”eスポーツ”は意味のイノベーション「東京eスポーツフェスタ」eスポーツによるダイバーシティの可能性
東京都初のeスポーツ専門イベント「TOKYO eスポーツフェスタ」が東京ビッグサイトで開催されました。
11日午後のトークセッションでは、医療分野、人材業界、研究者、各業界のトップランナーに加え、パラeスポーツアスリートが登壇。eスポーツは障がい等のハンデキャップや、性別・年齢・人種等の垣根を乗り越えるキーワードになるとのこと。「eスポーツによるダイバーシティの可能性」のトーク内容をまとめました。
モデレーターは望月雅之氏(一般社団法人 ソーシャル インクルージョン世田谷)が務め、パネラーとして丸山信人氏(昭和女子大学 人間社会学部 准教授)、田中栄一氏(独立行政法人 国立病院機構八雲病院 作業療法士)、伊東雅彦氏(ビーウィズ株式会社 執行役員 オペレーション本部長)、茅原亮輔氏(株式会社ゼネラルパートナーズ コンサルタント)、三條陸氏(BASE株式会社 社長室 HRマネージャー)と、BASE所属のプレイヤーとして、芳野友仁氏、安井達哉氏も登壇しました。
望月氏はダイバーシティの推進に関して、eスポーツという切り口が1つの要素になりえると話しました。eスポーツ興行化に向けた裾野拡大と社会全体のダイバーシティ化は連動するという解釈のようです。
ダイバーシティ的アプローチでのeスポーツでの社会貢献を進めることがeスポーツ自体に対する世間的評価の引き上げに繋がり、その実施事例がeスポーツ以外の業界にも横展開できることを表しています。
続いて、2019年9月に青山学院大学で開催された「ユニバーサルeスポーツ研究会」ではモデレーターを務めている丸山氏は「eスポーツ」をただのゲーム競技の別呼称ではなく”意味のイノベーション”であると表現。マーケティング視点での効力以外にも3つの可能性(ハンディの克服、性別&年齢の超越、教育の多様性)があると示しました。
1つ目のハンディキャッパーの業務アサインについては、世間でもエンジニアやクリエイティブ職種において特性が活かせるという実例が増えてきていますが、丸山氏によるとeスポーツの文脈においても同様のことがいえるようです。
2つ目の性別・年齢による枠組みの超越について詳細は割愛されたが、フィジカル面での優劣のない点が要因になるとのこと。
3つ目の教育面の可能性についても提起のみに留められましたが、グローバル市場での競争を想定した国内のビジネスモデルの変化により教育カリキュラムの見直しが呼びかけられている昨今、変化の側面のひとつとして象徴的な位置づけになることを示唆していました。
八雲病院で作業療法士として、実際に障害を持つ方のリハビリなどにゲームを活用している田中氏は、『シャドウバース』をプレイしている筋ジストロフィープレイヤーの成田氏の例を挙げ、ゲームプレイにおいて健常者とのマインドの隔たりは生まれないことを主張。
また、ハンディキャッパーがゲームプレイにおいて障壁となる要素を「精神的側面」「デバイス的側面」「制度的側面」の3つで整理。コントローラーを顎や足、視線誘導で操作することが健常者と同様に行えている現状を院内映像で紹介。大会ルールとして公式コントローラー以外使用できないゲームタイトルの例を挙げ、バリアフリーの観点からルールや制度を適応させていく必要性があると再度、問題提起されました。
さらに田中氏によると、ゲーム依存症への対処、コミュニティ形成のサポート、モラル面のガイドラインの制定等、健常者プレイヤーと同様の問題についても取り組みが進んでいるとのこと。病院機構として未来を見据えた対応の速さを感じました。
伊東氏はビーウィズ株式会社で運営する、コーチマッチングサイト「JOZ」と養成プログラムの2点について説明。eスポーツプレイヤーは選手からコーチへのキャリアチェンジが早期に発生するため、今後選手&コーチが増加して需要が高まることを想定したマッチングサイトと言えます。
オンラインでのコーチングをモデルとして掲げており、ハンディキャッパーの就業も可能であると伊東氏は主張していました。また、養成プログラムについては、コンタクトセンターで就業しつつも午後の時間を使用し、プレイヤー&コーチングの訓練ができると説明されました。
ゼネラルパートナーズは、マイノリティが抱える不自由や社会問題をソーシャルビジネスで解決するベンチャー企業。茅原氏は同社に登録されているハンディキャッパーの方々のアンケートによると、特に格闘ゲームとFPSにおいて高い成績を出している傾向にあると言います。
さらに、発達障害の1つ「過集中」は、ゲームプレイにおいては強みとして現れるとも説明。仕事面では支障の出る特性も別の視点では利点になる明確な1つの事例であると話しました。
