【インタビュー】「若い人に負けたくない」じゃなく「ただ勝ちたい」——70歳プロゲーマー・mark25が『VALORANT』に熱中する理由【マタギスナイパーズ】
年に一度のゲームの祭典「東京ゲームショウ 2026」が、9月17日(木)〜9月20日(日)にかけて、幕張メッセにて開催された。あらゆるゲーム、デバイス、eスポーツ関連の企業や団体がブースを出展するなか、eスポーツ施設のプロデュースなどを手がける株式会社PCCSのブースでは、連日にわたり業界関係者を招いたトークセッションが開催された。
ビジネスデイ1日目となる9月17日(木)に開催されたトークセッション「60歳から始まる、新たなeスポーツの挑戦と交流」では、兵庫県のシニア専用eスポーツ施設を運営する梨本 浩士(なしもと こうじ)氏と、秋田県のシニアプロゲーミングチーム「マタギスナイパーズ」からmark25(まーくにじゅうご)選手が登壇した。

このトークセッションでは、若者向けのコンテンツだと思われがちなゲームやeスポーツを、60歳以上の人々にとっての新たな趣味、あるいは交流の手段として活用しようという取り組みが紹介された。
なかでも、秋田発の「マタギスナイパーズ」は、すべてのメンバーが60歳以上のシニア世代だけで構成されたプロゲーミングチームだ。プレーするタイトルは、FPSゲームの『VALORANT』だ。「ゲームは若者向けの趣味」という固定観念にとらわれず、メンバー同士で切磋琢磨しながら勝利を目指すその姿に、ここ最近注目が集まっている。

今回はそのトークセッションの直後、同チームに所属するmark25選手にインタビューをさせていただくことができた。現在70歳のmark25選手は、チームに加入してから初めてパソコンゲームにふれたという。キーボードとマウスを使った操作をゼロから覚え、現在では平日毎日4時間以上の練習に取り組むなど、自らのスキルを高めるために日々真剣に努力を重ねている。
そんなmark25選手は、なぜ定年後の生き方としてeスポーツを選んだのか。そして「シニアプロゲーマー」としての活動は、一体どのようなものなのか。本記事では、日本を取り巻く少子高齢化の問題にもふれながら、「マタギスナイパーズ」の活動と、mark25選手がゲームに懸ける熱い思いに迫っていこうと思う。

——まずは、イベントを終えての率直な感想をお聞かせください。
mark25:eスポーツにおける高齢者の立ち位置というところに、全力で取り組んでいらっしゃる方がいることを、すごくうれしく思いますね。
ただ私どもは「地方」ですので、なかなか人が集まるかどうかという不安のほうが強いですね。梨本さんは兵庫の方ですけれども、できれば秋田でもそれなりの人が集まってほしいなという気持ちになりました。
——「東京ゲームショウ」に来られたのは初めてですか?
mark25:はい、初となります。
——実際に会場に来てみてどうですか?
mark25:もう、最高ですね!
——どこかブースは回られましたか?
mark25:まだざっとしか見られていないですね。ただ私は、どちらかというとハードウェアのほうが好きなので、これから近くのブースをゆっくり見て回りたいと思っています 。
——ちなみに、なにか気になるガジェットはありますか?
mark25:モニター関係とか——あとはグラボ関係ですよね。いまは高くて買えないんですけど(笑)。ブースからも見えていて気になっていたので、これから巡るのが楽しみですね。
——「マタギスナイパーズ」とはどのようなチームなのでしょうか。
mark25:「マタギスナイパーズ」は、2021年9月に結成したチームとなります。当時は、65歳以上の高齢者でつくるプロゲーミングチームとして結成されました。
現在は結成からすでに5年が経ちまして、これまで4期にわたってメンバーを募集してきました。メンバーは合計10名。うちトップメンバーが4名、アカデミーが6名という構成になっています。
活動内容としては、平日は毎日、午後1時から5時まで練習を行っています。そのほか、午前中は自主練習を行い、夜には交代制でチームとしての配信活動も行っています。このような生活を、かれこれ4年ほど続けていますね。
——配信もされているんですね!
mark25:はい。だいたい、午後7時から10時くらいまで、ずっと『VALORANT』のコンペ(ランク)を回すという内容ですね。

