『ぷよぷよ』eスポーツ化の覚悟と展望とは?【『ぷよぷよeスポーツ』細山田水紀プロデューサー】 (1/2)

2019.4.10 岡安学
1990年代に一大ムーブメントとして、子どもからシニア世代まで巻き込み、全国でゲーム大会が開催された『ぷよぷよ』。あれから25年以上が経過した2018年、「ぷよぷよチャンピオンシップ」が開催され、eスポーツ向けに特化した『ぷよぷよeスポーツ』も発売された。

しかし、『ぷよぷよ』にとってこの10数年は決して順風満帆ではなかった。落ちモノパズルゲームというジャンルを確立したゲーム大会の老舗タイトルであり、子どもから大人まで誰でもすぐに遊べるという普遍性ゆえに、そしてコミュニティを中心とした多くのファンを抱えているビッグタイトルであるがゆえに、『ぷよぷよ』をeスポーツタイトルにするまでには困難もあったようだ。

そこで、2018年度の「ぷよぷよチャンピオンシップ」も佳境を迎えた2019年3月某日、『ぷよぷよ』シリーズを統括する細山田水紀プロデューサーに、『ぷよぷよ』のeスポーツ化のきっかけや評価、今後目指すところなどをうかがった。ユーザーを大切にし、『ぷよぷよ』コミュニティ愛あふれるお話となった。

『ぷよぷよeスポーツ』はファンへの恩返し

――現在、「ぷよぷよチャンピオンシップ」が開催されており、プロ選手のみが出場できる「ぷよぷよカップ」も2018年度の開催はすべて終了しました。今回はセガ公式としては久々の大会となりますが、どういった経緯で行うようになったのでしょうか?

細山田水紀プロデューサー(以下、細山田):『ぷよぷよ』の公式大会は2016年の「セガフェス」でも行いましたが、『ぷよぷよ』オンリーの大会は久しぶりで、2012年2月に秋葉原のイベントで行ったのが最後だったんです。IPホルダーである私ども(=セガ)が売り切りのゲームソフトで大会を開くとなると、ゲームソフト発売タイミング前のプロモーション以外では予算がとりにくく、開催しにくいんですよ。

最近まで『ぷよぷよ』シリーズの最新作は2016年発売の『ぷよぷよクロニクル』であり、ニンテンドー3DSだけでの展開でしたが、4機種のマルチプラットフォームで展開した最新作の『ぷよぷよテトリス』は発売されたのが、2014年なんですよね。そこからPS4やNintendo Switch、Steam版など現行のほぼ全てのプラットフォームで対応するようにし、現在では通常版と廉価版を合わせて、全世界で115万本以上を売り上げています。

つまり、2017年の時点では、その年度で販売する家庭用のゲームソフトがなく、タイトルのプロモーション活動は控えめとなっており、大会そのものを開催するのが難しかったという状況があります。

それでも日本でeスポーツを盛り上げようという機運が高まり、セガとしても「eスポーツをやっていこう!」となったのですが、「ぷよぷよ」としてはそこがチャンスでした。

これまで大会では、もともと大会用に作ったと言っても過言ではない『ぷよぷよテトリス』を使用していたのですが、リリースされてから時間が経っており、将来を見据えると、eスポーツの大会を運営したり、第三者が使用するのを許諾したりするという点で、そんな過去作をカスタマイズしたり使用したりするのは結構大変になるだろうと予測していました。

『ぷよぷよeスポーツ』をリリースしたのは、大会を運営しやすくなる手段としての役割があり、さらにできるだけ多くの方に遊んでもらえる機会を作りたいという理由からなんです。


『ぷよぷよ』シリーズの大会は公式ではなかなか行う機会が少なく、実際に行われなかった時期も長かったのですが、ぷよぷよファンのコミュニティでは様々な場所で続けられており、現在でも遊んでくれている方がいるのは彼らのおかげでもあります。そういう意味で、儲けよりもコミュニティへの恩返しやぷよぷよの未来のファンを獲得する目的として『ぷよぷよeスポーツ』をリリースしているので、本来は無料で配りたかったくらいなんです。

でも、やはり会社としてはそうもいかないですし、ぷよぷよを30年、40年、50年と今後も成長しながら続けていくために、値段を付けさせていただいています。さらに期間限定のセール価格で500円で販売させていただいています。赤字にならず儲けも出ない、トントンな感じでとにかくたくさんの人に遊んでいただくことがいいと思っています。

仮に無料にして赤字を出してしまったらそもそも承認されるわけもなく、今度はeスポーツ大会自体ができなくなってしまうので、そこは長く続けていく意味でも、有料にさせていただきました。(※編集部注・『ぷよぷよeスポーツ』は2019年3月15日から4月10日23:59まで、税込1999円のところ、税込500円で販売)