三條氏はゼネラルパートナーズとの協力により、BASEにて日本初の「eスポーツの障がい者雇用」を実現したと説明。
就業しているパラeスポーツアスリートの業務内容は、eスポーツに関する活動(トレーニング、競技参加、PR活動)であり、他の業務を割り当てられることはないとのこと。BASE所属のパラeスポーツアスリート、芳野氏、安井氏のゲームへの取り組み方を鑑みても、いかにBASEがゲームに集中できる環境であるかが分かります。
パラeスポーツプレイヤーの芳野氏は、月曜日から木曜日まで1日9時間ほどのゲームの練習をしていると言います。プレイしているゲームは『鉄拳7』と『Apex Legends』、格闘ゲームとFPSバトルロイヤルという別ジャンルで活動されており、大会が近い方を優先して練習される珍しいマルチタイプのプレイヤーです。
今後の抱負は、eスポーツ業界の発展に寄与していくこと。「EVO」やeパラに出場し結果を出すことで、パラeスポーツアスリートの存在感を出していきたいとのこと。また、自分のような障がいや性別、年齢に関わらず評価される仕組みづくりにも貢献していきたいと話しました。
安井氏は、『鉄拳7』で「EVO」出場を控えつつも、本職はFPS(『レインボーシックス シージ』&『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア』)であり、世界レベルで戦えるチームの構築を目指しているといいます。
芳野氏、安井氏に共通しているのは異なるジャンルのゲームの競技に身を投じていること。eスポーツプレイヤーとしては珍しいケースですが、堀江航氏(車いすバスケットボール&車いすソフトボール等の日本代表選手)のようにパラスポーツという文脈では複数競技で活躍するのは前例があります。
パラeスポーツがフィジカルスポーツの実態と非常に近くなってきている現状を鑑みて、健常者のeスポーツ分野は急速に進歩しているパラeスポーツ分野の取り組みからも学ぶことが多くありそうです。
配信ページ:東京eスポーツフェスタ【1月11日放送】
11日午後のトークセッションでは、医療分野、人材業界、研究者、各業界のトップランナーに加え、パラeスポーツアスリートが登壇。eスポーツは障がい等のハンデキャップや、性別・年齢・人種等の垣根を乗り越えるキーワードになるとのこと。「eスポーツによるダイバーシティの可能性」のトーク内容をまとめました。
モデレーターは望月雅之氏(一般社団法人 ソーシャル インクルージョン世田谷)が務め、パネラーとして丸山信人氏(昭和女子大学 人間社会学部 准教授)、田中栄一氏(独立行政法人 国立病院機構八雲病院 作業療法士)、伊東雅彦氏(ビーウィズ株式会社 執行役員 オペレーション本部長)、茅原亮輔氏(株式会社ゼネラルパートナーズ コンサルタント)、三條陸氏(BASE株式会社 社長室 HRマネージャー)と、BASE所属のプレイヤーとして、芳野友仁氏、安井達哉氏も登壇しました。
望月雅之氏「eスポーツによる社会貢献が裾野拡大につながる」
望月氏はダイバーシティの推進に関して、eスポーツという切り口が1つの要素になりえると話しました。eスポーツ興行化に向けた裾野拡大と社会全体のダイバーシティ化は連動するという解釈のようです。
ダイバーシティ的アプローチでのeスポーツでの社会貢献を進めることがeスポーツ自体に対する世間的評価の引き上げに繋がり、その実施事例がeスポーツ以外の業界にも横展開できることを表しています。
丸山 信人氏「eスポーツが新たな産業になる可能性」
続いて、2019年9月に青山学院大学で開催された「ユニバーサルeスポーツ研究会」ではモデレーターを務めている丸山氏は「eスポーツ」をただのゲーム競技の別呼称ではなく”意味のイノベーション”であると表現。マーケティング視点での効力以外にも3つの可能性(ハンディの克服、性別&年齢の超越、教育の多様性)があると示しました。
1つ目のハンディキャッパーの業務アサインについては、世間でもエンジニアやクリエイティブ職種において特性が活かせるという実例が増えてきていますが、丸山氏によるとeスポーツの文脈においても同様のことがいえるようです。
2つ目の性別・年齢による枠組みの超越について詳細は割愛されたが、フィジカル面での優劣のない点が要因になるとのこと。
3つ目の教育面の可能性についても提起のみに留められましたが、グローバル市場での競争を想定した国内のビジネスモデルの変化により教育カリキュラムの見直しが呼びかけられている昨今、変化の側面のひとつとして象徴的な位置づけになることを示唆していました。
田中 栄一氏「バリアフリーの観点からeスポーツのルール設定を」