——ゲームは基本的に『VALORANT』をプレーするのでしょうか。
mark25:結成直後は『フォートナイト』や『Apex Legends』をプレーしていました。1年後くらいから『VALORANT』をスタートした形になります
——他のチームとの試合などは行いますか?
mark25:交流試合という形で他のチームと対戦することはありますね。
また、ゲーム内で開催されている「Premier」もやっていますね。まあ、今は負け越しているんですけど(笑)。そこで勝てるように、今は基礎能力を上げようと研究しながら頑張っています。
——特にここ最近、チームの人気も上がってきていると思いますが、実際に何か反響などはございますか?
mark25:こんなに下手な『VALORANT』をやっているにも関わらず、これほどまでに注目していただくのが恥ずかしくて(笑)。やはり、高齢者がこういった活動をするというのが珍しいという部分もあると思うんですけど、せっかく皆さんに注目していただいている、あるいは応援していただいているので、ぜひそれに見合うような実力を付けておきたいなと、改めて思っております。
——FPSゲームは、特に複雑な操作や瞬発力が要求されるゲームだと思います。実際にこういったゲームを初めてプレーしたときに、なにか感じたことはありましたか?
mark25:実は私、この「マタギスナイパーズ」に入って初めてFPSを始めたんです。やっぱり最初は、ゲーム自体のことも知らないですし、もう全く何をどうすればいいのかも分からなかったです。
特にキーボードとマウスを使うということで、みんなワードやエクセルなんかは使えるんですけど、こういったWASD操作はゼロからのスタートだったので、これを体に馴染ませるのには相当時間が掛かりましたね。
——やはり操作方法を覚えるのは大変でしたか?
mark25:ただ私は、最初から「やってやるぞ!」という気持ちで活動をはじめたので、もう分からなければとりあえずやる——そういった覚悟だけでなんとかしました。
少し話はズレますけど、同年代の方に対しても「できるよ」ということはお伝えしたいですね。「マタギスナイパーズはやってるじゃないか」と。実際プレーしてみると面白いので、色んな方にももっとやってほしいなと思いますね。
——操作面以外では、高齢者がゲームをプレーする上でなにかハードルはあると思いますか?
mark25:マシンを一気に用意するのは大変だと思いますね。私どもが始めた頃は、一式で25万円ほどだったかと思うんですが、今だと同じものを用意しようとすると30万円くらいすると思います。そういった投資が必要なので、まずはそこまでお金をかけてもいいと思えるくらい、ゲームの面白さを知ってもらうことは必要かもしれません。
——パソコンを買わなくても、ちょっと体験できる環境があるといいかもしれませんね。
mark25:そうですね、絶対いいと思います。
ただやっぱり、そういった環境を用意する企業さんは大変かもしれませんね。購入して10年くらい使えればいいんですけど、下手したら5~6年くらいでダメになっちゃいますし。特に今は価格が高騰しているというところもあって、少し厳しいかなとは思いますよね。
ただやっぱり面白いので、広がっていくとうれしいですね。
——例えばグループホームのようなところに置いてあるといいかもしれませんね。
mark25:いやー、絶対興味が出ますよね。おそらく、そういった場所には介護士のような方もいらっしゃると思うんですが、そういった若い方は多分ゲームができますから、その人から教えてもらえば何も困ることはないですよね。で、もっと色んな人と対戦したいんだったらネットワークに繋げばいいですし。

