思っています。
──公式インタビューではCeros選手からもかなりフィードバックを受けているとお話しされていましたが、入ったばっかりのtol2選手にとって、Ceros選手ってどんな存在でしたか?
tol2:正直DFMに入るまで、CerosさんがまだDFMにいるというのは知っていたんですけど、具体的にどういう活動をしているのかを全く知らなくて。選手引退した後にDFMにいる人っていうか、謎の人のイメージがあったんですよ。
で、最初の頃はCerosさんが僕の専属コーチというわけではなくて、その頃はかなり僕に対して優しかったんですけど、日が経つにつれてどんどん厳しくなっていきました。
──それは練習する時の話ですか? それとも練習が終わった後もですか?
tol2:いつも厳しいです。でも最近は優しいです。
Steal選手「チームがコミュニケーションを取れるように」
──続いて、Steal選手は今季はいかがでしたか?
Steal:そうですね、(春の)試合が始まる頃にはいつもスロースターターと言われるし、僕たちもなんか満足できない試合が多いんですけど、レギュラーシーズンの後半とかプレイオフに入ってからはどんどん仕上がってきて、いつも通りの自然な感じになりましたね。
──確かにDFMはよくスロースターターと言われますが、Steal選手自身はそういうイメージはありますか? シーズンが進むごとに慣れていくというか……。
Steal:少し思う時もあるんです。やっぱり新シーズンって環境にも慣れていない中で、ピックとか僕たちの練習が足りていなかった部分とかもあると思います。
──そういう慣れていない状況下で、Evi選手が移籍したいまのDFMで一番チーム全体を見られるのは、性格的にもポジション的にもJGのSteal選手なのかなと思うのですが、Steal選手自身はチームでどういう立ち位置にいるのでしょうか?
Steal:難しい質問ですね。僕自身はちょっとよくわからないですけど、韓国人と日本人がちゃんとコミュニケーションが取れるように通訳に付くとかができているかなと思います。
Aria選手「LCKで学んだことをDFMで生かせた」
──続いて、Aria選手、お願いします。
Aria:まずは、つらいことも多かったんですけれど、結果的に優勝できたので良かったです。
──具体的にはどんなことがつらかったですか?
Aria:いつもやっている練習の過程で、うまくいかなかったり、イライラしてしまうこともあったんです。でも、シーズン最初の頃に比べたらすごく良くなっていったんじゃないかなって思っています。
──特にAria選手は1年ぶりにDFMに帰ってきて、見事な活躍をされました。その1つ前のLCK時代を経て、自分自身で成長できたと感じるところとかはありますか?
Aria:LCKの時に学んだことはすごくありました。ただ、LCKのSpringの時はちょっと自信をなくしてしまって、Summerになって自信が戻ってきて、正常にゲームができるようになった時期があったんです。
その時期に学んだこととかで、DFMに教えられる知識もありましたね。あとは、リスクを負ってゲームをする、ということができるように変わりましたね。
Yutapon選手「リーグのレベルが上がりまだまだレベルアップできる」
──では、Yutapon選手、お願いします。
Yutapon:今シーズンは特に最初の方で大変なことが多くて、久々に「しんどいな、このシーズン」って思いました。去年は割とシーズン中から不安なくやってこれましたし。なんなら春はプレイオフも厳しいかなって思っていたんです。でもみんなすごく頑張って、ファイナルまでのチームの成長の度合いが良かったですね。
──スタッツを見ると、ADCではYutapon選手はダントツだったんですが、しんどかったのはチームワークの部分ですか?
Yutapon:そうですね、練習からうまくいかないことも多かったですし、実際に序盤もSHGとかSGとか、強いチームには勝てなくて大変でした。
──キャスターからも「LJL」で15タイトル(春・夏の優勝など)という話がありましたね。
Yutapon:どうなんですかね……。なんか15回勝ったというのも「そんなにやってるかなぁ」って感じで、毎年一生懸命やっていて、前のこととかは忘れちゃってますね。
──でも、今年は「LJL」自体のレベルもすごく上がった気がします。
Yutapon:うまい選手が敵にも味方にも入ってきて、そこから学ぶこともいろいろありました。リーグ自体のレベルが上がるってことは自分の勉強の機会も増えますし、レベルアップはこれからもできるんじゃないかなとは思います。
──今季はEvi選手が離脱されましたが、Steal選手とYutapon選手以外はほぼ毎年メンバーが入れ替わっています。DFMのADCとして長年担当されるプレッシャーとかはないですか?