八雲病院で作業療法士として、実際に障害を持つ方のリハビリなどにゲームを活用している田中氏は、『シャドウバース』をプレイしている筋ジストロフィープレイヤーの成田氏の例を挙げ、ゲームプレイにおいて健常者とのマインドの隔たりは生まれないことを主張。
また、ハンディキャッパーがゲームプレイにおいて障壁となる要素を「精神的側面」「デバイス的側面」「制度的側面」の3つで整理。コントローラーを顎や足、視線誘導で操作することが健常者と同様に行えている現状を院内映像で紹介。大会ルールとして公式コントローラー以外使用できないゲームタイトルの例を挙げ、バリアフリーの観点からルールや制度を適応させていく必要性があると再度、問題提起されました。
さらに田中氏によると、ゲーム依存症への対処、コミュニティ形成のサポート、モラル面のガイドラインの制定等、健常者プレイヤーと同様の問題についても取り組みが進んでいるとのこと。病院機構として未来を見据えた対応の速さを感じました。
伊東 雅彦氏(ビーウィズ株式会社 執行役員 オペレーション本部長)
伊東氏はビーウィズ株式会社で運営する、コーチマッチングサイト「JOZ」と養成プログラムの2点について説明。eスポーツプレイヤーは選手からコーチへのキャリアチェンジが早期に発生するため、今後選手&コーチが増加して需要が高まることを想定したマッチングサイトと言えます。
オンラインでのコーチングをモデルとして掲げており、ハンディキャッパーの就業も可能であると伊東氏は主張していました。また、養成プログラムについては、コンタクトセンターで就業しつつも午後の時間を使用し、プレイヤー&コーチングの訓練ができると説明されました。
茅原 亮輔氏「発達障害の内容によってはプレイの利点にも」
ゼネラルパートナーズは、マイノリティが抱える不自由や社会問題をソーシャルビジネスで解決するベンチャー企業。茅原氏は同社に登録されているハンディキャッパーの方々のアンケートによると、特に格闘ゲームとFPSにおいて高い成績を出している傾向にあると言います。
さらに、発達障害の1つ「過集中」は、ゲームプレイにおいては強みとして現れるとも説明。仕事面では支障の出る特性も別の視点では利点になる明確な1つの事例であると話しました。
三條 陸氏「パラeスポーツプレイヤーとして障害者を雇用」
三條氏はゼネラルパートナーズとの協力により、BASEにて日本初の「eスポーツの障がい者雇用」を実現したと説明。
就業しているパラeスポーツアスリートの業務内容は、eスポーツに関する活動(トレーニング、競技参加、PR活動)であり、他の業務を割り当てられることはないとのこと。BASE所属のパラeスポーツアスリート、芳野氏、安井氏のゲームへの取り組み方を鑑みても、いかにBASEがゲームに集中できる環境であるかが分かります。
芳野 友仁氏「大会で成績を出すことでパラeスポーツ選手を知ってほしい」
パラeスポーツプレイヤーの芳野氏は、月曜日から木曜日まで1日9時間ほどのゲームの練習をしていると言います。プレイしているゲームは『鉄拳7』と『Apex Legends』、格闘ゲームとFPSバトルロイヤルという別ジャンルで活動されており、大会が近い方を優先して練習される珍しいマルチタイプのプレイヤーです。
今後の抱負は、eスポーツ業界の発展に寄与していくこと。「EVO」やeパラに出場し結果を出すことで、パラeスポーツアスリートの存在感を出していきたいとのこと。また、自分のような障がいや性別、年齢に関わらず評価される仕組みづくりにも貢献していきたいと話しました。
安井 達哉氏(BASE株式会社 パラeスポーツプレイヤー)
安井氏は、『鉄拳7』で「EVO」出場を控えつつも、本職はFPS(『レインボーシックス シージ』&『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア』)であり、世界レベルで戦えるチームの構築を目指しているといいます。
芳野氏、安井氏に共通しているのは異なるジャンルのゲームの競技に身を投じていること。eスポーツプレイヤーとしては珍しいケースですが、堀江航氏(車いすバスケットボール&車いすソフトボール等の日本代表選手)のようにパラスポーツという文脈では複数競技で活躍するのは前例があります。
パラeスポーツがフィジカルスポーツの実態と非常に近くなってきている現状を鑑みて、健常者のeスポーツ分野は急速に進歩しているパラeスポーツ分野の取り組みからも学ぶことが多くありそうです。
配信ページ:東京eスポーツフェスタ【1月11日放送】
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