——先ほど「面白い」という言葉があったかと思いますが、『VALORANT』どういった部分に魅力を感じていますか?
mark25:他のゲームをプレーされている方には申し訳ないんですけど、ひとり用のゲームって、解説を見ればある程度クリアはできますよね。
ただ今やっているゲームは、相手は人。だから、常に状況が違うんです。同じメンバーでやっても、常に戦い方が変わってきます。そこでやっぱり上を目指そうとすると、その都度読み合いをしないといけないので、そういった部分に魅力を感じています。
他にも私は、ストラテジーゲームなんかもプレーするんですが、それも頭を使いますよ。どうしてもうまくいかないってなっても、私は「じゃあやめよう」という風にはならない。むしろ、悔しいので解決したくなるんですよ。そう思わないと、せっかくの人生がもったいない気がします。
——mark25さんは、以前からそういった性格だったんでしょうか。
mark25:100パーセントではないですけどね(笑)。
でもどちらかというと、なるべく前を見る。後ろはなるべく振り返らない。失敗したことは今までいっぱいありますけど、なるべく振り返らない。多分人間関係もそうだと思うんですけど、なるべく人生としては、前を向いて進んでいくようにしています。
——「ここだけは若者には負けない」と思う部分はありますか?
mark25:ないない(笑)。実際、若い人に勝つっていうのは無理!
今までチームとして勝った試しもほとんどないからね。ランクを回して野良の方と組んだら、もちろん勝つことはありますけど。
私は「若い人に負けたくない」とかじゃなくて、ただこのゲームで勝ちたいだけなんです。それは相手が子どもだろうが高齢者だろうが、ただただ勝ちたいんです。その味方が何歳だろうと、勝ったらうれしい。作戦がハマったら面白い。4キルした、5キルした……最高、みたいな。単純なんですよ(笑)

——個人的には、人生を積み重ねたからこそ得られる経験のようなものがあると思うんですが、そういったものは何かありますか?
mark25:それでいうと、諦めないことですよね。今まで仕事一辺倒でできなかったこともありますけど、65歳で定年になってからは、もう「好きなことをやるんだ」という感じで。諦めるともう前がないですから。
——そこはやはり強みですね。
mark25:というか、今いるメンバーみんなそうです。負けたら負けたで、どうやったら勝てるかディスカッションして試してみる。そこで勝ったら「よし、うまくいった!」。それで次試してみたら負けて「ダメじゃん!」ってなったり(笑)。
でもそこから「なんで負けたのか」っていうところを、ずっと繰り返しながら、経験値をひとつ上げることで、また前へ進めるということです。
——人口減少や少子高齢化が進む中で、「マタギスナイパーズ」の活動を通じて、秋田の地域活性になにか役立っていると感じますか?
mark25:まだまだ、全然ですね。
——まだまだ……ですか。
mark25:はい。同年代——だいたい70代くらいの人に広げようとすると「やってみたいね」という言葉は返ってくるんです。ただ「やってみようかな」という人はあんまり出てこない。
——それはどういった理由だと思いますか?
mark25:やっぱりハードルが高いからですよね。「面白いよ」って話をするんですけど、キーボードやマウスを使うことを説明すると「いやー、俺にはできないよ」みたいな声が返ってくる。なんというか、食わず嫌いですよね。
年代的に、パソコンや電子機器に対する抵抗感が強いんです。仕事では使っているはずなんですけど、あまり得意じゃない人が年代的に多いのかもしれないですね。
——逆になぜ、mark25さんはこういった活動をやろうと思えたんでしょうか。
mark25:ほかのメンバーとはちょっと理由が違うんですが、私はハードが好きなんですよ。パソコンがとにかく好きで、昔からパソコンを作ってたりしてたので、こういった機会に対する抵抗感が全然ないんです。チームに入ったときも、パソコンにさわれればそれでいいという気持ちだったので——。
——他のメンバーはどういった方が多いですか?
mark25:皆さん、ほとんどゲーム好きですね。若いときからゲームが好きで、合間合間にゲームをやっていたという方が多いです。
だから、東京ゲームショウもみんな「行きたいね」って言ってて(笑)。普通だったら「そんな若い人がいるところに年寄りが行ってどうするの?」ってなると思うんですけど、私たちはもう見たくて見たくてしょうがないんですよ。ホテルなんかも1年前から予約してましたし、もうみんな少年少女みたいにウキウキしてますよ。