Yutapon:いろんな考え方があるかもしれないんですけど、僕個人のADCに対する考えって、与えられた役割をこなすだけって感じなんですよ。チーム自体が(戦える)土俵を作ってくれるので、そこでやるべきことをやる。ミッドのAriaがキャリーとしてすごく信頼できますし、やるべきことをやればだいたい勝てるっていう気持ちの方が強くありますね。
──Evi選手が抜けたこともそうですが、アカデミーからステップアップした選手を育てた経験って、Ace選手がいた時期くらいでDFMとしてはあまりなかったように記憶しています。人を育てることを「LJL」の舞台でやることの難しさもありましたか?
Yutapon:僕だけじゃなくて、チームのスタッフももちろん経験のないことだったので、かなり心配もありましたね。ちょっと深く掘ると、やっぱり(tol2選手以外の)僕たち他の4人って一緒にチームでやっている時間も結構ありましたし、そこに新しく入るとなると、同じラインじゃないんですよね。結構プレイがずれちゃったり、いろいろ大変なことがあったりはしました。
──そんなYutapon選手も26歳で、世界で見てもベテランですし、日本最強のADCですが、Evi選手の移籍を受けてその先のことって考えたりもされるんですか?
Yutapon:最近はすごく考えちゃいますね、全然ビジョンはないですけど。特にADCとかキャリーって年齢的に厳しいという話もあるので。自分的には正直そんな感じはしないし「うまくなりたい」という気持ちもあるので、まだわからないですけどね。
──公式インタビューの最後に「もっと『LoL』を見てほしい。ファンが増えてほしい」っておっしゃっていたのには、正直少し驚きました。
Yutapon:僕はゲームを見るのがそんなに好きじゃないんですね、自分でやりたい派なので。ただ、最近ストリーマーさんが『LoL』を配信してくれることが多くて、そのおかげで自分の個人配信も見てくれる人が増えましたし、『LoL』の注目度もある程度上がった感じがしています。
だから、ルールとかは難しいですけど、さわらないにしてもこの機会に見てくれる人が増えたらいいなっていう気持ちはすごいありますね。
──では、これから『LoL』を始めたい人に「ADCのここが面白い!」って言うとしたらどんなところですか?
Yutapon:ADC、何が面白いんすかね(笑)。
やっぱり敵を一番倒せるロールなんですよね。しかも倒す時って一方的なので、一方的に敵を蹂躙したい人におすすめです。逆にやられる時も一方的なんでその時はストレス溜まりますけどね(笑)。
Harp選手「同じADCと2年以上組んだのは初めてだった」
──続いて、Harp選手、お願いします。
Harp:僕も今シーズンが始まった時は正直心配で、ちょっと無理なんじゃないかって思っていました。でも、後半まで耐えていい結果に結びついたんじゃないかと思っています。
──Harp選手のスタッツを見ると、シーズンを通して本当にデッド回数が少なかったのですが、なぜそんなに死なずにサポートができるんでしょうか?
Harp:結構自分ではやられたと思っているんですけど……単純に死ぬ時は死ぬし、死なない時は死なないし、結構そういう感じです。
──今日の試合に関して言うと、ゲーム2でブリッツクランクが大活躍していましたが、過去の試合を調べてみたら、LCK時代も含めて公式戦で使った記録が多分1回もないんです。そもそもブリッツってお得意なんですか?
Harp:正直ブリッツは好きじゃないです。今まで1回も使ってなかったし、でも、今日はなんか行ける感じがして。結局めちゃめちゃ良かったですね。
──スレッシュに対する対抗として用意していた?
Harp:そうですね。スレッシュがきたらブリッツという考えはありました。
──そんなHarp選手もDFMで2年目ですが、正直「LJL」の実力について、当初思っていたことと実際に入ってきてからとでどんな印象がありました?