普遍的な『通』と遊び方が多様な『フィーバー』

――『ぷよぷよeスポーツ』はその名の通り、eスポーツに特化したタイトルとしてリリースされたわけですね。

細山田:はい。もともとの原案は2年以上前に書いていたのですが、その時は通らなかった企画です。eスポーツ展開を行うと決めてから、「それならば、より多くのファンを獲得するためにできることをしよう」ということで、とにかく早くリリースすることが重要でした。日本のeスポーツをぷよぷよで盛り上げようという趣旨にご賛同いただいた声優のみなさんのボイスなども、今回は再録という形でお願いしています。新作のフルプライス版とは別に、競技性だけを突き詰めたタイトルとしてリリースしました。

ゲームシステムとしては、『ぷよぷよ通』ルールと『ぷよぷよフィーバー』ルールの2つを用意しました。『ぷよぷよ通』は、ファンやコミュニティでは「『ぷよぷよ通』こそが至高!」と言う方がいるくらい人気が高く、ゲームシステムとしての完成度が高く、競技性の高いルールです。そういう意味では平等で、普遍性のあるモードであるわけです。

▲『ぷよぷよeスポーツ』プレイ画面(『ぷよぷよ通』ルール)

一方、『ぷよぷよフィーバー』を入れたのは、2004年頃にセガとしてぷよぷよの新作をリリースするにあたり、ぷよぷよシリーズをリニューアルして、展開に多様性を持たせることで、その後のシリーズに大きな影響を与えた1つの基本となる人気ルールであるからです。

『ぷよぷよ通』しか知らない方に新しい遊び方も提案していきたいですし、これから初めてぷよぷよを遊ぶ方など、新しいプレイヤーが入りやすいのではないかと考えました。座組みが変わると、いろいろな楽しみも出るかと思います。

▲『ぷよぷよeスポーツ』プレイ画面(『ぷよぷよフィーバー』ルール)

ちなみに、今回のルールで入らなかった『ぷよぷよSUN』ルールなどもありますが、そういったルールは今後の新作などでは収録可能性はありますが、本作では選択と集中を図ってお求めやすい価格にすることを目的としているので入っていません。(編集部注・ニンテンドー3DSで発売中の『ぷよぷよクロニクル』や20周年記念作の『ぷよぷよ!!』には収録)

その他にも多数の人気ルールは存在しますが、最も人気が高いTOP2を、今回は2つとも採用する形とさせていただきました。

他にもゲーム内のバランスや問題点など、例えばスマホゲームなどでは定期的にアップデートして調整することでバランスをとっていくんですが、家庭用ゲームにおいてはパッケージ版として先にディスクで出してしまうとそれも難しくなってしまいます。ダウンロード版のみで販売するという手法は過去にミニバージョンという形でやったことはあるのですが、今回アップデートできるようにしながらお求めやすい価格にするためにダウンロード版のみで販売しました。結果的に多くの方に遊んでもらうことができていると感じています。

eスポーツや『ぷよぷよ』を盛り上げようということで、いつもとは違う形でのやり方をたくさんやっているのですが、第三者から見てeスポーツタイトルだからととらえてもらえることはいいことだと思っています。ゲームの名前そのものもストレートに「eスポーツ」としたのも、そのあたりの事情も反映しています。

――このあたりは、ソフト販売の収益と、IPそのものの価値を高めることによるグッズなどの収益と、大会の運営のみの収益ということでは、考えも変わってきますね。

細山田:そうですね。日本国内における「eスポーツ」はまだまだ伸びしろがいっぱいありすぎると個人的に思っていますが、長く続けるためには収益を上げる必要もありますし、収益を上げるためにはより多くの方を巻き込んでいかなければいけないと考えています。

これまで以上にゲームソフトがたくさん売れて、それが全世界で広がって、さらにキャラクターやロゴなどが入ったグッズがもっと売れて、大会の運営に関連した部分で収益を上げることができれば最高だと思います。その方向性やルールを開発者や関係者と一緒になって形にしていくためには、応援するファンの皆さんの力が必要ですし、結果的に長く続けていくことができるのがいいと考えています。

『ぷよぷよ』の場合は、長く遊んでもらっているルールの1つとして『ぷよぷよ通』ルールがあり、今回はそういった事情もあり『ぷよぷよ通』ルールが中心となって適用されたわけです。

ただし、ベースとなっているだけで当時のアーケード版『ぷよぷよ通』とは筐体も違えば中身もまったく一緒ではないですし、当時の『ぷよぷよ通』には独自の操作性というか挙動などがありまして、それを完全に再現するのは難しいと考えています。そもそも当時も狙ってその操作性を作っていたわけではなく、調整を重ねていくことで当時の挙動になっていると思うので、完全に再現するのは難しいんですよね。なので完全再現ではなく、現在の開発チームが最もいいと思うプレイしやすい形にカスタマイズされているわけです。

そもそも『ぷよぷよ』シリーズは基本的にナンバリングタイトルごとに違う開発担当が作っていたり、何度も作り直していたりするので、操作性とか微妙なところに違いが出ています。開発者としては現状でこれがベストという最良なものを作っているつもりです。

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