mark25:60歳、70歳になったからこうあるべきだ、おじいちゃんらしく静かに生きるべきだって自分の中で思っていたけど、それだと人生が面白くなくなっちゃうからね。ゲームやeスポーツをやっていることを「あいつ馬鹿だな」って言っている人も多分いると思う(笑)。でも、関係ないですから。
せいぜいあと20年あるかないか——自分の人生なんだから。自分が楽しくやれるように、そして楽しくやるんだったら、少しは上を目指したいと思っています。
——mark25さんご自身やチームにとっての、今後の目標をお聞かせください。
mark25:チームとしては、まだまだレベルが下のほうなので、ひとつでもふたつでもランクを上げられるようにしたいですね。そして最終的には、公式試合に出場することが当面の目標ですね。
私としては、もっと活動の裾野を広げたいなと思います。もちろん応援してくださる方々の存在は本当にありがたいとは思うんですが、そういった人をもっと増やしたいです。
例えば、秋田県の高齢化率は40%ですよ。だから「秋田県に行くとおじいちゃんおばあちゃんがたくさんウロウロしてんだろうな」みたいに思われるかもしれないけど、実際はそこまで高齢者ばっかりじゃありません。
「秋田県では今こんな活動をしているんだ」ということを、もっと明るく色んな人に伝えられるように、ぜひともメディアの皆さんの力もお借りしつつ、広めていきたいと思います。
——ありがとうございました!
筆者自身、「マタギスナイパーズ」の存在そのものは数年前から知っていたのだが、ここまで熱量やモチベーションの高いチームであることまでは知らなかった。mark25の言葉の節々からは、その向上心の強さと負けず嫌いな性格をひしひしと感じることができ、これだけ年代が離れていても同じゲーマーとしてシンパシーを感じた。
正直、70代の方から「コンペ」や「野良」のような、FPSゲーム特有の用語が飛び出してきたことには純粋に驚いた。筆者も仕事柄、高齢者の方々と多く接する機会は多いのだが、今日このインタビューを通じて「高齢者=機械に弱い」というステレオタイプ的な見方を改めさせられたのは間違いない。

「マタギスナイパーズ」の活動は、決して「高齢者向けの福祉」ではない。メンバーが切磋琢磨して、試行錯誤を重ねながら勝利を目指す——まさにeスポーツに真正面から取り組むチームであるのだ。2025年、日本の高齢化率は29.4%。人口の約3分の1が高齢者となった社会で、これからの人生をどのように生きるのか。その新たな生き方のひとつとして、「マタギスナイパーズ」のメンバーのように、こういったゲームやeスポーツが選択肢のひとつとして存在してもいいのではないだろうか。
まだまだ「マタギスナイパーズ」が珍しい存在であることは否定できない。しかし、同チームはすでに5年にわたり活動を続けてきている。少子高齢化が止まらないなか、65歳以上の方が社会の大きな一角を占める時代は、もはや訪れつつある。そんななかで、ゲームやeスポーツを新たな生きがいとして選ぶ高齢者の存在は、間違いなく増えていくだろう。
シニアプロゲーミングチームという概念が全国に普及していくかどうかは、まだまだ未知数だ。それでも、今回の取材を通じて、その熱量は感じることができた。もしかすると近い将来、シニア同士の大会やスクリムが当たり前に行われる——そんな未来も、決して遠い話ではないのかもしれない。
撮影:まいる/いのかわゆう
編集:いのかわゆう
ビジネスデイ1日目となる9月17日(木)に開催されたトークセッション「60歳から始まる、新たなeスポーツの挑戦と交流」では、兵庫県のシニア専用eスポーツ施設を運営する梨本 浩士(なしもと こうじ)氏と、秋田県のシニアプロゲーミングチーム「マタギスナイパーズ」からmark25(まーくにじゅうご)選手が登壇した。

▲登壇するmark25選手(左)と梨本浩士氏(右)。「高齢者×eスポーツ」という、ミスマッチにも感じる組み合わせ。しかし、その新たな試みに真正面から取り組むふたりが集った
このトークセッションでは、若者向けのコンテンツだと思われがちなゲームやeスポーツを、60歳以上の人々にとっての新たな趣味、あるいは交流の手段として活用しようという取り組みが紹介された。
なかでも、秋田発の「マタギスナイパーズ」は、すべてのメンバーが60歳以上のシニア世代だけで構成されたプロゲーミングチームだ。プレーするタイトルは、FPSゲームの『VALORANT』だ。「ゲームは若者向けの趣味」という固定観念にとらわれず、メンバー同士で切磋琢磨しながら勝利を目指すその姿に、ここ最近注目が集まっている。