Harp:正直に話すと、元々「LCK」にいたので「LJL」とはやっぱり結構レベル差はあると思いました。だから、自分が入ったら絶対に優勝しなきゃいけないっていうプレッシャーもありましたし、自分ならやれるはずっていう自信も持っていたんです。
でも、実際に「LJL」でRJとの試合(2022年Springの2回目の試合)で負けたんです。それで、「やっぱり油断しちゃいけない」とそこから気合を入れ直した記憶があります。
──個人の成長という意味では、「LCK」よりも「LJL」の方がうまく成長できないんじゃないかって勝手に思ってしまうんですが、どうですか?
Harp:最初に来た時は若かったこともあって、「LJLで成長できるかなぁ」という気持ちはあるにはありました。ただ、今はまったく違うと思っていて、どんなリーグでもどんなチームと戦うか、どんなメンバーで戦うかが一番重要だと思っています。去年「うまく成長できないかもしれない」と思っていた自分に対しては、すごく間違っていると感じています。結局マインドが重要ですね。
──実際、昨年も強かったですが、今年は特にHarp選手の活躍は目覚ましいですね。
Harp:実はこれまで、2年間同じADCと組んだ経験がなかったんです。なので、Yutapon選手とは今はスクリムでもあまり話をしなくても、お互いに求めていることがわかるし、万が一通じ合えなくてもすぐフィードバックすれば済みます。おかげで自分のプレイにも集中できるので、その部分でもすごく成長できたんじゃないかなと思っています。
──ちなみに余談ですが、なぜわずか2年でそんなに日本語がうまくなれたんですか? 彼女ができたんじゃないかという噂がありますが(笑)。
Harp:やっぱりSteal選手の存在が大きくて、生活面、ゲーム面、両方の部分ですごく助けてくれました。ぶらぶら散歩しながら日本のこととかを話して学んだり。やっぱり現地の言語を駆使できる韓国人がいるところが、自分の成長にも大きかったんじゃないかなって思っています。
──では、彼女はいないってことですね?
Harp:そうですね、欲しいですね(笑)。
kazuコーチ「チームごとの特色、やりたいことが見えてきた」
──kazuコーチには、今期はSGとSHGが言ってみればライバルとして「LJL」の中で強くなってきたと思いますが、 コーチの立場から今の「LJL」のリーグとしての強さについてどう感じますか?
Kazu:全体的にリーグとしてのレベルはもちろん年々上がっていると思いますし、今シーズンは新しい選手、新しいコーチ陣が「LJL」に参入してきて、また新たにレベルアップしていると思います。チームごとの色がより出てきて、それぞれにやりたいゲームが見えたシーズンでしたね。
──その中でも、やっぱりDFMが最も優れていると自信を持って言える部分ってなんなんでしょうか?
Kazu:チーム力と優勝経験が、プレイオフで一番差が出るところかなと思います。他のチームは「打倒DFM」という目標があると思うんですけど、僕たちは常に目の前の相手としっかり戦って勝つことだけに集中できる。結果として僕たちが優勝できているってことなので、そこは他のチームとは少し違うかもしれないですね。
──最後にYutapon選手に、「MSI 2023」に向けた新しいDFMとしての目標をお聞かせください。
Yutapon:「MSI」って敵もチームも「Worlds」とは違って、本当に全部最強クラスの相手が来るので、まずは初戦に勝つことですね。Bo5でも初戦に勝つと結構勢いというか流れもつかめますし。トーナメントも1戦目に勝つのが大事かなって思うので。
──「LJL」では最強のDFMに、いま必要なことってなんでしょう?
Yutapon:やっぱり大会となると試合数が少ないですし、今のメタや相手チームの得意なことの分析とかの準備をしっかりできたらと思います。
※ ※ ※
レギュラーシーズンのBo3化による対戦スケジュールの変化や、ベテランの離脱、ルーキーの加入といった要素がDFM内でも大きな変化だったようだ。それにも耐えられたのは、コーチ陣も含めたチームとしての層の厚さと、長年ともに戦ってきた選手ひとりひとりの力があればこそだろう。
最強メンバーを集めても必ずしも強いチームにはなれないことは、『LoL』というゲームの面白さと奥深さであり、それはそのまま『LoL』におけるチームワークの重要性の裏返しでもある。同じメンバーで戦い続けることで得られる強さは、DFMが証明してくれている。
それでも、来たる「MSI 2023」でのDFMは、グループステージを突破するという目標に向けたチャレンジャー。「LJL」史上最も激戦となった春を経て仕上がったDFMの活躍に期待したい。
tol2選手
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