▲金融機関を退職後、妻からの提案をきっかけに「マタギスナイパーズ」に加入。プレーヤーネーム「mark25」は、かつての愛車であるトヨタ・マークⅡが由来だそう。なお「25」は排気量の2500ccから
今回はそのトークセッションの直後、同チームに所属するmark25選手にインタビューをさせていただくことができた。現在70歳のmark25選手は、チームに加入してから初めてパソコンゲームにふれたという。キーボードとマウスを使った操作をゼロから覚え、現在では平日毎日4時間以上の練習に取り組むなど、自らのスキルを高めるために日々真剣に努力を重ねている。
そんなmark25選手は、なぜ定年後の生き方としてeスポーツを選んだのか。そして「シニアプロゲーマー」としての活動は、一体どのようなものなのか。本記事では、日本を取り巻く少子高齢化の問題にもふれながら、「マタギスナイパーズ」の活動と、mark25選手がゲームに懸ける熱い思いに迫っていこうと思う。
秋田の70歳プロゲーマーが人生初のTGSへ——mark25選手インタビュー

——まずは、イベントを終えての率直な感想をお聞かせください。
mark25:eスポーツにおける高齢者の立ち位置というところに、全力で取り組んでいらっしゃる方がいることを、すごくうれしく思いますね。
ただ私どもは「地方」ですので、なかなか人が集まるかどうかという不安のほうが強いですね。梨本さんは兵庫の方ですけれども、できれば秋田でもそれなりの人が集まってほしいなという気持ちになりました。
——「東京ゲームショウ」に来られたのは初めてですか?
mark25:はい、初となります。
——実際に会場に来てみてどうですか?
mark25:もう、最高ですね!
——どこかブースは回られましたか?
mark25:まだざっとしか見られていないですね。ただ私は、どちらかというとハードウェアのほうが好きなので、これから近くのブースをゆっくり見て回りたいと思っています 。
——ちなみに、なにか気になるガジェットはありますか?
mark25:モニター関係とか——あとはグラボ関係ですよね。いまは高くて買えないんですけど(笑)。ブースからも見えていて気になっていたので、これから巡るのが楽しみですね。
平日は毎日4時間練習——65歳以上でつくるプロゲーミングチームの活動内容
——「マタギスナイパーズ」とはどのようなチームなのでしょうか。
mark25:「マタギスナイパーズ」は、2021年9月に結成したチームとなります。当時は、65歳以上の高齢者でつくるプロゲーミングチームとして結成されました。
現在は結成からすでに5年が経ちまして、これまで4期にわたってメンバーを募集してきました。メンバーは合計10名。うちトップメンバーが4名、アカデミーが6名という構成になっています。
活動内容としては、平日は毎日、午後1時から5時まで練習を行っています。そのほか、午前中は自主練習を行い、夜には交代制でチームとしての配信活動も行っています。このような生活を、かれこれ4年ほど続けていますね。
——配信もされているんですね!
mark25:はい。だいたい、午後7時から10時くらいまで、ずっと『VALORANT』のコンペ(ランク)を回すという内容ですね。

▲「マタギスナイパーズ」のTwitchアカウント。各メンバーが持ち回りで、ひたすら『VALORANT』の試合の配信を行っている。記事執筆時点でフォロワーはなんと2.8万人だ(https://www.twitch.tv/matagisnipers)
——ゲームは基本的に『VALORANT』をプレーするのでしょうか。
mark25:結成直後は『フォートナイト』や『Apex Legends』をプレーしていました。1年後くらいから『VALORANT』をスタートした形になります
——他のチームとの試合などは行いますか?
mark25:交流試合という形で他のチームと対戦することはありますね。
また、ゲーム内で開催されている「Premier」もやっていますね。まあ、今は負け越しているんですけど(笑)。そこで勝てるように、今は基礎能力を上げようと研究しながら頑張っています。
——特にここ最近、チームの人気も上がってきていると思いますが、実際に何か反響などはございますか?
mark25:こんなに下手な『VALORANT』をやっているにも関わらず、これほどまでに注目していただくのが恥ずかしくて(笑)。やはり、高齢者がこういった活動をするというのが珍しいという部分もあると思うんですけど、せっかく皆さんに注目していただいている、あるいは応援していただいているので、ぜひそれに見合うような実力を付けておきたいなと、改めて思っております。
「WASD操作はゼロからのスタートだった」
——FPSゲームは、特に複雑な操作や瞬発力が要求されるゲームだと思います。実際にこういったゲームを初めてプレーしたときに、なにか感じたことはありましたか?
mark25:実は私、この「マタギスナイパーズ」に入って初めてFPSを始めたんです。やっぱり最初は、ゲーム自体のことも知らないですし、もう全く何をどうすればいいのかも分からなかったです。
特にキーボードとマウスを使うということで、みんなワードやエクセルなんかは使えるんですけど、こういったWASD操作はゼロからのスタートだったので、これを体に馴染ませるのには相当時間が掛かりましたね。
——やはり操作方法を覚えるのは大変でしたか?
mark25:ただ私は、最初から「やってやるぞ!」という気持ちで活動をはじめたので、もう分からなければとりあえずやる——そういった覚悟だけでなんとかしました。
少し話はズレますけど、同年代の方に対しても「できるよ」ということはお伝えしたいですね。「マタギスナイパーズはやってるじゃないか」と。実際プレーしてみると面白いので、色んな方にももっとやってほしいなと思いますね。
——操作面以外では、高齢者がゲームをプレーする上でなにかハードルはあると思いますか?
mark25:マシンを一気に用意するのは大変だと思いますね。私どもが始めた頃は、一式で25万円ほどだったかと思うんですが、今だと同じものを用意しようとすると30万円くらいすると思います。そういった投資が必要なので、まずはそこまでお金をかけてもいいと思えるくらい、ゲームの面白さを知ってもらうことは必要かもしれません。
——パソコンを買わなくても、ちょっと体験できる環境があるといいかもしれませんね。
mark25:そうですね、絶対いいと思います。
ただやっぱり、そういった環境を用意する企業さんは大変かもしれませんね。購入して10年くらい使えればいいんですけど、下手したら5~6年くらいでダメになっちゃいますし。特に今は価格が高騰しているというところもあって、少し厳しいかなとは思いますよね。
ただやっぱり面白いので、広がっていくとうれしいですね。
——例えばグループホームのようなところに置いてあるといいかもしれませんね。
mark25:いやー、絶対興味が出ますよね。おそらく、そういった場所には介護士のような方もいらっしゃると思うんですが、そういった若い方は多分ゲームができますから、その人から教えてもらえば何も困ることはないですよね。で、もっと色んな人と対戦したいんだったらネットワークに繋げばいいですし。

「ただ勝ちたいだけ」——70歳のプロゲーマーがゲームにのめり込むワケ
——先ほど「面白い」という言葉があったかと思いますが、『VALORANT』どういった部分に魅力を感じていますか?
mark25:他のゲームをプレーされている方には申し訳ないんですけど、ひとり用のゲームって、解説を見ればある程度クリアはできますよね。
ただ今やっているゲームは、相手は人。だから、常に状況が違うんです。同じメンバーでやっても、常に戦い方が変わってきます。そこでやっぱり上を目指そうとすると、その都度読み合いをしないといけないので、そういった部分に魅力を感じています。
他にも私は、ストラテジーゲームなんかもプレーするんですが、それも頭を使いますよ。どうしてもうまくいかないってなっても、私は「じゃあやめよう」という風にはならない。むしろ、悔しいので解決したくなるんですよ。そう思わないと、せっかくの人生がもったいない気がします。
——mark25さんは、以前からそういった性格だったんでしょうか。
mark25:100パーセントではないですけどね(笑)。
でもどちらかというと、なるべく前を見る。後ろはなるべく振り返らない。失敗したことは今までいっぱいありますけど、なるべく振り返らない。多分人間関係もそうだと思うんですけど、なるべく人生としては、前を向いて進んでいくようにしています。
——「ここだけは若者には負けない」と思う部分はありますか?
mark25:ないない(笑)。実際、若い人に勝つっていうのは無理!
今までチームとして勝った試しもほとんどないからね。ランクを回して野良の方と組んだら、もちろん勝つことはありますけど。
私は「若い人に負けたくない」とかじゃなくて、ただこのゲームで勝ちたいだけなんです。それは相手が子どもだろうが高齢者だろうが、ただただ勝ちたいんです。その味方が何歳だろうと、勝ったらうれしい。作戦がハマったら面白い。4キルした、5キルした……最高、みたいな。単純なんですよ(笑)

▲ゲーム内で行われる試合で、相手を13-1というスコアで圧倒するmark25。アクロバティックな操作を要求されるキャラクターを使用し、積極的に前線へと飛び込みながらキルを重ねていく(https://youtu.be/JgvzuGZoK6g?si=FCjAydlJGQRXN2Et&t=78)
——個人的には、人生を積み重ねたからこそ得られる経験のようなものがあると思うんですが、そういったものは何かありますか?
mark25:それでいうと、諦めないことですよね。今まで仕事一辺倒でできなかったこともありますけど、65歳で定年になってからは、もう「好きなことをやるんだ」という感じで。諦めるともう前がないですから。
——そこはやはり強みですね。
mark25:というか、今いるメンバーみんなそうです。負けたら負けたで、どうやったら勝てるかディスカッションして試してみる。そこで勝ったら「よし、うまくいった!」。それで次試してみたら負けて「ダメじゃん!」ってなったり(笑)。
でもそこから「なんで負けたのか」っていうところを、ずっと繰り返しながら、経験値をひとつ上げることで、また前へ進めるということです。
「諦めるともう前がない」——秋田発・マタギスナイパーズが目指す未来
——人口減少や少子高齢化が進む中で、「マタギスナイパーズ」の活動を通じて、秋田の地域活性になにか役立っていると感じますか?
mark25:まだまだ、全然ですね。
——まだまだ……ですか。
mark25:はい。同年代——だいたい70代くらいの人に広げようとすると「やってみたいね」という言葉は返ってくるんです。ただ「やってみようかな」という人はあんまり出てこない。
——それはどういった理由だと思いますか?
mark25:やっぱりハードルが高いからですよね。「面白いよ」って話をするんですけど、キーボードやマウスを使うことを説明すると「いやー、俺にはできないよ」みたいな声が返ってくる。なんというか、食わず嫌いですよね。
年代的に、パソコンや電子機器に対する抵抗感が強いんです。仕事では使っているはずなんですけど、あまり得意じゃない人が年代的に多いのかもしれないですね。
——逆になぜ、mark25さんはこういった活動をやろうと思えたんでしょうか。
mark25:ほかのメンバーとはちょっと理由が違うんですが、私はハードが好きなんですよ。パソコンがとにかく好きで、昔からパソコンを作ってたりしてたので、こういった機会に対する抵抗感が全然ないんです。チームに入ったときも、パソコンにさわれればそれでいいという気持ちだったので——。
——他のメンバーはどういった方が多いですか?
mark25:皆さん、ほとんどゲーム好きですね。若いときからゲームが好きで、合間合間にゲームをやっていたという方が多いです。
だから、東京ゲームショウもみんな「行きたいね」って言ってて(笑)。普通だったら「そんな若い人がいるところに年寄りが行ってどうするの?」ってなると思うんですけど、私たちはもう見たくて見たくてしょうがないんですよ。ホテルなんかも1年前から予約してましたし、もうみんな少年少女みたいにウキウキしてますよ。

▲イベントに引っ張りだこの「マタギスナイパーズ」のメンバー。「もう、大人の遠足ですよ」と、チームマネージャー。みんな元気に「東京ゲームショウ」を満喫していた
mark25:60歳、70歳になったからこうあるべきだ、おじいちゃんらしく静かに生きるべきだって自分の中で思っていたけど、それだと人生が面白くなくなっちゃうからね。ゲームやeスポーツをやっていることを「あいつ馬鹿だな」って言っている人も多分いると思う(笑)。でも、関係ないですから。
せいぜいあと20年あるかないか——自分の人生なんだから。自分が楽しくやれるように、そして楽しくやるんだったら、少しは上を目指したいと思っています。
——mark25さんご自身やチームにとっての、今後の目標をお聞かせください。
mark25:チームとしては、まだまだレベルが下のほうなので、ひとつでもふたつでもランクを上げられるようにしたいですね。そして最終的には、公式試合に出場することが当面の目標ですね。
私としては、もっと活動の裾野を広げたいなと思います。もちろん応援してくださる方々の存在は本当にありがたいとは思うんですが、そういった人をもっと増やしたいです。
例えば、秋田県の高齢化率は40%ですよ。だから「秋田県に行くとおじいちゃんおばあちゃんがたくさんウロウロしてんだろうな」みたいに思われるかもしれないけど、実際はそこまで高齢者ばっかりじゃありません。
「秋田県では今こんな活動をしているんだ」ということを、もっと明るく色んな人に伝えられるように、ぜひともメディアの皆さんの力もお借りしつつ、広めていきたいと思います。
——ありがとうございました!
———
筆者自身、「マタギスナイパーズ」の存在そのものは数年前から知っていたのだが、ここまで熱量やモチベーションの高いチームであることまでは知らなかった。mark25の言葉の節々からは、その向上心の強さと負けず嫌いな性格をひしひしと感じることができ、これだけ年代が離れていても同じゲーマーとしてシンパシーを感じた。
正直、70代の方から「コンペ」や「野良」のような、FPSゲーム特有の用語が飛び出してきたことには純粋に驚いた。筆者も仕事柄、高齢者の方々と多く接する機会は多いのだが、今日このインタビューを通じて「高齢者=機械に弱い」というステレオタイプ的な見方を改めさせられたのは間違いない。

▲余談だが、インタビュー後に名刺代わりのステッカーをいただくことができた。実は選手ごとにデザインも異なるようで、各々の個性をとらえたデザインは全員分コンプリートしたくなってしまう。このmark25選手のステッカーは、自身も練習中に愛用する「白色のハズキルーペ」がチャームポイント。ハズキルーペにスポンサーになってほしいとのことだが、残念ながらまだ声は掛かっていないらしい
「マタギスナイパーズ」の活動は、決して「高齢者向けの福祉」ではない。メンバーが切磋琢磨して、試行錯誤を重ねながら勝利を目指す——まさにeスポーツに真正面から取り組むチームであるのだ。2025年、日本の高齢化率は29.4%。人口の約3分の1が高齢者となった社会で、これからの人生をどのように生きるのか。その新たな生き方のひとつとして、「マタギスナイパーズ」のメンバーのように、こういったゲームやeスポーツが選択肢のひとつとして存在してもいいのではないだろうか。
まだまだ「マタギスナイパーズ」が珍しい存在であることは否定できない。しかし、同チームはすでに5年にわたり活動を続けてきている。少子高齢化が止まらないなか、65歳以上の方が社会の大きな一角を占める時代は、もはや訪れつつある。そんななかで、ゲームやeスポーツを新たな生きがいとして選ぶ高齢者の存在は、間違いなく増えていくだろう。
シニアプロゲーミングチームという概念が全国に普及していくかどうかは、まだまだ未知数だ。それでも、今回の取材を通じて、その熱量は感じることができた。もしかすると近い将来、シニア同士の大会やスクリムが当たり前に行われる——そんな未来も、決して遠い話ではないのかもしれない。
撮影:まいる/いのかわゆう
編集:いのかわゆう
【まいるプロフィール】
関西を拠点にする男性コスプレーヤー。イベントや大会によくコスプレ姿で出没する。2021年頃から『VALORANT』にハマり、競技シーンを追い続ける。現在の推しチームは「CREST GAMING」。
X:@mlunias(Photo by Subaru.F.)
関西を拠点にする男性コスプレーヤー。イベントや大会によくコスプレ姿で出没する。2021年頃から『VALORANT』にハマり、競技シーンを追い続ける。現在の推しチームは「CREST GAMING」。X:@mlunias(Photo by Subaru.F.)
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